『2番レジの山田さん』
ごく一般的なサラリーマン、佐々木。
仕事帰りにスーパーへ立ち寄るのが、彼の日課だった。
ある日、いつものように買い物をしていると、2番レジにいた女性店員――山田さんに、一目惚れしてしまった。
それからというもの、佐々木は必要もないのにスーパーへ通うようになった。
「今日は山田さんいるかな……」
そんなことを考えながら、毎日のように2番レジへ並ぶ。
――しかし、ある日の仕事帰り。
2番レジに山田さんの姿はなかった。
少し残念な気持ちになりながらスーパーを出た佐々木は、帰り道で喫煙所を探していた。
すると、スーパーの裏手から一人の女性が声をかけてきた。
「喫煙所なら、こっちですよ」
彼女の名前は、田山。
佐々木は田山に案内され、スーパー裏の喫煙所へ向かった。
そこで二人は、たわいもない話をした。
「いつもこのスーパー来てますよね」
「え? あ、まあ……仕事帰りに」
「2番レジ、よく並んでますよね」
佐々木は少し気まずそうに笑った。
「……ああ、まあ」
その日は、それだけだった。
二人は別れ、それぞれの帰路についた。
――そして翌日。
佐々木は、いつものようにスーパーへ向かった。
2番レジを見る。
「……いた」
山田さんがいた。
佐々木は迷わず2番レジへ並んだ。
そして会計を終え、帰ろうとした、そのとき。
「……あの」
山田さんが佐々木に声をかけた。
「いつも来てくれてますよね?」
「え……」
「もしかして……あたしのファンだったりします?」
佐々木の顔が一気に真っ赤になった。
「そ、そんな……」
山田さんは笑った。
「ふふっ」
佐々木は恥ずかしさに耐えられず、そのまま店を出た。
――その背中を、店内から見つめる一人の女性がいた。
田山だった。
田山は、佐々木の後ろ姿を見ながら小さく笑った。
「……やっぱりね」
佐々木はまだ知らない。
昨日、喫煙所へ案内してくれた田山。
そして今日、2番レジにいた山田。
その二人には、ある秘密があることを。
――いや。
正確には。
田山の中身は、佐々木だった。