「サラリーマン金太郎」は、
本宮ひろ志の最大のヒット作である。
1994年にヤングジャンプで連載が開始され、
2011年現在も断続的に連載が継続中。
単行本は40巻以上、
数回のテレビドラマ化、
映画化、アニメ化、ゲーム化、パチスロ化と、
メディアをまたいでヒットしている。
物語は、暴走族出身の矢島金太郎が、
建設会社のサラリーマンになり、
権力をものともしない、
自由奔放で豪放磊落な性格で、
まわりの人間をひきつけ、
どんどん成功して出世していくという、
荒唐無稽な貴種流離譚である。
金太郎を気に入って、助力するのは、
建設会社の社長、
日本有数の大金持ちのばあさん、
右翼の大物、
日本最大のやくざ組織の組長、
銀座の高級バーのママ、
アメリカの大財閥一族、
アラブの国王など、
あり得ないような人々ばかりで、
更に金太郎は、その人脈に甘えるわけでもなく、
時にはやくざと命がけで殴り合ったりしながら、
自分の力で道を切り開いていく。
実はこのストーリーのパターンは、
デビュー作の「男一匹ガキ大将」以来、
本宮が繰り返し使用しているもので、
そういう意味では目新しいものではないのだが、
何度繰り返されても心が熱くなってしまう、
東映任侠映画に似た魅力を持っている。
本宮は「マンガを描かないマンガ家」として有名だが、
自分はプロデュースに徹して、
絵は絵のうまいアシスタントにまかせることによって、
マンガとしてのクオリティーはあがっているので、
それも成功の一因だと思う。
そしてうれしいのは、
「サラリーマン金太郎」というタイトルは、
「スポーツマン金太郎」へのオマージュであるということ。
「スポーツマン金太郎」は、寺田ヒロオ、
あの、トキワ荘のテラさんの作品なのである。