「Best of “Smiley” Kylie Rae」
今回は2020年振り返り企画として、4年という閃光の様な激動のプロレス人生を駆け抜けたカイリー・レイのキャリアを振り返る。
既にレビュー済の試合に新たにレビューを行った2試合を加えて、当ブログ的カイリー・ベストを選出し、今回記事としました。
彼女が残してくれた作品を忘れない為に、そしてもし戻って来た時に振り返る意味でも、
この記事を書きました。
Beyond Wrestling
Uncharted Territory: Episode 3 19/4/17
IndependentWrestling.tv王座戦
オレンジ・キャシディ(c)対カイリー・レイ
弱キャラから王者にまで成り上がったキャシディが、数年前までは無名だったけれども、ここ最近の躍進でAEWロスターへの仲間入りを遂げたカイリーの対決。カイリーらしく幸せ一杯で、キャシディらしくコミカルな展開も多く、PWGのブライアン・ダニエルソン対ケニー・オメガばりの指相撲を入れるまで尖った展開が続く。強さを売りにしていないキャシディなので、男女の性差によるパワーバランスの歪みはなく、フラットなぶつかり合いとなっている。そして何よりもコミカルもシリアスも全て力の尽くす限り全力で取り組んでいる。キャラクターとか性差とかを超越したパーソナルな部分が現れており、そこに彼らの優れた実力が上乗せされる。カイリーはニコニコしたキャラクターからは想像出来ないほど、サブミッションベースで、しっかりとしたレスリングもするし、大柄なキャシディをパワーボムで上げ切るパワーもある。クロスフェイスがフィニッシャーのカイリーと、アンクル・ロックを新兵器として使い出したキャシディ、ベノワ対カート感もほのかに感じる渋さもある。構成も隙のない形を選んでいて、尻上がりにテンションもクオリティも上昇。この試合が?と思うかもしれないけれど、一度見てみて欲しい。キャラクターやコミカル面等インディーらしさが溢れながら、メジャーにも劣らないテクニカルな激戦となっている。好勝負。
評価:****
Zelo Pro Wrestling Arrival 18/4/20
Zelo Pro女子王座戦
カイリー・レイ(c)対テッサ・ブランチャード
この試合も基本を大事に、より魅せ方やアスリート能力が向上した両者が、キビキビと動き、自信満々に試合をしていくので、粗もなく見入ってしまう試合。既にトップ選手となっており、風格漂うテッサのパワフルな動きに付いていくだけの力を持っているカイリーは流石。一つ一つの技が丁寧でインパクトの弱さを感じないのが素晴らしい。どインディーではあるが100万回再生以上されているのが、良くわかる一戦。最後まで勢いも丁寧さも落ちず。新世代の女子は私達が引っ張ると誇示するが如き激戦。
好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4
Zelo Pro Wrestling Milwaukee Meltdown 19/1/4
Zelo Pro女子王座戦-三本勝負
テッサ・ブランチャード(c)対カイリー・レイ
テッサが2連勝中で、背水の陣で挑むカイリー。更にトップへ邁進し続けるテッサは、ダガ譲りのジャベも見せ、極端なヒールプレイはないものの、煽りながら試合を進める。対するカイリーは天真爛漫さは失わずも、激しさも伴って食らいついていく形。一つ一つの攻防の美しさは維持しており、男子顔負けの強さを持っている。一本先取されてもテッサが強者としてリードし続けるも、ことごとくカイリーが返していき、まさかのストレートでフィニッシュ。内容は前回に引き続き素晴らしいものの、三本勝負という面でいうと、クイックでの二本先取、三本目がないという点で、ダイナミズムには欠けてしまう。試合自体はハイレベルなので、見応え十分だが、構造的問題があり、キャリアのなさが出てしまったのが惜しい。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4
Alpha-1 Krush The Line 19/12/15
カイリー・レイ対ジョディ・スレット
オーソドックスな一進一退。男子顔負けの力強さも兼ね揃えている。戻ってきたカイリーは変わらず安定感があり、しっかり試合を作ってくれる。スレットは、ワイルドチャイルドの異名の通り、パワフルさが魅力。テーマのないミッドカードで、しっかりと爪痕を残した。中々良い試合。
評価:***1/2
BLP(Black Label Pro)
Nobody Puts BLP In A Corner 20/1/18
IWTV Independent Wrestling王座戦
ウォーホース(c)対カイリー・レイ
メタラーキャラのウォーホースと陽気キャラのカイリー、異色過ぎるカードそのままに、ダンスタイムに入るかと思いきや、ウォーホースがパワースラム。そこからはシリアスな肉弾戦。パワー差はあるものの、実力差は余り無く、実績で言えばカイリーの方が勝っているとも取れるので、格差も感じず、まさに真っ向勝負という形。それは両者のスタイルに合っており、スピードとハードを強く打ち出した形に、カイリーのクロスフェイスがアクセントとして効いている。ウォーホースも一切の容赦無き攻撃を見舞いヒートアップ。カイリーがウォーホースにパワーボムを決めるシーンは、カイリーのアスリートとしての能力の高さが堪能出来るシーン。激しくも清々しい激闘。
好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4
GCW Keep In Touch 20/8/2
“MDKylie”カイリー・レイ対コール・ラドリック
本来はニック・ゲイジ対ラドリックではあったが、ゲイジの負傷による代役はなんとGCWデビューとなるカイリー・レイ!
