日本住宅新聞 平成19年9月25日より
北里大学北里研究所病院臨床環境医学センターの宮田幹夫先生に聞く
「アース住宅」で電磁波の土砂降りから身を守ろう
電磁波過敏症(electro-magnetic hypersensitivity)の症例が報告されている。
微弱な電磁波(電場または磁場)をあびることで、頭痛、胸痛、めまい、吐き気、あるいは発作を起して倒れてしまうなど、化学物質過敏症と同様の症状を起していることが報告されている。化学物質過敏症は、化学物質、電磁波、ストレスなどの刺激が、身体の総負荷量(トータルボディロード)を司る「コップ」から溢れてしまい、その結果ありとあらゆる刺激に対して極端に抵抗力がなくなる病気である。
そのため「コップ」をいっぱいにしないような暮らし方を心がけなければならないが、それは電磁波過敏症にもおなじことが言える。
現在、電磁波過敏症については、我が国では電磁波と症状の因果関係がはっきりしていないため、診断書が書けない状況にあるとも言われている。しかし、そうしている間も「コップ」は確実に電磁波で埋められている
そこで、北里大学北里研究所病院臨床環境医学センターの宮田幹夫先生に「電磁波過敏症」について話を聞き、改めて身体総負荷量の仕組みを考えた。
海外では多数の報告が寄せられている
電磁波過敏症の有病率であるが、米カリフォルニア州における電話調査によると、2072名の調査で3.2%が電磁波によるアレルギーや過敏反応性を示した。また、スウェーデン・ストックホルムでの質問調査では、1万5000名の調査で回答率73%、1.5%が電磁波過敏症。60~69歳の女性に最多で、他の過敏症を有している傾向が高い。
スイスの電話調査(2006年報告)では、2048名に対して5%が電磁波過敏症で、症状は睡眠障害(43%)、頭痛(34%)。主反応電磁波は送電線と携帯電話で、53%の人がその健康障害に悩んでいるという。
しかし我が国では、化学物質過敏症の場合は、電気器具で眼球の動きなどを測定して判断してきたが、電磁波過敏症の場合、電気器具を使うことが出来ないので、測定・判断方法がない。
また、本当の過敏症と「思い込みの過敏症」の人がおり、この区別がはっきりつけられないため診断は困難を極めるとも。
化学物質過敏症から電磁波過敏症に移行する人もいるが、これは前述の身体の総負荷量との関係もある。化学物質の負担で疲弊した体には電磁波への抵抗力がないためだ。
細胞からカルシウムが飛び出して過敏症に神経細胞から神経細胞へ情報伝達する場合、その情報処理はカルシウムによってなされるが、細胞からカルシウムが飛び出すことが電磁波過敏症の大きな原因となる。
頭痛・疲労・睡眠障害などの神経症状、発疹・かゆみなどの皮膚症状などが報告されているが、これらの症状に一番効くのはマグネシウム(にがり)であると。電磁波過敏症を引き起こすといわれているNMDA受容体(N-メチル-D-アスパラ酸受容器)が過敏になっているのをマグネシウムが押さえるためだ。
治療法としては、前述のマグネシウム投与のほか電磁波負荷の軽減はもちろん、カルシウムの内服をはじめストレスの軽減、生活の健全化、薬剤療法などに加え、電磁波過敏症の主役が酸化的なストレスであれば、抗酸化剤(ビタミンC)などが効くともいわれている。
建物全体をアースさせる。屋内の電磁波を少なくするために、建物全体にアースをつけることは有効。
例えば、昔のラス張りのようなネットで家を包み、ラスの一部を取り出してアースしておくだけで十分効くはず。
ネットの網目の大きさで拾う電磁波の種類も違ってくるので、それを出来るだけ細かいものに工夫すればよい。
また、屋内の送電線をすべて鉄パイプに入れることも有効としている建設士もいる。
まさに、シールドドームと同じ状況をつくり、外界の電磁波を寄せ付けないようにすればいいのである。シールドクロスには、布の繊維のなかに金属粉が埋め込んであり、アースが取れるものと、小さな金属線を貼り付けて電磁波を跳ね返すことは出来るものがある。例えば、自宅の隣に携帯電話の基地局が設けられたら、その方向の窓にシールドクロスのカーテンをつければ、跳ね返すことができる。
「体にやさしい電磁波があるとすれば、自然界にあるシューマンウェーブでしょう。
これは非常に弱く30Hz前後。脳波の動きにも同調しています。
それ以外の電磁波はめったに自然界にはありえません。
だから人間はとんでもない世界を作ってしまったのです。
常識的に考えて進化の過程にあったものは体によい。なぜなら人間はそれに合わせて体を進化させてきたからです。
だから、進化の過程で現れないものは基本的に受け付けないはず」と宮田先生。
以前は高圧線のそばに住んでいても、電磁波で体調不良になることもなかった。
現在は増えすぎた携帯電話やパソコンのせいで電磁波過敏症になる時代なのだ。
近い将来、我が国も生活のあらゆる場面にコンピューターが利用されるユビキタス社会になる。
しかしそれは、別な言い方をすれば「電磁波共存社会」である。
そうなると、せめて住宅だけは健康素材でつくり、身体総負荷量の「コップ」の中身も、電磁波だけでなくそれ以外の化学物質も減らすようにしなければならない。
健康素材で住環境を整えることは、電磁波共存社会には欠かせないのである。