室内空気中化学物質についての相談マニュアル作成の手引き14 | 化学物質過敏症 runのブログ

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6.換気について

1)換気と室内空気中化学物質濃度

 一部前述したように、室内空気中の汚染物質濃度はその発生量と排出量で決まる。単純に一定時間における増加量を式にすれば


室内空気中の汚染物質増加量(C)=汚染物質の発生量(M)-汚染物質の排出量(Q)
である。汚染濃度が高くなると排出される量も多くなるので、いずれこの式は0になり、室内空気中濃度は一定になる。式の上からは、Qが大きいほど平衡濃度は低い事が想定できる。
 実際の住宅においてはMもQも絶えず変動するので簡単ではないが、Qの重要度は明らかである。発生量Mは建材、家具、日用品、食品等からの放散や生活行為等による発生できまり、汚染物質の排出量Qは基本的に換気できまるといってよいだろう(分解や吸着等特段の手段もこの頁を増加させるが、流入空気が汚染されていた場合は逆になる)。
 「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(ビル管理衛生法、ビル管法と略されることが多い)では、特定の建築物における室内環境基準値としてCO21000ppm以下等を定めている。

これに基づきオフィスビル等では機械換気システムの整備が進んでいる。米国では「シックビル症候群」という言葉が著名であるのに対し、日本では「シックハウス症候群」という言葉が市民権を得たのもこのことと関連があるものと思われる。
 Mが極端に大きい場合は、通常の生活で獲得しているQでは不十分であろうから、このような住宅については外科手術的な工事が必要となるかも知れない。こうした住宅を現存のものは改善し、新規には作らないようにしていくことが問題解決の上で重要なポイントとなるだろう。

2)換気の実際

 換気には大きく分けると自然力を利用する自然換気と機械力を利用する機械換気とがある。また、給気と排気のコントロール状況によっても第1種~4種に分けられる。


(1)自然換気
 特段の機械換気システムが備え付けられていない建物では、換気をしようといった場合、このやり方に頼ることになる。自然換気は自然力に依存しているので、この自然力を上手に利用することで換気効率を上げられる。自然力は主には風力や温度差によって作られる気圧の勾配である。
 例えば、建物に向かって風が吹き付けられると、風上側では気圧が上昇し、風下側では気圧が低下する。

よって、建物に隙間があれば風上側から風下側に向かって気流が発生し、自然換気が行われる。

この隙間を広げれば換気量は増え、狭めれば減ることになる。また、暖房や日光の入射などによって室内の空気が暖められると、暖められた空気が上昇することによって天井側の気圧が上昇し、部屋の内部に気圧の勾配が生じる。建物に隙間があれば、暖められた空気は部屋の上部の隙間から逃げ、逆に床面近くの隙間からは外気が進入する。夏季に冷房をすると、今度は冷気が部屋の下部の隙間から逃げる。

これによっても自然換気が行われる。このような自然換気は日常生活において特にそれとは意識しないうちに経験していることを利用しているものである。

(2)機械換気

 機械換気は機械力を使って強制的に圧力差を作り出し、気流を発生させるものである。
 機械力を使用するため、計画的に換気量を設定することも可能である。機械換気には給気・排気とも機械力を使用するものと、そのどちらかのみに機械力を使用するもがあり、給排気とも機械力を使用されるものが第1種、給気のみ機械力が使用されるものが第2種、排気のみに機械力が使用されるものが第3種換気と呼ばれている。給気・排気とも自然力を利用する自然換気はこの分類では第4種換気である。
 昨今の高気密住宅では、必要換気量をまかなえるように機械換気システムを備え付けているものがあるが、このような場合にはシステムを止めるのは望ましくない。これらについては「住まいのしおり」等の記載事項を守ることが必要であろう。



換気方式の分類

(3)換気量のコントロール

 機械換気の場合、換気量は機械的にコントロール可能であることが期待される。一方、自然換気の場合は周辺環境の影響を大きく受けるので、望みとする換気量を得るのは困難かも知れないが、その条件下で最大の効率を得るための工夫は可能である。基本的に昨今の住宅では、何もしなければ換気量が不足がちになると思われるので、換気量を増やす方の工夫が必要であろう。
 計画換気システムが備えられていない家屋において、換気量を増やすための基本的考え方は以下のようなものであろう。


窓開けに際しては開口部(主に窓)を2ヶ所以上つくる。
 空気の通り道を作るのが重要である。風上と風下の両方を開放するのがもっとも有効で、難しい場合は風上と側面を開放する。風下のみの開放ではあまり効果は期待できない。また、風上のみの開放では部屋全体の換気効果は低い。
 空気の流入が明らかに感じられるときなど、風が強いときには5分程度の窓開けでもほとんど空気は入れ替わると思われる。外出するなどして部屋が長時間締め切られていた時などには、窓を全開してまず空気を十分入れ換えるべきであろう。

換気用小窓、ガラリ、換気口を利用する
 昨今の住宅ではサッシやドアに換気用小窓やがらりが、壁には換気口が備え付けられていることが多い。これらはなるべく自然換気を利用しようとするものであるから、小窓やガラリはなるべく開放しておくようにし、換気口を気付かないうちに家具等で塞いでしまっていないか気を付ける必要がある。これらの換気口は上下に設けられていることが多く、風力のみならず温度差による自然換気にも有効であると考えられる。

補助的に局所換気を利用する
 大規模な計画換気システムが備わっていなくても、キッチンのレンジフード、浴室やトイレの換気扇等の局所換気はほとんど全ての家屋に備わっていると思われる。無風で自然換気があまり期待できそうにない時や、集合住宅で窓が一面にしか存在しない時など、これらを補助的に活用するのは有効であろう。この際に注意することは、これらの局所排気口と、給気口となるであろう隙間が離れているようにすることである。

居間の小窓が開いており、キッチンの換気扇が作動しているときには、居間~キッチンに気流が生じ、屋内が換気されることが期待できるが、換気扇の近傍に給気口が存在すると空気はその範囲でのみ循環し、室内の換気には有効とならない。(局所排気はこれが本来の役割であるので、逆に給気口を閉鎖しておく必要が生じるかも知れない)
 これらは特段の準備無しに活用できると思われるものであるが、適切な換気量が得にくいのであれば、換気扇や換気システムの導入が必要かも知れない。


runより:非常に長い記事になりましたがこれでも省略してます

シックスクールも考え方はあまり変わりません