入院生活6日目の夜。

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痛みと熱が落ち着き、やっと人心地がついてきた。

夜になると更に熱が出るため入院以来ずっと一日3時間程度しか眠れず、昼間も痛みで目が冴えてしまっていた。
やっと今日の昼になって、少しうとうとすることが出来た。

弟が買ってきてくれたクルマ雑誌(読むのは何十年ぶりだろう?)がベッドサイドに置いてある。
妻が持ってきてくれた映画のDVDとお笑いのDVDも。
でもまだ見る余裕がなくて、ただうとうとしていた。

そのうたたねの中で、短い夢を見た。
悲しい夢だった。


僕はまだ少年で、大きな誰にも言えない悲しみを胸に押し込んで生きてる。
友達とはしゃいで遊んでいても、一人でいる時も、家族といる時も、その悲しみがつきまとう。

誰かに伝えたいけど、伝えてしまうとその悲しみが破裂してしまいそうで、そしてその悲しみの原因が真実として固定されてしまうことが怖くて僕は何もなかったことにして生きてる。

ある日、その悲しみを抱えきれなくなった僕は母親のところに走って泣く。

僕は○○(弟の名前)がいない世界で生きていくのはもういやだ。
ねえ、なんでもう○○はこの世界にいないの?

ああ、我慢していたのに、泣いてしまった。
○○がもういないことが事実としてこの世界に固定されてしまった。そう僕は思う。

そして、目が覚めた。

夢であることに気が付き、僕は胸をなでおろした。
ああ、よかった。よかった。

弟も、弟の奥さんも、
僕の妻も、もう80になる母親も、元気だ。
おじさん夫婦も、その息子たちも、元気だ。

よかった。

入院してから初めて今日はぐっすり眠れるような気がした。