2012年F1開幕時には心配だったとレッドブル技術責任者
レッドブルの最高技術責任者であり、空力の天才と評されるエイドリアン・ニューイが、2012年シーズン開幕時には、今季マシンのパフォーマンスについて心配をしていたことを認めている。

2012年シーズンも終わってみれば、2010年シーズン以降、圧倒的な力を見せつけきたレッドブルが、3年連続でドライバーズタイトルとチームタイトルを獲得するという結果になった。

だが、ニューイに言わせれば、2012年はそれまでの2年とは違っていたという。ニューイはイタリアの『Autosprint(オートスプリント)』誌へ次のように語っている。

「残念ながら、シーズンが始まる前から、(2012年の)クルマを理解するためには時間がかかるだろうということが分かっていた」

「われわれは心配していたよ」

「問題は、われわれが2010年に導入したブロウン・エキゾースト(※)だった。われわれは完全にそれに合わせて2011年のクルマを設計していたんだ」

「バッテリーの位置なども含め、すべてをそれに合わせていたからね」

F1の統括団体FIA(国際自動車連盟)が、ブロウン・エキゾーストを禁止したことには当然不愉快なことだっただろう、と問われたニューイは、「もちろんだよ。制約が課せられたんだからね」と答え、さらに、そうした制限によってF1がF1らしさを失い、下位カテゴリーのGP2に近いものとなってしまうという皮肉を込めて次のように続けている。

「あまりにも規則の範囲をせばめてしまえば、私に言わせればそれはもうF1ではなく、『GP1』という別のシリーズになってしまう」

FIAは2013年シーズンに向けて、ルールの抜け穴を防ごうと、さらに厳格化を進める。

「よく言われる『規則の精神』なんてものはどこにも存在しないんだよ」、とニューイはさらに続けた。

「もし、規則に記載された文言に反することなく、その規則によって制限されていることを打ち破ることができる隙間(すきま)を見つけたとしたら、われわれとしてはそれが実現可能か調べないとならない」

「それがF1というものの本質なんだ。確かに、われわれはルールの趣旨にはそぐわないかもしれないが、禁止はされていないいくつかの可能性を見つけ出した」

「それはほかの連中を怒らせてしまったが、ずっと非難され続けることになってうんざりしたよ。実際、ほかのチームやFIAは常にわれわれに目をつけていたからね」

「だが、結局彼らはわれわれが何らかのルールを破っていると証明することはできなかった」

そしてニューイは、ほかのチームが騒ぎ立てることは、単に腹立たしいだけでなく偽善的だとも思える、と次のように続けた。

「われわれがバーレーンGP(第4戦)で導入した、有名な『フロアの穴』に関してだけど、今年別のところでは、フェラーリだって同一の手法を使っていたんだからね」

(※)ブロウン・エキゾーストとは、クルマを地面へ押しつけるダウンフォースを発生させるディフューザーへ排気ガスを流すことでディフューザーの効率を高める技術。各チームとも、これをさらに進化させ、ブレーキングなどでアクセルを踏んでいないときにもディフューザーへ排気ガスを流すシステムを開発したが、先駆者であるレッドブルが最もうまくこの効果をあげていたとされている。このシステムは2012年から原則禁止となった。【関連記事】 レッドブル、2013年F1オーストリアGP復活を熱望(12.12.11) ベッテル、FIA表彰式で「素晴らしい気分」(12.12.09) ウェバー、2013年は打倒ベッテル(12.12.08) レッドブル、2013年仕様車の開発遅れは「問題ではない」(12.12.08) ベッテル「レッドブルは神話的地位を築いている最中」(12.12.07)