オレは、Zを取りにマンションまで歩いた。 ミカももちろん一緒にである。
隣町までの駅の切符を買ったのだが、オレが『もう少し一緒にいたい』と言うと
「じゃあ31アイスクリーム食べる!」とミカが言った。
喰うことばっかだな!コラ!
ミカにせがまれて、オレは街の31アイスクリームに連れてゆくが、やれやれ…
「動けないから、お願い!買ってきて♪」ときた。……あのなぁ……。
ミカに言われたとおり、チョコチップの雪ダルマと、オレはオレで
ローズのシャーベットとベリーベリーストロベリーで雪ダルマを作り、ミカと
アイスクリーム屋の駐車場でエアコンを効かせて二人で食べた。
このやんちゃ娘には、ちょっと「おしおき」をしてやるかなぁ……。
そう思ったオレは、Zを湾岸沿いに向かって走らせる。走った先には
黄色いネオンが眩しい、一軒のラブホテルがあった。
『駐車場に入ったら、マジで焦るだろう』…そう思ったのだが……あれ。
ミカはポカーンとして、「ここで遊ぶの?カラオケとかあるの?」と聞いてくる。
ミカは、ラブホを全く知らなかったのだ。ただ「何もしないでね」とは、
オレに念押ししていたが。
イタズラは失敗だったが、ミカと二人っきりになることはできたようだ。
ミカはホテルに入るなり、テレビが観たいと言い出した。
オレは風呂に入りたかったので
テレビの説明書を取り出し操作してやる。バレーボールの「日本VSロシア」が
画面に映し出される。さて、風呂に行くか。
風呂場に行くと、ここにも防水式のテレビが設置されている。
いい部屋なら当たり前だ。
ラブホテル初めての、ミカを呼んで風呂場を案内すると「すげー!」を連発していた。
そこで、オレはミカを掴まえて言った。『……ここは何するとこだ?ミカ』
「何も…しないよ…ね。」声が少し震えている。ミカはオレの事を
友達と思っているのだ。
「友達とは…できないよ…ねぇ……」と言葉が続いた。まぁ、いっか。
『今度は心決めてね♪』
オレは手をゆるめて、うさぎちゃんを逃がしてやったのだ。
ミカはオレの手を逃れると、携帯の電源が落ちかかったので、
備え付けの電話で友達としばらくの間しゃべっていた。
オレは、ミカの座ってる椅子に乗ったり、備え付けの冷蔵庫から
ミネラルウォーターを出して飲んだりして、気が付くと帰る時間になっていた。
Zは轟音をあげ、ラブホテルを飛び出し…湾岸沿いを一直線に、
隣町の駅へと向かった。
まだ、ミカはオレの心を受け入れてはくれそうにない。
だったら、少しずつ……『流れる髪にキス』から始めればいいのだ。
慌てずにゆっくりと恋をしてゆこう。
