・7. この病気にはどのような治療法がありますか
患者数が少ないこともあり、この病気の標準的治療法は確立されていません。現状では以下の治療が行われており、新しい治療の試みもなされています:
異常形質細胞による骨病変が1箇所だけであれば、その切除や放射線照射が行われますが、骨病変が多発性であったり、明らかでないことが多く、その場合には、副腎皮質ホルモン、全身化学療法(抗がん剤)による治療が行われます。
また2000年以後、比較的若い患者さんを対象に「自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法」と呼ばれる自分の細胞を用いる移植治療が行われ、治療後著明に症状が改善した報告がなされています。
全身状態の良い65歳以下の患者さんでは長期の寛解(症状が落ち着いており日常生活にさほど支障がない状態)を得られる可能性のある治療法として期待されています。
現在、長期効果についてのデータが蓄積されつつある状況です。
また一部の施設ではサリドマイド(形質腫瘍の増殖やVEGFの分泌を抑える作用を持つとされています)による治療の試みも開始されています。
移植治療は大量の抗がん剤を使用するために65歳以下の全身状態のよい患者さんのみが対象となりますが、サリドマイド療法は66歳以上の患者さんに対する治療としては、副腎皮質ホルモン、メルファランなどの従来治療よりも効果が高いとの報告もなされています。
サリドマイドは高齢の患者さんにも比較的安全に使用できるため今後期待される治療法と言えますが、まだ一部の施設で慎重に効果を見ている段階です。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
個々の患者さんによって進行のスピードは異なりますが、未治療の場合には数年の間に末梢神経障害による手足の麻痺が進行すると共に、大量の胸水・腹水が溜まることにより心不全、腎不全に至って亡くなることの多い重篤な病気とされています。
副腎皮質ホルモンは一時的に有効ですが、最終的には再発を抑えられないとの指摘があります。
そのために上記のような化学療法、移植療法、サリドマイドによる治療が長期の寛解を目指す治療法として行われ始めているのが現状です。
9.この病気についての新しい情報や専門の医療機関についてはどうすればわかりますか
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「免疫性神経疾患に関する調査研究班」のホームページに最新の情報が掲載されています。
以下のサイトを参照ください。
免疫性神経疾患に関する調査研究班
最新情報
Crow-Fukase症候群(POEMS症候群)に対するサリドマイド療法の医師主導治験が始まります
2010年9月より、Crow-Fukase症候群の患者さまの治療の向上を目標に全国13施設で医師主導治験を実施します。
詳しい内容につきましては下記ホームページをご参照ください。
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/neurol/kenkyu/ishisyudou/index.html
当研究班(免疫性神経疾患に対する調査研究班)の主導、日本神経免疫学会・日本神経学会の後援のもと、日本医師会治験促進センターの研究事業(厚生労働科学研究(医療技術実用化総合研究事業(治験推進研究))研究事業)の一環として、Crow-Fukase症候群に対するサリドマイド療法の有効性について全国13施設で医師主導治験を実施しています。