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第2節.

まぁ探すといってもだなバンプの楽譜を片っ端から見ていくだけで、


正直、店舗内ではかなり邪魔になっているであろう。さっきの2人組よりも。


幸い、店舗内はすいていてぼくらのほかに3人くらいしかおらず、店員も一人。二人といったところだ。


楽譜を見ていてもさすが僕である。どこが難しいかさっぱりわからん。思わず唸り声をあげた。


「どうしたの?」


秋人が心配そうな顔でこっちを見る。あぁ、スマン。ちょっと頭が痛い。


「薬あるよ。いる?」


いやいや、ちげぇから。見てるのが難しくて。


「なんだよ。びっくりするだろ」


で?なんか良いのあったかよ。とそれとなく聞いてみる。


すこし間を置いて秋人は


「これとか良いと思うんだよね」


と2冊を差し出す。それは「車輪の唄」と「オンリーロンリーグローリー」の楽譜だった。


うん、これなら良く知っているし見た目難しいところもあまりなさそうだ。


浩太~そっちはどうだよ。と店の中なのに大声で叫ぶ。われながら迷惑だな、と思う。


しかも浩太はんなぁ声だすなよ、馬鹿が。見たいな目で僕を見ながら


「わっかんね。」


と投げやりな返事。なんだ叫び損じゃねぇか。むしゃくしゃしてきたのでこのやくたたずを


呼び戻し、もうこの2冊でよくね?みたいなことを行って会計を済ませ外に出る。


もうすでに冬を迎えようとするわけで白い風が僕らの体に染み渡る。


おかげに日がどんどん短くなるので4時を回ったところなのにもう外は暗い。


めんどくさいから、飯、食っちまうか。と僕の提案に二人は賛同し、ちかくのファーストフード店へ。


適当なものを注文し、おのおの自分で一冊ずつ買った楽譜を見ながら協議を開始する。


といっても、基本的には僕と秋人のパート分け談義がほとんどなので浩太はカヤの外だ。


結果、僕がメインのコードプレイ。秋人がリードプレイを担当することで決着。


ジャストタイミングで頼んでいたものがウェイトレスによって運ばれてくる。


やっぱメイドよかウェイトレスだよな。なんて思った自分に嫌気が差した。すると


「おまえさ、ウェイトレス派だよね。」


と浩太。ちょっおまっ何言ってんだよ。


「いや、だってだいぶ前に豪語してたじゃん。」


くっそ!!まったく僕は馬鹿なことを豪語してしまった。本当に馬鹿だった。


そして僕らは早足でそれぞれのものを急いで食べて外に出る。


さっきより更に寒くなっている。2℃くらいだ。白い風は蒼くなりかけている。


どこかいく?と一応きく。本当はマジで寒いから帰りたい。


二人はそろって首を振る。寒いのは皆同じかよ。 じゃぁ帰ろう。


「明日までに完コピしてこいよな。」


浩太、おまえができるならやってもいいぞ!まぁ無理だろうが。


「そうだよ。できないのは浩太だよ。」


そうだそうだ!まったくできもしねぇで。と二人からの批判を浴びて浩太がしょげる。


まぁ相応の罰だよね。と秋人と俺。そのまま解散。


家に帰って母に外で飯を済ませてきた旨をつたえて、部屋に入りギターを手に取る。


皆で決めたところにより「オンリーロンリーグローリー」からやることになっていた。


CDをいれて曲を確認する。目立って激しいところはない。時間をかければできそうだ。


ギターを持ったはいいが、眠たい。かなり眠たい。もう寝るか・・・・・


そうして・・・・眠りについた。

第1章・1節「始まりのウタ」―同好会・始動。




あぁ・・・長い回想だったな。未来永劫まで続きそうだった。


こんな過程を経ていま僕達は放課後、技術室に集まっている。ん?なぜかって?


あれから全くもって毎日が大変だった。同好会設立にあたって責任者となった僕は


校長室に呼び出され、生徒指導室に呼び出され、職員室に呼び出され・・・・・


ほかにもいろいろなところに行った。良い思い出ではない。思い出させないでくれ。


こうして俺が学校中を奔走したおかげで、同好会の設立は思いのほか早期に実現した。


活動場所は技術室、機材は自前(当たり前だが)、費用は多少給付されるらしい。


そして設立から1ヶ月経った今、僕らは技術室で活動をしている。


無論美術部をやめたわけではない。週2日は顔を出すように言われている。


もちろんそうしているし、もとよりやめるつもりは無かった。なんとなくだけど・・・ね。


そんでもって、今、僕らは早速バンプのコピーに取りかかる。


まぁ僕としては初期が好きだから、初期がやりたい。といったが・・・・・


「僕ら初心者じゃん。まず楽譜見てできそうなの探さなきゃ」


と秋人一蹴され、週末に近くの楽器店に赴くことに・・・・そして当日。


わらわらと入った僕ら(3人なのになぜかわらわら)は真っ直ぐ楽譜コーナーにいった。


そこで唖然。1組の男女が楽譜見ながらイチャついてやがる。いや、楽譜見てねぇな。


あれは完璧に相手の目見てるよね。あれは楽譜見てないよね。いやないわ。と、僕。


「聞えるって。そんなことをいっちゃダメだよ。きっとすぐ別れるんだから。

 今があの人達にとって凄い永遠の愛に映ってるんだよ。邪魔しちゃ悪いよ。」


秋人・・・・お前は発言が黒すぎる。


「まぁ邪魔なのは向こうだけどね。実際。場所わきまえろっての。」


浩太、お前がそんなに言える子だとは思わなかったぞ。やべ、聞えてるっぽい。


嫌そうな顔をしてカップルは立ち去っていった。ザマミロ。一人身なめんな。


ということでテリトリーを確保した僕らは僕と秋人が1曲ずつの楽譜を、


浩太がアルバムの楽譜をそれぞれ調査することにした。

回想(最終)・・・出会い。そして設立(後編)


