鷺沢 萌……泉鏡花賞を受賞した、女流作家。
「町へ出よキスをしよう」などの淡麗かつ、辛めのなエッセイや物語などを
数多く残し、2004年4月…愛犬のコマを残し、自殺した……。
なぜ…彼女は、「大切な犬」を残して……あの世に旅立ってしまったのか…?
オレが、身をもって悟った覚えがある。それは一種の衝動であり、
気持ちでは抑えられるものだが、彼女は抑えている自分を嫌悪して、自らを
死に追い込んだのではないかと感じたことがある。
昨年の12月、オレは親からある仕事を頼まれた。
それは、ある一冊の本全ての漢字に「よみがな」をつけることだった。
この仕事というか「作業」は、本を読みながら手を動かすというもので、
思うように進まず、実家に泊まりこんでまでしたが、オレの手には負えなかった。
睡眠不足の状態が二日続き……両親は仕事で出払っているとき……
実家で飼ってる犬たちが目に入った。オレにとって可愛い弟、妹である。
朦朧としたアタマで、次に目にしたのは恐ろしいことに
「一振りのナタ」だった……。
「これを犬たちに振りおろしたら…どうなるのだろう……。」
オレは何度も頭を振って、憑依したような悪意を振り払おうとし…薬も
次から次へと飲んでみた。それでも無理だった。
そして、オレの心の中で強すぎる「自戒・自罰の念が渦巻いてくる」
『死んだ方がいいのではないか』という考えが頭をもたげてきた。そんな中
友人のところに電話をかけたのだった。そして、話を聞いてもらう。
そこで、ようやく気持ちが落ち着いたのだった。
友人は「悪いことを考えたからと言って、死んだらあかん」と落ち着いた声で言い
「耐えた自分を、よくやったとほめろ」とも言った。この言葉には
オレ自身も、家族も……そして、犬たちも救われたのではないだろうか。
あれから一カ月たち、医者や別の友人に「破壊衝動」について尋ねると
「そんなものは…誰の心の中にも存在するよ」と言われて思ったのだ。
鷺沢さんは…あの日、燃え尽きた心で何を見たのか。
愛犬のコマに「ナイフ」を突き立てている自分を想像してしまったのでは
ないかと…?そんな自分を抑え続けていることが恐ろしくなり…
「自らの命を捨てて、愛犬を守ったのではないか」とオレは思った。
オレには、バロン・ピース・カノン・クロ・ハナと、心が安らぐ犬の兄弟が
5頭もいる。どれも個性豊かで愛嬌があり、かけがえのない家族だ。
数年後、コマは鷺沢さんのところに帰って行った。あの世で
末長く幸せに…苦しみのない世界で楽しんで生きていってほしい。
オレは、年取ったバロンと一緒に、遠吠えするのが大好きである。
みんな…仲良く暮らそうな。
そして、鷺沢さん…7年たった今でも、貴女のことを想い、悲しんでる人たちが
見えてますか…。
