新日本プロレス DOMINION In Osaka-Jo Hall 

大阪城ホール大会 20/7/12
NEVER無差別級王座戦
鷹木信悟(c)対SHO

完全にNEXTではなく、完全にこの大会はおろか2連戦通してのベストマッチ。
他のどの試合とも異なるのは、

この試合を特別にしてやるというSHOのスピリット。

そしてそのスピリットを感じ取った鷹木が、がっぷり四つで受けて立ち、

全く無駄を生み出さない試合構築でバックアップ。

鷹木もこの対Jr.の無差別級路線で結果を出し、

早く上位のベルト戦線に絡みたいその野心が、浮ついた空気感をかき消し、

そしてアクション面でもエネルギー全開の肉弾戦を見せ続ける。

もっと色んな事が出来る両者であり、カードとしても実績がある中ではあるが、

Jr.のスピード感とハードヒッターの激しさという路線1本に絞ったのが正解。

骨が軋む様な厳しい攻撃の応酬が続いた中で、

全編通して鷹木が少し上回りつつも、

SHOも格上の鷹木を超える一撃を持っているというバランス感覚が素晴らしく、

それを表す攻防のバリエーションも表情の豊かさも素晴らしい。

鷹木に関しては、ダメージ表現や煽り等、

シーン別に表情の変化を上手く付けているのも見事。
SHOはSHOで、ラリアット合戦に、パワーブリーカー、

クロスアーム式パイルドライバー、

そして未遂ではあったがショックアローと

インパクトも威力も強い技セットが続く中で、

MMAのバックボーンを活かした関節技を織り交ぜたのは大正解。

鷹木にはない武器なので、より緊張感と熱を生み出せる。

確実な技術とアスリートとしての能力が光った内容だが、

何よりも確実にこの試合を記憶に残る試合にして爪痕を残し、更に上に行く。

このスピリットを具現化し切ったのが何よりも素晴らしい。好勝負。
評価:****

IWGPタッグ王座戦
ゴールデン☆エース(c)(棚橋弘至&飯伏幸太)対

デンジャラス・テッカーズ(タイチ&ザック・セイバーJr.)
豪華メンバーのタッグ王座戦。皆メインイベンター揃いで、

シングルでもそれぞれの組み合わせで好勝負を残している関係。

連携はそつなくこなし、棚橋が追い込まれ、飯伏が反撃する形も適切。

只タッグという形に落とし込み、28分もの長丁場をやり抜くには、

潤滑油が少な過ぎる。飯伏はGL、

ザックはLDRSと名タッグチームの一員ではあるものの、

シングルレスラーとして大きくなり過ぎてしまい、

シングルの時に出す刺を、落とし込めていなかった。

ヒールの雰囲気やハードヒッティング等

持ち味を一番出せていたのはタイチであった。

攻防自体は個々の攻防で激しいシーンも

タッグらしいシーンも組み込まれているが、

この試合を名勝負にするぞというパッションはそこまで感じず。

それがあるなら、この4人ならもっと特別なシーンを沢山生み出す事が出来るから。

GAは数少ない連携技を雑に放っていたのも気になった。そしてクライマックス。
アイアンフィンガー、ドラゴンスクリュー地獄に、

合体ザックドライバーと制圧感を出すのは良いが、

それまで刺々しさはなくまとまっていて、

何なら脚攻めではなく首攻めだったのに、

結局ドラゴンスクリューと一貫性はなく、しかも長い。
せっかく関節技のスペシャリストであるザックがいるけれど、

足関節を殆ど使ってなかったというので違和感を覚える。

アイアンフィンガーからのフィニッシュで無難に終えても良かった。

土台は作っているので外れはしないが、このクラスの選手では、

中々珍しい位に一貫性のなさが足を引っ張った。

平均的良試合。
評価:***1/4

IWGPヘビー&ICダブル王座戦
内藤哲也(c)対EVIL

前日に衝撃の裏切りを経ての王座戦。

EVILは、ミニストリー期のテイカーを意識した風貌、コスチュームにテーマ曲。

Darkness繋がりの大先輩なので、それは必然か。

ファイトスタイルは、EVIL期を削ぎ落とし、どちらかというとプレミアム期の様な、

ヒールプレイ重視の試合運びとなる。

試運転にならざるを得ない中でもそつなくこなしていた印象。

そこでハードヒットに寄ってもターンした意味がなくなる。

だが問題は、実はベビー/ヒールが得意ではない内藤が相手である事。

天才と言われる様に器用なので、良くベビー/ヒール的展開や

外国人レスラーの相手にさせられる事が多い。

一定のレベルで対応はしているが、

そこで加点を出せる選手ではない。

田中将斗や石井智宏に代表されるハードヒッターに、

得意のハードバンプで渡り合う削り合いでこそ真価を発揮する選手。
遺恨戦である事は理解していて、制裁感を打ち出した序盤、

脚攻めでぐったりする中盤までは進められても、

終盤で脚攻めを無に返す様な技セットになっていて、それを頑なに崩さず、

気合で何とかしてしまう世界観は、

EVILがやろうとしている古典的なヒールプレイ重視の試合運びには合わない。
見応えのあった場外テーブルへのニークラッシャーも結局なかったことになる。
ハイライトで観るなら、解説者のミラノがやられ、

テーブルへのニークラッシャーなど脚攻めで窮地に陥るも、

各種得意技で反撃した内藤。しかしBCとヒロムの介入、

無慈悲な頭部への椅子攻撃、BUSHIマスクを被った、

EVILの新たなパレハとなったディック東郷の登場と煽りVに使えるシーンは多くあるが、

トータルで観ると退屈な時間稼ぎが多く、38分のロングマッチをするには、

悪条件が多過ぎたなという印象。

EVILはまだスタイルチェンジに入ったばかり、

肝心の内藤からは、良い方向に導こうとする気概を感じる事が出来ず。

それでは悪条件を覆す事は難しい。平均レベル。
評価:***

全体評価:7+