Impact Wrestling Hard To Kill 2021 1/16/2021

ノックアウツタッグ新王者決定トーナメント決勝
ジェシカ・ハヴォック&ネヴェア対ファイアー・アンド・フレイヴァ(キエラ・ホーガン&ターシャ・スティールズ)

 

強力なジェシカに対して、小回りを効かせながら対応するFNF。この組み合わせで出来る限界は感じたものの、俊敏なFNFと一発の重みで決めるジェシカとネヴェアという形を通して、やれる事はやった内容。FNFの小気味良いタッグワークは、磨けばもっと武器になるだろう。ジェシカのパワーやネヴェアのデイヴ・クリストムーブ等見所はある。平均レベル。
評価:***

Xディビジョン王座戦-トリプル・スレットマッチ
マニック(c)対ロヒット・ラジュ対クリス・ベイ

 

序盤はそつなく3ウェイをこなしていたが、マニックの剥がされたマスクの中から、ジョーカー風メイクのTJPが現れてからは、一気にギアチェンジ。乗りに乗る選手揃いのXディビジョンらしいスピーディーな3ウェイ。打ち合いだけではない要素で3ウェイらしさを打ち出していたのは良い。ラジュが上手くバランサーとして振る舞っていて、TJPとベイはキレで魅せる。余り期待はしていなかったものの、尻上がりに良くなっていき、勢いに乗ったままフィニッシュ。中締めとしては十分な出来。中々良い試合。
評価:***1/2



バーブドワイヤー・マサカー
サミ・キャラハン対エディ・エドワーズ

 

カリビアン・バーブドワイヤー・デスマッチさながらに有刺鉄線を巻いたロープや有刺鉄線ボード、ケージ、椅子や竹刀、バット等各種有刺鉄線形凶器が公認凶器となっている。とはいえ有刺鉄線なので、他の凶器を入れたくなる所ではあるが、普段、通常形式で勝負しているこの2人なので、手広く有刺鉄線系凶器の数々を使いつつ、流血を添えながら、デスマッチ色を強める。有刺鉄線をこれでもかと使い、ハードコア以上である事は示しつつも、普段デスマッチをやらない団体、しかもPPVの試合である事を考慮し、アングラになり過ぎない配慮も加えているのが憎い。スローペースでFREEDOMS、GCWやICWがやっている様なデスマッチからすると物量は足りないかもしれないが、有刺鉄線の殺傷力を最大限加える工夫はしているのは見事。

狂乱キャラを身につけたとはいえ、デスマッチよりハードコア色が強いエディ・エドワーズがいるので比較的スマートになる中、上手くタクトを握ったのはサミ。やはりハードコア/デスマッチと言えばサミ・キャラハン。まず表情の魅せ方が豊富。細かな点だが、スローペースのデスマッチを選んだ時点でこれが上手くないと質は上がっていかない。ダメージ表現や凶器を使う前、攻勢に出る点でも様々な表現を使っていて巧み。更にゲーマーであるサミらしい有刺鉄線を巻いた任天堂64のコントローラーの使用やカクタス・ジャックオマージュの自殺エルボーを使う所まで、手数は決して多くなくても、無駄がなく全て効果的。久しぶりにサミの本領をインパクトで見る事が出来た。テッサ戦が1年前のこの大会なので本当1年ぶり。この試合のサミは流石の一言。というかこれ位は簡単にやってきた選手である。

決して流行りを追った内容ではないが、この試合に求められる内容は全て注ぎ込んでいた。現在のインパクト・レスリングにおけるアンダーテイカー、エディ・エドワーズとHHHであるサミ・キャラハン。団体の古参となった2人が、ケニー・オメガ襲来という目玉の前にしっかりと大会を締めた。サミ・キャラハンファンは見逃せない内容。好勝負。
評価:****

“BULLET CLUB”ケニー・オメガ&グッド・ブラザーズ(カール・アンダーソン&ドク・ギャローズ)(w/ドン・キャリス)対リッチ・スワン、クリス・セイビン&ムース
 

ケニー&アンギャロはBULLET CLUBの名前とロゴが入ったコスチュームを着用。ギャローズのコスチュームには、The ClubやOCのロゴも入っている。
まず大会前にアレックス・シェリーが欠場し、代打に選ばれたのはムース。先日までスワンのパートナー、ウィリー・マックと抗争していて、スワンのインパクト世界王座を狙うアピールもしていたが、オープニングから大会中も、この試合では団体を背負って闘うというプロモをこれでもかと加えて、半ば強引ではあるがフェイスターンに踏み切る。確かにシェリーが入ればMCMGの連携が使えて、個々としてもかなりの見せ場を作れるが、スワンがシェリーの代わりにセイビンとの連携役に入り、強力な飛び道具としてムースが入った事により、パワーバランスが結果的に拮抗したのは不幸中の幸い。巨漢ギャローズにも対抗出来る体躯を持ち、ケニーと対峙させても一定の内容を生み出せる。特大のスパニッシュフライを放つ等大きな見せ場を作り、ムース史上でも上位の活躍を見せていた。

スワン対ケニーの対戦は、良い内容ではあるが小出しにする必要がある中で、この試合を裏回ししていたのがセイビンとアンダーソン。セイビンは主に受け役、繋ぎ役を担い、黒子に徹するかと思いきや、クレイドル・ショックでケニーを追い詰めたシーンは熱かった。

そしてアンダーソンは、支配ターンでは温存されたケニーの代わりに、2段支配の舵取りを担い、ケニーとギャローズを操縦。それだけならWWEでもやっていたが、個々のパートでも見せ場を作っていて、これは新日本の時のアンダーソンが戻って来そうな雰囲気有。伸び伸びやっていて好感。

個々が活躍するパートの振り分けのバランス、そしてそのシーンで最大限の活躍を見せる。トリオとしての完成度が素晴らしい。それだけではなく、華々しく参戦したAEW世界王者ケニーをインパクト軍が様々な手を駆使してギリギリまで追い詰めていく終盤は、熱量も最高潮。最後こそ支配的な雰囲気を出したものの、決して一方的ではなく終始スリリングな接戦だったのが高ポイント。演劇に走らずアクションペースの方が、このメンバーに合っていた。団体抗争軍団抗争の初戦としては申し分なさ過ぎる内容。PPVは勿論、通常放送が見たくなる作り方は憎い。来たるスワンやインパクト勢対ケニー、インパクト勢対AEW勢のクロスオーバーがますます楽しみになる一戦でした。
文句無しに好勝負。
評価:****1/4
 

 

全体評価:8.5