真逆すぎる人選ではあるが、ラドリックは臆する事なく立ち向かうそのトンパチ感はやはり魅力的。肉体的にも技術的にもカイリーの方が上ではあるものの、切れ味鋭い動きと相手を小馬鹿にするキャラクター。GCWや東海岸好みの若手だと強く感じる。対するカイリーは、新鋭ラドリックに苦戦しながらも、ゲイジオマージュのフェイス・ウォッシュや男子顔負けのデッドリフト・ジャーマンと、笑顔の奥に潜む激しさを示した。試合通しての完成度としては平均より上レベルではあるが、ラドリックの将来に期待したくなる試合。
平均より上。
評価:***
Black Label Pro(BLP)
We're Back! A Wrestler's Story 8/22/2020
BLPミッドウエスト王座戦
カイリー・レイ(c)対ブレイク・クリスチャン
この試合は男子が女子を引き上げるのではなく、女子が男子を引き上げる。カイリーのオーソドックスでありながらパワフルな魅力が、典型的な若手ハイフライヤーであるクリスチャンの、ストロングな部分をこじ開けていく予想だにしなかった内容。前半までは基本的な攻防を積み重ねていく。遺恨はなく、特徴的なキャラクターがある訳でもないので、技量を測っていく形。いつもならクリスチャンが飛んで飛んで動いて動いてと長所を発揮して見せ場を作る所だが、グッと抑えてグラウンドも比較的多い展開が続く。技数は多くなくて、オーソドックスなスタイルであってもアスリート性もエンタメ性も兼ね揃えたカイリーの土俵で試合が進む。カイリーが作る流れに乗って、普段は見せない工夫を凝らした投げやカウンターを見せたクリスチャン。乱発しなくても一つ一つが効果的。そして満を辞してのハイフライングの価値がかつてない程に高くなる。将来目指す形が垣間見えたファイトであり、それを全て受け切って得意のスーパーキックと関節技連発で切って取るカイリーもやはり盤石の強さ。常に笑顔でハッピーなカイリーだが、試合になると高い安定感を誇り、誰よりもハードな試合をするそのギャップが素晴らしい。尻上がりに良くなったこの試合。今まで見る事が出来なかったクリスチャンの更なる可能性を引き出したカイリーの素晴らしさが光る。これぞインディというインタージェンダーマッチ。廃止すべきという批判の声も飛ぶ中、現在のシーンの旗手の1人であるカイリーが試合内容で見事にアンサーを返して見せた。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4
Warrior Wrestling
Stadium Series -Night1 9/12/2020
Warrior Wrestling女子王座戦
テッサ・ブランチャード(c)対カイリー・レイ
インパクトから離脱した元エースとそのテッサの代わりにエースとなるはずだったが結局団体から離れてしまった者の対決。まだこの時はカイリーもプロレスから離れる前ではあったが、改めて今見返すと興味深いというか、このベルトはある意味呪われているかもしれない。
テッサは、インパクト時代のテーマではなく、インディ時代のテーマで、メイクもナチュラルメイクで登場し、いつもの振り返ってからのウインクもなしとあの自信満々のステージングではなく、やはりどこかいつもとは異なる雰囲気を漂わせる。結果的にインパクト離脱後にテッサが行った唯一の試合となるので、本当はやりたくなかったけども、禊の為の試合とも言える。
オーソドックスなレスリングの展開から、場外戦では客に悪態をつくテッサ。小賢しい様は鼻につくけども、それでこそテッサで、やかましいのが1番似合う選手なので、これを機にヒールとして堂々としても良いかもしれない。カイリーもアスリート能力では引けを取らず、ハードワーカーな素晴らしい選手ではあるが、やはり立ち振る舞いの華やかさ等スター性に関してはテッサに一日の長がある。ヒールプレイを活用しつつテッサが押していき、カイリーが耐える展開。これらは過去に数え歌を作り出している両者なので、手堅く確実な方向で進める。最初は神妙な面持ちのテッサも次第にエンジンがかかり、勢いに勝るはずのカイリーを押さえ込んだのは見事だが、カイリーが一歩引いて、テッサを立てたという見方も当然出来る。こういう神経質な所が、後々プロレスから離れる要因にもなったのかと思うと悲しくはなる。スマイリーといういつも笑顔で元気いっぱいなのはカイリーの良い所だが、陽で居続けるのも大変な事なので、そのバランスが崩れたのかと推測。脱線してしまったが、最後は誰も傷つかないクイックによりカイリーが大逆転勝利を収めた。
期待以上の充実感で、やはりこの2人は格別。プロレス界において特別な存在である事を再認識する試合ではあったが、この様に才能溢れる2人でも、歯車が噛み合わなくなり、(テッサは過去の言動の反動が大きいものの、)様々な要因で上手くいかなくなるのは、社会人生活同様やはり難しいなとしみじみ思うばかり。
好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4
BLP(Black Label Pro)
Turbo Graps 16 2020 - Part 1 10/3/2020
Turbo Graps 16 2020 1回戦/BLPミッドウエスト王座戦
カイリー・レイ(c)対アレックス・シェリー
序盤はリスペクトを示しつつもコミカルさも多め。カイリーがシリアスモードに転じるも、いとも容易くいなすシェリー。想像以上にシェリーが封殺する形を取った展開。一定の質と熱さはあり、その中でカイリーの健闘模様は描いているものの、ここまで隙を与えないとは思わなかった。カイリーだからこそ遠慮しないで潰せたというのはあるが、シェリーが格の差を示した内容となった。平均的良試合。
評価:***1/4