自動車“趣味”ライター 西川 淳スペシャルコラム 第5回「クルマ好きのクルマ」 | Croooober Official Blog

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アルファロメオと日産の新型スポーツモデル、というと、ひと昔前ならば、クルマ好きがこぞって反応したネタだった。もちろん、今でもそれなりの注目は集めるし、実際、ボクのまわりには「で、どうだった?」と新型車の印象を知りたがる人は少なくない。

とはいえ、その温度というか、漠然とした広がりのようなものでいうと、以前ほどには熱くないことは確かだろうし、盛り上がりに欠けるようにも思える。フェイスブックやインスタグラムといったSNSを通じてクルマ好きだけと交流していると時代の大きな流れとは違う感覚に陥ってしまいがちだ。


結局のところ、若者のクルマ離れにしたところで、クルマへの興味そのものが薄らいだという点では、他のいろんな流行りごと、たとえばテニスやスキー、ロックやバーボン、と同じだ。その証拠に、クルマが大好きな若者を探すことは難しくない。少ないだけだ。たまさか基幹と言われるほどに産業規模が大きく影響も大であっただけに、やいのやいのと一方的に騒がれる始末になっただけなんじゃないか、とボクは思っている。産業側から興味を持ってもらう働きかけは必要だけれど、その方法がいつまでたっても20世紀的なアプローチじゃ、今の若い人には刺さるはずもない。


何が言いたいのかというと、世の、特に日本人のクルマ離れなんてものは、日本の地政にあってもはや必然的な時代の流れでしかなく、ハード=クルマの側には、皆が責めるほど落ち度はない(高い、とか、つまらない、とか)ということ(むしろ、実質賃金が上がっていない=実質的な消費が落ち込む=若い人までお金が回ってこない、という日本社会の抱える大問題のほうが、クルマ離れの主要な理由のひとつとして数えるにふさわしい)。そのことを、ここ数週間で立て続けに“素晴らしい”スポーツモデルに試乗することで再認識した。

 


まずは、アルファロメオ・ジュリアだ。ちょうど一年前にブランド105周年を記念して発表されたこの新型サルーンには、欧州Dセグメント用モデルであり、ブランド復活(ただいま年産わずかに6万台と瀕死の状態だ)の狼煙として、個人的にも大いに期待していた。そして臨んだ、一年後の国際試乗会。会場は、聖地バロッコ・プルービンググラウンド。はたしてそのパフォーマンスは、ドイツプラミアム御三家に優るとも劣らないもので、特に最上級グレードの“クワドリフォリオ”に至っては、メルセデスAMG C63SやBMW M3を、その絶対的な性能で完全に上回った。ボディの軽さと強さ、シャシーセッティングの妥協のなさ、そしてフェラーリ製のV6ツインターボエンジン(カリフォルニアT用V8ツインターボのちょうど3/4)、で、一躍クラスリーディングなパフォーマンスセダンとしてその存在感を強くアピールした。

 


もちろん、そのためにアルファロメオはこれまでのユーザーたちにそっぽを向かれても仕方の無い戦略を採るという賭けに出た。ジャーマンプレミアムに対抗するブランドとしてグローバルに展開すべく、その価格帯を“アルファロメオにしては”高く設定したのだ。つまり、ほとんどBMW3シリーズあたりと同じ価格設定である。
この戦略をして、アルファロメオらしくない、と一刀両断することは容易い。けれども、よくよく考えれば、今この段階でそっぽを向いているのはユーザーの方であり、ブランドが生き残るために大胆な戦略変更を採ったとして、誰が責められよう。むしろ、どれだけ高くなろうと、“いいクルマ”を創った方が生き残り戦略としては正しい。キャデラックやレクサス、ジャガー、ボルボといった、非ドイツのプレミアム勢と同様の“包囲網”戦略は、瀕死のブランドにとって、それ以外にない道筋だった。アルファロメオが世界の名だたるブランドと対抗しうるモデルを、今、この段階でリリースしてくれたことに対して、いちクルマ好き、いちアルファロメオ好きとして、ボクは大いに感謝したい。たとえ、それがちょっと高い価格になったとしても。だって、そうだろ?昔は“買えない高性能なクルマ”だからこそ、憧れの対象になったものじゃないか!

 


“昔憧れたおして買えなかった”、という国産車の筆頭は、スカイラインGT-Rだろう。第一世代はもちろんのこと、第二世代においても、その“憧れ”こそがクルマ好きの原点となるような存在の大きさだった。名前を単に日産GT-Rとした第三世代においては、その憧れも世界規模となり、夢のスーパーカーの仲間入りを果たしていた。そんな日産GT-RがMY17で大胆なイメージチェンジを実施。試乗したわれわれジャーナリストを大いに驚かせたのだった。

試乗会はドイツの空港からベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットまでの道のりと、雨のなかのトラックで開催された。とにかく、その絶対パフォーマンスはこれまでの年次進化をベースにさらなる飛躍を果たし、雨のサーキットでもその実力をいかんなく発揮した。そのうえで日常の乗り味を徹底的に洗練させてきた。そのライドフィールはもはやAMG やアウディRSも真っ青なレベルに至っており、名実ともに、オールマイティなスーパースポーツ、つまりは成熟の極みに達したと言っていい。

 


ジュリアもGT-Rも、クルマ好きを大いに唸らせる進化を果たしている。けれども、きっと、昔ほど大きな話題にはならない。なぜなら、それは、昔ながらの楽しさの延長でしかないからだ。
 実際に“買う”というコアなファンの数はほとんど変わらないかも知れないが、取り巻きはきっと少ない。乗る人は変わらず存在するけれども、話題にする人は以前よりダンゼン少なくなっている。

クルマというハードが問題なんじゃない。値段だっていっそ関係ない。安ければいいというもんじゃない。問題は、ボクらの知っているクルマの楽しさ、たとえば機械を操るという興奮、なんてものは、デジタルコミュニケーションの時代にもはやアウト・オブ・デイトでしかないのかもしれない、ということ(クルマのゲームは人気だ)。リアルなクルマ離れというものは、避け難い時代の流れなのだろう。われら20世紀生まれのオッサン連中がいくら頑張ったところで理解できないのも当然だと思う。

 

 

自動車“趣味”ライター 西川 淳スペシャルコラム

第5回「クルマ好きのクルマ」

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