wikipediaより
酢酸(さくさん、旧字 醋酸、acetic acid)は脂肪酸の一種で、簡単なカルボン酸のひとつである。酢に含まれる弱酸。IUPAC命名法では酢酸は許容慣用名であり、系統名は エタン酸 (ethanoic acid) である。
純粋な酢酸は融点約 17℃と室温よりやや低い程度であり、水分が少ないものは冬に凍ってしまうことから氷酢酸 (glacial acetic acid) と呼ばれる。2分子の酢酸が脱水縮合すると別の化合物の無水酢酸となる。
遊離酸・塩・エステルの形で植物界に広く分布する。酸敗したミルク・チーズのなかにも存在する。
酢 [編集]
5 重量% から 18 重量% の濃度の酢酸溶液は、酢として調味料や野菜などの漬物を作るのに用いられる。全世界で酢として用いられる酢酸の量はそれほど多くはないが、歴史的に最も古く、また良く知られている用途である。また韓国では、氷酢酸がのり巻きや刺し身のたれを作る材料として食用に販売されている。
溶媒 [編集]
氷酢酸は優れた極性プロトン性溶媒であり、有機化合物の再結晶溶媒としてしばしば使われる。純粋な酢酸は、ポリエチレンテレフタラート (PET) の原料であるテレフタル酸の製造の際に溶媒として用いられる。この用途は世界での使用量の 5% から 10% に過ぎないが、PET の生産量が増加すればより重要な用途になると考えられている。
フリーデル・クラフツ反応などのようにカルボカチオンを含む反応にしばしば用いられる。例えば、樟脳の工業的製造の1工程はカンフェンのワーグナー・メーヤワイン転位による酢酸イソボルニルの生成だが、酢酸はこの際に転位生成物であるカルボカチオンのトラップ剤兼溶媒として働く。パラジウム炭素で芳香族ニトロ基を還元してアニリンとする際にも溶媒として選択される。
分析化学においては、アミドなどの弱い塩基の定量の際に用いられる。水よりもずっと弱い塩基なので、酢酸中ではアミドは強い塩基として振舞い、過塩素酸など非常に強い酸で滴定することができる。
その他 [編集]
薄い溶液が弱い酸として利用される。写真の現像において現像処理と定着処理の間で使われるが、これは現像液がアルカリ性であるから、弱い酸性を示す酢酸で現像処理を停止させるためである。この場合、食物由来のものではなく工業製品として合成された酢酸が使用される。他に、ヤカンや蛇口に付いたカルシウムなどによる水垢を除去する水垢除去剤、クラゲに刺された場合すぐに塗布する事によって刺胞を破壊し症状を和らげる治療薬、外耳炎患者の治療薬ヴォソール (Vosol) などへの調合剤、といった用途があげられる。また、家畜用の牧草のスプレー型防腐剤として、バクテリアやカビの増殖を抑えるために用いられる。コルポスコピー・上部消化管内視鏡においては粘膜を刺激し、正常粘膜と異常粘膜の反応の差異を判断に用いることがある。
様々な無機塩・有機塩類が酢酸から合成される。
酢酸ナトリウム - 織物工業、食品の防腐剤
酢酸銅(II) - 顔料、殺菌剤、忌避剤(サメ用)
酢酸アルミニウム、酢酸鉄(II) - 染料の媒染剤
酢酸パラジウム(II) - ヘック反応など、カップリング反応の触媒
酢酸の誘導体には以下のようなものがある。
モノクロロ酢酸 (MCA)、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸 - MCA はインディゴ染料の製造に使われる
ブロモ酢酸 - ブロモ酢酸エチルの製造
トリフルオロ酢酸 - 有機合成における一般的な試薬
これら、その他の用途に用いられる量は全生産量の 5% から 10% である(テレフタル酸の製造に使用される量を除く)。
細胞の固定に使われる。
融点 16.7 °C
沸点 118 °C