- 米テキサス州は最近、AIとビットコインマイニングの需要を理由に、同州の送電網に必要な容量の見積もりを修正した。
- エネルギー需要の高まりにより、これら2つの業界に対する政治情勢は悪化している。一方、トランプ前大統領はマイニングへの支援を強化している。
アメリカのテキサス州の送電網は、ビットコイン(BTC)マイニング事業者や人工知能(AI)データセンターからの需要増に対応するため、まもなく大幅な拡張が必要になるとみられる。一方、これらの業界に対する政治情勢は悪化しているようだ。
6月12日にテキサス州上院のビジネス・商業委員会で、テキサス州の送電網を管理するテキサス州電力信頼度協議会(ERCOT)のパブロ・ベガス(Pablo Vegas)CEOは、これら2つの業界からの需要が送電網を圧迫しており、当局は2020年代末までにどれだけのエネルギーを生成する必要があるかの予測を見直す必要があると述べた。
「我々は、この市場が今後5年から10年、あるいは15年間にわたってどのように機能していくかを明らかにするようなパズルを組み立てようとしている」というベガス氏の発言が地元メディアに引用されている。
ベガス氏は、今後6年間で容量を8万5000メガワットから15万メガワットに増やす必要があると述べた。当初、この期間に送電網に必要な容量は13万メガワットだと予想されていた。
テキサス州の送電網における追加成長の半分以上は、ビットコインのマイニングとAIデータセンターが使うことになるだろうと彼は述べた。AIワークロード用のデータセンターは、ワークロードの負荷が高いことから、同等のデータセンターよりもはるかに多くの電力を消費する。
アムステルダム自由大学の研究によると、AIは数年以内にビットコインと同じくらいの電力消費量になる可能性があるという。
このような事態の中で、ビットコインとAIの電力消費に対する政治的な風潮が険悪化している。
州議会議員のホセ・メネンデス(Jose Menendez)氏(民主党、サンアントニオ市選出)は証言の中で、マイニング事業やAIデータセンターがエネルギーコストの安さを求めてテキサス州に移転することは「本質的に不公平」であり、一方でテキサス州の一般市民は「コストについて厳しい決断を下さなければならない」と述べた。
ダン・パトリック(Dan Patrick)副知事はXへの投稿で、これら2つの産業は「送電網に非常に大きな負荷をかける一方で、雇用創出効果はほとんどない」とし、テキサス州上院がさらに詳しく調査すると述べた。
「私は、膨大な電力を必要とし、雇用創出がほとんどない非常にニッチな産業ではなく、家庭やアパート、通常の事業でサービスを利用する顧客のために送電網を構築し、顧客のためにコストを可能な限り低く抑えることに関心がある」と彼は書いている。「我々はデータセンターを必要としているが、データセンターや暗号資産マイナーが送電網をクラッシュさせ、停電させてしまうような、無法地帯のような状況であってはならない」。
2022年12月、カナダのブリティッシュコロンビア州は、エネルギー需要の高さに比べて雇用創出数が少ないことを理由に、新規の暗号資産(仮想通貨)マイニング事業に対して18カ月のモラトリアム(一時停止)を施行した。州裁判所は今年初めにこの禁止令を支持した(モラトリアムは7月末までに終了する予定)。
こうした動きの中で、アメリカ共和党の大統領有力候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏はビットコインマイニング業界への支援を強化している。
「ビットコインのマイニングは、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に対する最後の防衛線となるかもしれない。バイデン(Biden)氏がビットコインを嫌うことは、中国、ロシア、急進的な左派共産主義を利するだけだ。我々は、残っているすべてのビットコインがメイド・イン・USAになることを望んでいる!そうすれば、エネルギーの覇者になれるだろう」とトランプ氏はソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」の最近の投稿で述べた。
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