「ボクシングは麻薬」と、よく言われますね。

それの審判バージョンを書いてみました。

いってみよ~!!

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サッカーをやる人間は、皆口々に言うよ。
「審判だけはやりたくない」って。
審判やってもいいよって人間は10人に一人もいやしない。

「邪魔だ、どけ!」
「今のファウルだろ~が!!」
「どこがカードや!!」
「審判のせいで負けた!!」
「レフェリー替えれ」
「どこがオフサイドや~!」
文句を言われ、ののしられ、囲まれ、脅され、蔑まれ・・・・

日ごろはしんどい走りこみして、週末ピッチの上では報われるのかと思いきや・・・・
何せ正しい判定をした時でさえ、批判されるからね。
そして誰からも感謝されない。
さらに審判着は黒で、真夏には太陽光を吸収し、灼熱の暑ささ。

「なんで俺、こんなつらいことやってるんだろ・・・・」
そう思ったことも1度や2度じゃないよ。

でも審判って、自分のプレイヤーとしての実力よりも、はるかに高いレベルの選手と、同じピッチに立てるんだよね。

実際、選手上手いんだわ。

FWに当てる、落とす、当てる、落とす、ワンツー、シュート!
どんだけワンタッチでポンポン行くんだよって。

50mのサイドチェンジ。
ぴたりと味方の足元にボール放って。味方もぴたりボール収めて、そのままサイドえぐって。
どんだけ技術高いんだよって。

DFがFWへ斜め後ろからスライディング。
FW,まるで見えてたかのように軽くボールごとジャンプして避けて。
漫画かよっ!って。


一瞬でも気を抜けない緊張感。
押しつぶされそうなプレッシャー。
そしてゾクゾクするような高揚感。

カウンターなんか、そりゃ早いぜ~!
選手の技術高いから、カウンターもビシッと決まるわけ。
ゲームも終盤で俺も疲れているのに、すごい距離ダッシュしなくちゃ。

でも思うよ。俺だって走りこんで来たんだぞって。
負けないぜって。


そんな中、ファウルが起こる。

そのシーンをしっかり捉えていた俺は強く笛を吹く。
「ピピー!!!」
一瞬の静寂を、鋭い笛の音が引き裂く。
そして同時に、イエローカードという刀を抜くんだ。

ファウルを犯した選手を呼び、警告。

確信のある判定が出来たそのほんの一瞬、この俺が時間を、そしてこのフィールドという空間をあたかも支配しているかのような、奇妙な感覚に囚われるんだ。


その一瞬を味わうために、俺はこの審判をやってるかもしれないな。

そしてこれからも、フィールドに立ち続けるんだと思う。


一度やりだしたらやめられない。



そう、審判は、麻薬なのさ。