業者1860万円支払い和解 「シックハウス」訴訟
自宅の防水工事で、手足がしびれるなどの症状が出たとして、神戸市の本田仁義さん(60)、紀美代さん(59)夫妻が「体調を崩したのは工事に使われた化学物質が原因」などと、建築会社など三社に損害賠償を求めた訴訟は六日、神戸地裁(紙浦健二裁判長)で、三社が和解金約千八百六十万円を支払うことで和解が成立した。
和解金には建物の評価額の六割にあたる約千五百万円の算定に加え、夫婦への慰謝料百万円が盛り込まれた。
訴状などによると、本田さんは一九九六年六月、同市長田区内の土地と建物を購入し、入居。約三カ月後からかび臭いにおいがしたり、壁面に染みができたため、九七年八月に防水・防腐工事を施した。約一カ月後、紀美代さんが足腰が立たず、下半身まひの状態となり入院。仁義さんも視力が急速に落ち、一時は声帯がまひした。
化学物質による健康被害の専門治療を行う北里大学病院での診断を受けたところ、化学物質過敏症による中枢神経機能障害と判明。
一九九九年に提訴に踏み切った。
弁論の中で本田さん夫婦は「夫婦ともに健康だったのに、防水工事後に発症した。使われた有機溶剤や防腐剤が原因と考えられる」と訴えた提訴から約六年が経過。社会的にシックハウス症候群や化学物質過敏症の認知は進み、二〇〇三年には予防対策を含んだ改正建築基準法が施行している。
今もつえを使って生活する紀美代さんは「長く、つらい六年間だった。和解という形になったが、私たちの訴訟が同様の被害に遭う人の励みになってほしいと話している。
2005年4月7日神戸新聞