ども、てんちんです。
今回は、僕の東京旅行の出来事を聞いていただきたく、筆を執りました。
楽しんでもらえるか不安もありますが、どうか少しの時間お付き合いください。
そう、きっかけはFanks!!からのLINEだった。
時は2024年、6月9日の朝。
「成龍の舞台挨拶、Chaiさんが席を譲ってくれるらしい。行くか?」
メッセージに気付いたのは昼をとうに回っている時刻であったが、僕はまだ夢の続きを見ているような気持ちでスマホを眺めていた。
…いやいや、これは夢じゃない。
チケットが取れず、あきらめていたはずの生ジャッキー!
すぐさま僕のハートはYESと叫んでいた。その喜び、胸のトキメキはとうてい隠し切れるものではなかった。
かくして2日後、僕のおそらく10数年ぶりの東京旅行が始まった。
ジャッキーと同じ空間で同じ空気を吸う、そのために。
さて、ご存じ遅刻魔の僕であったが、この日だけは遅刻するわけにいかなかった。
本来、僕の遅刻はどれだけ相手に気を許しているかを計る<友情のバロメーター>なわけだが、Chaiさんとは初対面であり、何よりChaiさんはFanks!!の同志だ。
いきなり迷惑をかけるわけにはいかない。
遅れて到着なんかしてしまったら最後、いくら「あんた、Fanks!!のトモダチ?」と問いかけても、「病気か?では氏ね!」と鉄の爪の餌食になることは間違いない。
「遅刻したら私が (劇場に) 入っちゃいますからね!」
先に知らされていたChaiさんからのメッセージに、きっとこの人は飛鴻のおばさん並みに恐ろしいヒトに違いないと、なかば怯えながら僕は早朝の新幹線を予約した。
仕事の都合もあり、前日ほとんど睡眠を取れなかった僕は、新幹線で爆睡する予定であった。
席に着き、耳栓代わりのイヤホンを装着した僕の頭に響き渡ったのは、『東京サタデーナイト』。
確かに成龍の楽曲で組んだリストではあったが、100曲以上のランダム再生でお前が最初に来るのか。
これからやってくる感動と幸福を予感させるその瞬間に眠気は吹き飛び、東京までの時間はすべて成龍(もしくは成龍映画にかかわるアーティスト)とのデュエットに費やされることになった。
午前9時30分、東京駅着。Chaiさんとの待ち合わせは有楽町に午後2時。
【東京駅……魔都が牙をむく!】
写真撮影 : てんちん 無断転載禁止
なぜここまで早い到着になったかというと、この日、僕が予約した新幹線はJ〇Bの格安チケット。なんとアクティビティの無料券がついてくる。
せっかくの東京だ。旅行気分を存分に味わって最後は成龍で締める。そんな最高の1日を計画していたわけだ。
決してChaiさんのことがオソロ…いや、なんでもない、なんでもない。
もう、ドキドキよ!
そんな心境とは裏腹に、大都会に降り立った僕への最初の洗礼は、6月の午前中とは思えないほどの日差しであった。
ああああああ!暑いわあああっ!。
まるでデビルビームを浴びているかのようだ。経験はないが。
しかし、なんとかこの熱光線を耐えきらねば、楽しい東京成龍旅行はありえない。
待ってろよ、ジャッキー!
僕は気を取り直してJ〇Bのアクティビティ、憧れの東京航路、はとバスの乗り場へと歩き始めた。
しかし遠い。スマホのナビを見て、なぜこんなに遠まわる必要があるのかと憤る。
そうだ!このビルの中を横に突っ切れば向こう側の発券所に早くたどり着けるはず!
しかしその浅はかな考えは分厚い鉄筋コンクリートの壁に阻まれた。
今度こそ、今度こそと、近道発見にチャレンジするが、スマホのナビの正しさを発見するばかりで、一向に発券所にたどり着かない僕であった。
発券の締め切り時間が迫る。
あれ?こんなはずでは?
そこに追い打ちをかける持病の腰痛。
流れる汗はデビルビームによるものなのか、痛みをこらえるために出る脂汗か。
なんとか発券所に到着。発券の手続きをし、さらに十数分、炎天下のバス停留所で発車時刻を待つ。
ようやく添乗員のお姉さんが現れ、案内されたのは窓際の席であった。
あ、やった、これはうれしいぞ。少し生気がよみがえる。
腰はもう限界。やっと座れる、よっこいしょ。
…ん?
あれまあ、お尻が座席につかないぞ?
それもそのはず、座席の背もたれから前の席の背もたれまでの距離が、僕のお尻から膝までの3分の2程しかない!
そんな…これでは座れない。
すぐさま添乗員さんに相談するが、空いているのは後方の、屋根に隠れたつまらなそうな席だけだという。
仕方なく窓際の席を遅れてきたおじさんに譲り、僕は通路に足を投げ出す形で横向きに座ることにした。
そして数分後、僕はこの判断を後悔することになる。
実は通路側の肘掛けと前の背もたれの幅が僕のフトモモ2本分の幅ギリギリの設計となっていた。
何とかなるかと思っていたのもつかの間、僕のフトモモはバスの加減速やハンドルワークに、ギロチンのごとく痛めつけられることになってしまった。
【走るギロチンアクティビティ!】
写真撮影 : てんちん 無断転載禁止
痛い!痛い!痛い!
添乗員さんの棒読み台詞もまったく頭に入らない。
ルートは約一時間。早く終われと祈り続けたが、時間が早く経つはずもなく。
僕がこのアクティビティで得たものは大都会の思い出ではなく、フトモモに刻まれたアオタンだけとなった。
自分の巨躯を恨めしく思うのは久しぶりのことだと考えながら、いったい僕は何をしに来たんだ?と自問せずにはいられなかった。
地獄の東京巡りが終わり、日陰で休みながら時計を見れば約束の時間が近づいている。
時刻は正午過ぎ。Chaiさんとの待ち合わせは東京駅からひと駅の有楽町に午後2時だ。
今から行けば十分間に合うはず。
僕は、スマホのナビの目的地を有楽町の駅前案内板に設定し、フラフラと歩き始めた。
朦朧としながら歩き続けて十数分。
…おんやあ?遠いな、東京駅。
え?東京駅?
ほ、ほんまにこっちでええのか?
気づいた時にはすでに時遅しと、北海道出身の某カリスマアーティストの声が聞こえた気がした。
自分の立つ場所が、東京駅と有楽町駅の中間地点であること、スマホのナビが徒歩モードになっていることを知った瞬間、僕はスマホを投げかけた。
そこから先、待ち合わせ場所の駅前案内板を見つけるまでの記憶が、本当に、まったくない。
ついた!と思った瞬間、一瞬、天地がひっくりかえって膝が笑ったのはよく覚えている。
今思えば、よく無事に待ち合わせ場所にたどり着いたと思う。
とにかく、水分補給と休憩だ。
近くに喫茶店を見つけた僕は、案内板を指さし確認し、そちらへと向かった。
力なく歩き出すと、すぐそばに二人連れの女性の姿が見えた。
片方の女性が天に両手を大きく突き出し、何かしゃべりながら笑顔で踊っている。
一瞬、その姿がジュリー(沢田研二)に見えた。
ああ…、やっぱりトキオですなあ、変な人がいる。
気になるが、あんまり見ないようにしよう。
そう考えながら、僕は喫茶店のドアを開くのだった。
次回(9/11 未定)、【なみだ雨 編】に続く!