テープ起こし原稿のタイムコード挿入は、上手に使おう!
テープ起こし原稿のフォーマットで、タイムコードの挿入をお願いされる場合があります。タイムコードとは、[00:45:29- 00:46:05]のような形で記録されるスピーチの尺です。テープ起こしの素材となっているオーディオの収録時間のうち、この該当収録分数(秒数)の間に発話者Aが発言をしている、次の収録分数に発話者Bが発言をしている、といったように、タイムコードの挿入は発話者の発話時間・尺を特定するのに利用されます。また一定間隔(5分毎といったように)でタイムコードを挿入することには、完成テープ起こし原稿をプルーフリードする際にオーディオの頭出しが容易になるという利点があります。
また、映像製作会社のお客様で字幕製作をされている方からは、エクセルファイル形式で1センテンスあたりのタイムコード表記をお願いされるケースがあります。これは字幕翻訳を行う際に尺幅を見て文字数を調節したり、映像への貼り付け作業を行う際に頭出しを容易にするためです。
しかし、タイムコードの挿入はテープ起こし作業者にとって、作業効率・時間の面で大きな負担となっています。クリプトンでは、5分間隔よりも短い(=頻繁な)タイムコードの挿入が必要な場合、通常料金の+15%、1センテンスあたりの挿入が必要な場合は+30%の特別割増料金をお願いしています。これは言うまでもなく、テープ起こし作業者に単なるテープ起こし以上の負荷・タイピング量が要求されるためです。
タイムコード挿入が必要なテープ起こし作業には、以下のようなデメリットが発生します。
• 最も重要な点として、テープ起こし以外の部分に作業負荷が集中してしまい、作業者の効率を落としてしまうこと。通常の原稿フォーマットでテープ起こし原稿を作成する場合と同じ品質水準を満たすには、通常以上の作業時間を割くことになります。
• 作業効率を落とす決定的要因となるのは、タイムコードの挿入頻度。例えば、5分毎、2分毎、1分毎、センテンス単位で、といったようにお客様から指示を受けます。このほか、発話者が切り替わるごとに挿入が必要といった場合もあります。頻度が多ければ多いほど、効率を落とす要因となり、テープ起こし作業者はテープ起こし以外の部分に集中しなければならなくなります。
• 中でもセンテンス単位でのタイムコードが最も時間を食う仕事となります。テープ起こし作業者が1営業日(=8時間)に仕上げられるテープ起こし文量は50分相当とされていますが、センテンス単位でタイムコードを挿入するリクエストがあると、1日あたりのテープ起こし作業量は20分が限界となってしまいます。
■センテンス単位での挿入サンプル:
0:00:05 – 0:00:20
(センテンス1)
0:00:21 – 0:00:39
(センテンス2)
• この他、発話者の切り替わり毎のタイムコード挿入もかなり厄介です。特にディスカッションやインタビューの場合、複数の発話者が互いの発言を遮って発話することがしばしば起こり、一続きのセンテンスを終えるまでに多くの挿入文句が入る形となります。中でも複数の発話者が同時に発言をしている場合、テープ起こし作業もタイムコード挿入作業も難解になります。
• テープ起こし補助ソフトの中には、タイムスタンプの挿入を簡素化する機能が入ったものも出回っています。が、クリプトンでこれらを試行錯誤した結果言えるのは、それでもなお最低2回のキータッチが1回のタイムコード挿入に発生するということです。
以上に述べたことから言えるのは、過度に頻出するタイムコードの挿入はテープ起こしの一定の品質水準を満たす上でリスクが発生するということです。通常の書き起こしフォーマット以上の作業時間を割り当てなければ、同等の品質水準はお約束することができなくなってしまいます。
この場合、クリプトンではケースバイケースで作業日数を延長させて頂くか、またはタイムコードの出現を最小限にとどめるよう指示を調節することで品質を損ねない努力をしています。お客様にも、タイムコードの挿入は完全な人力作業でありテープ起こし作業者の相当の労力がかかるという側面を知って頂き、テープ起こしをご依頼する上で何を重視しているのか(スピード・品質・特定の用途への使いやすさなど)という基準を元に、うまく業者を使って頂きたいと思います。
■参考リンク:クリプトンのテープ起こし原稿サンプル
