新日本プロレス
Wrestle Kingdom 11 東京ドーム大会 17/1/4

8:NEVER無差別級王座戦
柴田勝頼(c)対後藤洋央紀
宿命の同級生・同期決戦。
満身創痍の中己を貫く柴田と、CHAOS入りしたもののオカダの影に隠れている印象の強い後藤。
その現状に不満を持つ柴田が、眠る後藤の気合を呼び起こす。
殆どストーリー作りをしていなくても、勝手にストーリーが沸き上がるこの対戦。
レスリングの展開でも細かい技術を織り込んで挑発していく柴田に、淡々と試合をする後藤。
それでも挑発と熾烈な攻撃を続ける柴田に対し、負傷箇所である首狙いで応戦する後藤。
徐々にハードヒッティングが増え、炎が燃え上がっていくのが目に見える流れ。
思い入れのある相手だけあって柴田が激しさ全開で戦っている。
次第に後藤も熱くなって、かつての姿を呼び起こす。
そんな完璧なストーリー・テリングが出来上がっている。
柴田がG2Sを、後藤が昇竜結界や後藤式を使わなかったり、引き出しフルオープンというわけではなかったり、
後藤もエグイけれどもリバース型の難解な技も多かったので、
熱い男同士の特攻勝負というNEVERらしさには欠けるが、
終盤のノーモーションヘッドバット連打からGTR連打というエグさはかつての厳しさを取り戻していた。
試合には負けたが、次に進もうとする目的を達成した柴田。
王座を獲得し再起を誓う後藤。
今現在の二人のストーリーが詰まっていた一戦。
好勝負。
評価:****

9:IWGP IC王座戦
内藤哲也(c)対棚橋弘至
挑発合戦に苛烈な脚攻め。互いに同じような手法で鬩ぎ合うミラーゲーム。
その中で平静を崩さない内藤と、積極的に動く棚橋。
エプロンでのスリングブレイドや場外へのハイフライフロー等果敢にダメージを与えて、
死に物狂いで王座を取りに行く棚橋だが、内藤は最後の所でペースを握らせない。
今までのストーリーと現在の立ち位置を思い起こさせる心理戦と一進一退。
サブミッションも効果的に使い、ドラマ性を掻き立てる。
勝敗が最後までわからない様な攻守の切り替えの上手さで進めた後、
時代の終わりを思わせる圧倒感を出した内藤も見事。
今まで棚橋が散々相手にしてきたことを、
遂に内藤が棚橋のお株を奪う形でやり返した終わり方は印象的。
過激技やハードヒットが多い今大会において、
貴重なテクニカルな激戦を作ったのは見事。
文句なしに好勝負。
評価:****1/4

10:IWGPヘビー級王座戦
オカダ・カズチカ(c)対ケニー・オメガ
序盤は細かい攻防を積み重ねていく展開。ロングマッチを見据えてのじっくりとした攻防ではあるが、
ジュニアやルチャのバックグラウンドがあるだけに、
一定のスピード感と会場を広く使う事を忘れない。
その中でも必殺技の攻防を入れるのも繊細。
ビッグマッチでは定番の場外での攻防から、オメガが腰攻めで落ち着かせる。
落ち着かせても細かい一進一退を入れて、停滞をさせないのもさすが。
オメガのトップロープ越えトペコンでいよいよ終盤かと思わせて、更にもう一拍置いてからオカダのターンへ。
ここでもトップギアにはせず、オメガの高いギアを保ちつつ、
苛烈な腰攻め対オカダの得意のシークエンスという形でキープ。
これは、30分超えは堅いだろうと思った瞬間、突如としてブーストが始まる。
オメガの飯伏を彷彿とさせるバミューダ・トライアングルに、
テーブルを乗せたオカダへのダイビング・フットスタンプ。
これでハードコア要素は整った。さあクライマックスだと思った時、
この試合最大のスポットである、場外テーブルへのショルダー・スルー。
これで終わったかと思いきや、これから後10分以上試合を続けるという驚異的な展開。
後は必殺技の攻防になっていくが、レインメーカーをどれだけ受けても立ち上がり、
Vトリガーを見舞い続けるオメガと幾度となくレインメーカーを叩き込み、
片翼の天使は寸のところで喰らわないというオカダ。
終盤は、掟破りもカウンター式も変型も原型もカウント2.9も全ての要素を組み入れた死闘。
壮絶過ぎて唖然とする様な途轍もない内容。まさに限界突破。
2016年歴史的名勝負を作り上げた舞台で更なる歴史的な名勝負を見る事になるとは誰が思ったであろうか。
団体を背負う若き大エースオカダと、
一世一代の勝負をかけた漆黒のターミネーター・オメガの後世に語り継がれるべき大勝負。
2017年のMOTYが4日で決まってしまった。
文句なし5スター・マッチの歴史的名勝負。
評価:*****