ライブ終了後


お礼の連絡が来るかと思ったけれど

来なかった。


私から「お花は受け取ってもらえましたか?」

とメッセージすると


「ライブ来てくれてたんだね。ありがとう。

これからすぐベトナムへ飛ぶので

お花は実家に預かってもらいました。」と


返信がきた。


「差し入れ、甘いものとお花と

悩んだんですけど 

なんだかお花を渡したくて。」


と言うと


「うん。とても嬉しい。お花の方が。

甘いものは太っちゃうしw」と返ってくる。


🌕


私は実家をどんな気持ちで出てきたか

少しだけ打ち明けた。


せっかく光の方に歩き出しているあなたを

私の暗い気持ちに引きずってしまいそうな

気がして言えなかったのだ、と。



彼からは「人のこと考えられてえらいね。

でも、おれは引きずられないから大丈夫だよ。」


と返事がきたけど、


私には本心と思えなかった。



だから最後にそっと伝える。


祈りとともに。



「もうそんな風に感じることは

少ないのかもしれないけれど、

もしまた自分が

世界にひとりぼっちだと

思ってしまったときは

私のことを思い出してください。」



私が幼少期からの孤独を

あるていど乗り越えたように振る舞うことを

彼は嫌がった。


けれど私は知っていた。


彼もまた、そんなふうに

自分の孤独を隠していたことを。



「うん。心強い。」



という彼の言葉に、一瞬だけ

心の繋がりが戻った気がした。


飛行機に乗って離陸ギリギリまで、

そしてベトナムについてすぐ

移動中のタクシーの中でも


彼はずっと

メッセージを続けていてくれて


身体の距離が遠くなるのに

心は側にいるのが


私たちらしいと思った。


🌕


これから私たちは

連絡を取らなくなる。


「神様がくれた特別な時間」の終わり。



でも、あの砂の城は

波にさらわれることなく


ひっそりと

そこに在りつづけ


10年後のある日

息を吹き返す。


あのころは想像もしなかった

新しい形で。



*第二章に続く*