ローズを傍に、オレは他愛もないおしゃべりをする。
基本的には、一つ話したら「二つ聞き」二つ話したら「三つ聞く」
それが、おしゃべりのマナーだと思う。自慢話や過去を掘りまくるような
マネは、『どこの女にも嫌われる』と思っていい。
ジョッキを傾けつつ(車なので、もちろん中身はホットのウーロン茶だ)、
オレはローズに「クリスマスのプレゼント」の話を振った。そうしたら彼女は
ipodもほしいんだけど…と切り出し、心を痛めていることを打ち明け始めた。
彼女は、フィリピンの大学を出て、日本に渡り3年近く今の店で働いている。
夜の仕事でつらいことも数多くあったが、そんな自分に『ガンバレ』という
気持ちで数万の指輪を買い、大事にしていたのだ。
彼女の左手の指には、よく見るはずの指輪がない。先月フィリピンに帰ったり
何かしら紛れてしまいなくなってしまったのだそうだ。
思い出して、また気持ちが落ち込んでいるローズに向かって
オレは言った。
『指輪を買おう。二人で持ってるお金を合わせて!
ipodは壊れるけど、指輪なら絶対に壊れない!』
ローズの顔が、パッと明るくなった。そしてにっこりと笑顔になった。
「じゃあ、野上に行くね」と、彼女は繁華街の一角を指して言った。
『オーケー♪』と、オレが言う。
「オーケー♡」と、ローズも言う。あとは何時にするかの約束だ。
23日の午後2時に、地元の駅を出て繁華街に向かうことになった。
オレのプレゼントも、そこで買ってもらえばいいだろう。
たぶんその日の夜に、新しい指輪を身につけてローズは仕事をするに
違いない。オレは、来月でなきゃ店に行けない。…それでもいい。
指輪の形をした『絆』…どうか虹となって、オレとローズの心に
橋を架けてくれ…♡