うちの庭にはギンモクセイの木があって、
毎年、その花の香りがしてくると
秋が来たんだなぁって思う。
でも、今年は、その香りがしない。
ひいおじいさんが神門通りで創業した大正13年には、
すでにこの木があったそうだから、
樹齢100年くらいにはなるんだろう。
むかしは、青々と葉を生い茂らせてたのに、
ここ数年、どんどんと勢いがなくなってきて
枯れ枝が目立つようになってきた。
見上げると、
葉っぱがスカスカ。
昔は、
空が見えないくらいだったのになぁ。
虫なんてよせつけないような葉だったのに、
あちこち虫に食べられて、
葉っぱは穴だらけ。
いつの間にか、
幹にはきのこまで生えてきて、
しかも、だんだん増えてる。
以前は、よじ登ることのできた木の幹も、
叩くとなんだか空洞ができてそうな
軽い音がする。
やっぱり弱ってるんだね~。
小さい頃は、
ギンモクセイの木があんまり好きじゃなかった。
葉っぱはトゲトゲしてるし、
なんだか陰気な感じがして、
どうせならキンモクセイのほうが
香りも強いし、よかったのに。
と思ってたけど。
なんだか弱ってくると
寂しい気がする。
ついに花も咲かなくなって、
秋の知らせもないのかなぁと思ってたけど、
よくよく見ると、
ほんのちょっと、
小さな白い花が咲いてた。
くんくんと嗅いでみると、
ほんの少しだけ、
ギンモクセイの香りがした。
弱ってもなお花を咲かせる生命力。
弱ったら弱ったで、
虫やきのこを養って、
小さないのちを支えるのは、
やさしさか。
ギンモクセイの控えめさが今は好き。