手塚治虫のキャリアのうち、
1968年から1973年は、
衰退期、スランプ期、暗黒期などと呼ばれている。

 

劇画の人気が高まり、
手塚治虫の丸っこい線は古いと言われ、
正統派の勧善懲悪のストーリーも
優等生過ぎると評価されていた。

 

まず少年サンデーに
1967年の8月から
1年間連載された「どろろ」は、
水木しげるの妖怪ものと
白戸三平の時代ものに
大きな影響を受けて書かれた作品だ。

 

そして「地球を呑む」「上を下へのジレッタ」
「空気の底」「I・L」「きりひと讃歌」
「時計仕掛けのりんご」
「人間昆虫記」「奇子」などの作品は、
掲載誌もそうだが、
大人がターゲットの劇画寄りの作品だ。

 

そして少年誌の連載作品も
当初は18のエピソードを
想定して始まった少年サンデーの「ダスト18」は、
不人気のため6つのエピソードで連載中止になり、
後に2つ足して「ダスト8」として刊行された。


そして少年チャンピオンの「アラバスタ―」は、
手塚治虫自身が
「暗くて救いのない作品」と回想している。

 

しかしスランプ期といっても、
仕事量は多く、手塚治虫の年譜から
その頃に書かれた作品を抜粋すると、
主なものだけでこれだけの数になる。

どろろ  1967~1968  少年サンデー
ブルンガ1世  1968~1969  冒険王
地球を呑む 1968~1969 ビッグコミック
ノーマン 1968   少年キング
上を下へのジレッタ 1968~1969  漫画サンデー
火の鳥 ヤマト編 1968~1969 COM
空気の底 1968~1970 プレイコミック
鬼丸大将 1969 少年キング
火の鳥 宇宙編 1969 COM
火の鳥 鳳凰編 1969~1970 COM
I・L 1969~1970 ビッグコミック
青いトリトン(海のトリトン) 1970~1971 サンケイ新聞
ザ・クレーター 1969~1970 少年チャンピオン
ガラスの城の記録 1970 現代コミック
アバンチュール21 1970~1971 少年少女新聞
アポロの歌 1970 少年キング
きりひと賛歌 1970~1971 ビッグコミック
やけっぱちのマリア 1970 少年チャンピオン
時計仕掛けのりんご 1970 週刊ポスト
人間昆虫記 1970~1971 プレイコミック
火の鳥 復活編 1970~1971 COM
アラバスタ― 1970~1971 少年チャンピオン
鳥人大系 1971~1975 SFマガジン
ライオンブックス 1971~1972 少年ジャンプ
火の鳥 望郷編 1971~1972 COM
ダスト18(ダスト8) 1972 少年サンデー
奇子 1972~1973 ビッグコミック
ブッダ 1972~1978 希望の友
サンダーマスク 1972~1973 少年サンデー
ミクロイドZ(ミクロイドS) 1973 少年チャンピオン
ユフラテの樹 1973~1974 高一コース

 

そして1973年の11月に
「ブラックジャック」の第一回が、
少年チャンピオンに掲載され、
手塚治虫は長い暗黒トンネルから抜けるのだ。