こうして俺らの軽音楽ライフは始まった。なんの妨げも無いようにみえた。


親もやることを見出した俺を温かな目で見てくれていた。カンパもしてくれた。


浩太がドラムをはじめたことも、俺にとってとても嬉しいことだった。


わからないことは秋人が教えてくれたし、幸い、父にも基礎技術があった。


そして3人、すなわち俺と浩太と秋人はバンドを組む方向で話をしていた。


じゃぁ今度集まって話そうぜ。という俺の提案に2人は


「そうだね」


と声をそろえていった。本当に問題は無かったんだ。このときは・・・


それから俺らは何度か各家で打ち合わせを重ね、いろいろなことを話し合った結果、


バンド名はcrosstone(交差する音色)というものにし、欠員のベースはそのうち見つける


そしてヴォーカルは俺と秋人が担当することになった。


そして意味のわからない注文が2人からあった。


「おまえさ、自分のこと‘ぼく‘ってよべな。いまから」


意味不明だったがまぁ苦になることでもない。というわけで今から俺は「僕」となった。しもべじゃねぇ。


そして僕はじゃぁ練習始めようってことで「どこで練習する?」と2人に問うた。


とたんに全員が沈黙・・・・・


「恭平のところは?」


うちか?うちは六畳しかねぇよ。無理だろうな。浩太、お前のところは?


「うちは無理だよ~」


何でだよ。お前の家めっちゃ大きいじゃん。ドラムもあるし。


「うちさ、寝たきりのばぁさんがいるんだよな。知ってるだろ?無理無理」


わりぃな。それを忘れていたのだ。僕は一応謝っておいた。


そして秋人の部屋もどう見ても僕の部屋とは替わらない。これでは無理だろう。


さらにここは住宅が密集している。あまり大きな音を出すわけには行かない。


「じゃぁ練習できないね。」


秋人がふいにそんな弱音を吐く。馬鹿野郎、諦めてんじゃねえよ。ととりあえず言う。


「スタジオとか借りれないかな?」


ナイスアイディア!浩太!!と思わず叫ぶ。照れる浩太を尻目に僕はケータイを動かす。


すぐに近くの楽器店が検索にヒットした。近隣にはここしかない。スタジオは借りられるようだ。


「うわっほうぅぅ!!!!!」


という奇怪な叫び声は僕のトーンの低い声にさえぎられる。1回3000円だとさ・・・・


「・・・・・・・・」


2人は沈黙。それはそうだ。3人のこずかい全部たして5000円くらいだ。無理である。


そのあとは良い案が出ないまま僕らは帰路についた。


家に帰った俺はいつもの半分しか飯を食べず。電気を消した部屋でひとり、物思いに耽っていた。


ふいに某小説のメインヒロインの言葉が頭をよぎる。


「無いんなら作れば良いのよ!!」


なにをだ?何を作れというのだ?スタジオか?無理だ。何百万かかるかわからない。


俺らが作れるもの。それは何か。サークル?そんなもの作ってもやるところがない。


ん?サークル?・・・・・!!!!!


一瞬、僕の頭の中に一筋の風が吹く。


そうか・・・望みは少ないが賭けてみることはできる。すぐさまケータイを握り、2人に送信。


詳しくは明日。と文末に書いておいた。


・・・・・・・・・・・


その日の放課後、僕らは担任、高端を呼び出していた。いや、別にトイレとかじゃないぞ。


そして一言・・・・


「軽音楽同好会を作らせてください」


そう、その案とは軽音楽同好会を設立することを懇願することだった。


これ以外に道は無い。しかし、というか、やはり、反応はきまっていた。


「?何を言っている。そんな簡単なものじゃないぞ」


やっぱりダメか・・・という2人の表情を裏に僕は希望を見出していた。


なぜかって?高端の目には全く軽蔑の目ではなく温かい目だった。


僕は2人には内緒だった書類を高端に差し出す。見てください、と


そこにはある確約が僕によって記されていた。


同好会設立から3ヶ月以内に1曲を完成させ、活動可能なことを証明する。

学校祭では率先して活動し、体育館の空き時間をもりあげることを約束する。

最終的には部に昇格できるように活動に専念する。


この三つに目を通した高端は無言で僕を凝視し、ひとこと。


「まぁダメもとで校長先生に掛け合ってやるよ」


最後にニカッと笑って見せた。とたんに2人の表情が春風に吹かれたように晴れる。



「あとは天にたくすのみ!!」


僕らは廊下のど真ん中で叫んだ。


高端はさすがに怒っていた。笑っていたけど。(後編・完)