テープ起こし作業者から見た、効果的なプレゼンのコツ(前編)
テープ起こし作業者は毎日、ありとあらゆるタイプのスピーチ音声を素材にテープ起こし作業をしています。企業の電話会議のように、それぞれの発言者が断片的で即席の発言を交わしているような素材もあれば、非常に専門的な内容のフォーラムやシンポジウムでの、用意周到に準備されたプレゼンテーションスピーチのような素材もあります。文章的にまとまりのないスピーチ音声からクリアなテープ起こし原稿(=聞き取り不明瞭箇所の少ない原稿)を作るのは、テープ起こしを専門とする業者でも技術的な限界があります。しかし、壇上でのプレゼンのような、秩序だったまとまりのあるスピーチ音声の場合は、テープ起こし原稿の完成品質を最大限に高めることは可能です。
テープ起こし原稿の完成品質がどうなるか、ということをはじめから念頭に置いて壇上プレゼンを行う講演者は、まずいないでしょう。会議主催側の録音担当者ですら、後日のテープ起こしを念頭に置いている方は果たしてどれくらいいるのか疑問です。しかし、この時点でテープ起こし原稿の品質を決定する要素がいくつかあります。
テープ起こし原稿の品質を決定する要素は、大きく分けて内的要素(テープ起こし業者の腕次第で克服できるもの)と外的要素(テープ起こし業者がコントロールできないもの)の2つに分けられます。このうち外的要素とは、例えば会議運営当局がスピーチの録音に適した会場を選んでいるか、当日どのようにセッティングして録音したか、または講演者が流暢な英語を使っているか、話すペースは一貫しているか、スクリーンに映し出されるスライドとスピーチ内容の連携はスムーズか、などといったものです。
今回は、テープ起こし業者では原稿の品質をコントロールできない「テープ起こし原稿の品質を左右する外的要素」に焦点を当て、どうすれは完成度の高いテープ起こし原稿を得られるか、また完成度の高いプレゼンテーションを行うことができるかを提案したいと思います。

(1)パワーポイント(壇上スライド)を適切に準備する
シンポジウムやフォーラムでは、プレゼンの要点を整理し聴衆に分かりやすく伝えるため、講演者が事前にパワーポイントを準備するのが一般的です。このパワーポイント資料を適切に準備できるかどうかが、講演者の意図をうまく伝達し聴衆に分かりやすいイメージを伝えられるかという点に大きく関わってきます。効果的なパワーポイント資料準備のためには、以下のことを念頭にとどめる必要があります。
a) スライドの枚数:講演者がスクリーン上に映すスライドの枚数・切り替え頻度は、聴衆に与えるインパクトを左右します。スライドが少なすぎると、具体的なポイントが伝わりにくく、聴衆は情報の大部分を講演者の話す内容に依存することになります。一方スライドが多すぎると、聴衆はスライドを読むことに関心が傾き、結果として講演者のスピーチへの集中が妨げられます。
b) 情報のロジックの流れ:スライド間の情報の流れは、首尾一貫してスムーズかどうかを入念に確認する必要があります。スライド間にトピックの不自然な飛躍があると、聴衆を混乱させてしまう可能性があります。
c) 文法的に正しい英語:言うまでもありませんが、スライドで使用する英文が文法的に正しいかどうか、今一度確認する必要があります。クリプトンでは、講演者が使用したパワーポイントを補助資料としてテープ起こし作業をすることがよくありますが、文法的に不適切な英文を見かけるケースがよくあります。
パワーポイント資料は、テープ起こしの素材となる音声ファイルと併せてよく参考補助資料として送られてきます。適切に作られたパワーポイント資料は講演者本人のプレゼンの完成度を高めるだけではなく、テープ起こし作業をする側にとっても大いに内容理解の助けになります。
(2)パワーポイント(壇上スライド)を適切に使用する
効果的なプレゼンを行うためには、パワーポイント資料を準備するだけでなく、実際に壇上で適切に使用する必要があります。講演者はスライドの順序が論理的に一貫しているかどうかチェックする・聴衆にとって適切なペースでスライドを進行させる以外に、スライド間を極力またぎすぎないよう配慮しなければなりません。各スライドでは必ず一度立ち止まって、スライドの内容を具体的に説明し、必要に応じて具体例なども提供し、一通り目を通し終えてから次のスライドに移るよう徹底しましょう。講演中に前後が入り乱れ、順序正しく並べられたスライドをまたいでは前のスライドに戻るといった進行をすると、聴衆が混乱する恐れがあります。同様にテープ起こし作業者にとっても、このように進行したプレゼンのテープ起こしをするのは非常に困難です。これは多くの場合、講演映像は入手困難で音声とパワーポイント資料のみを手がかりにテープ起こしをしなければならないためです。
(3)プレゼン映像を録画記録する
昨今では、重要度の高い会議・ミーティング・フォーラムでのスピーチの多くが音声録音ではなく映像として録画記録されます。音声ではなく映像として記録に残すのは、アーカイブ目的だけではなくテープ起こしの原稿の完成度を高めるためにも非常に助けになります。パネルディスカッションのように複数の発言者がスピーチを交わしている場合には、それぞれのスピーチの話者を特定するのに映像データは大変参考になります。また講演の映像には多くの場合壇上スライドも映し出され、スライドの進行を目で追いながらテープ起こしを進めることができます。そのほかにも、講演者のボディーランゲージを手がかりに音声的に不明瞭な単語を推測することが可能になります。ただしこれらは全て、録画された映像が明瞭なもので、かつ補助資料としてPDFやパワーポイントなどの情報も入手することが条件になります。
(後編に続く)

テープ起こし原稿の完成品質がどうなるか、ということをはじめから念頭に置いて壇上プレゼンを行う講演者は、まずいないでしょう。会議主催側の録音担当者ですら、後日のテープ起こしを念頭に置いている方は果たしてどれくらいいるのか疑問です。しかし、この時点でテープ起こし原稿の品質を決定する要素がいくつかあります。
テープ起こし原稿の品質を決定する要素は、大きく分けて内的要素(テープ起こし業者の腕次第で克服できるもの)と外的要素(テープ起こし業者がコントロールできないもの)の2つに分けられます。このうち外的要素とは、例えば会議運営当局がスピーチの録音に適した会場を選んでいるか、当日どのようにセッティングして録音したか、または講演者が流暢な英語を使っているか、話すペースは一貫しているか、スクリーンに映し出されるスライドとスピーチ内容の連携はスムーズか、などといったものです。
今回は、テープ起こし業者では原稿の品質をコントロールできない「テープ起こし原稿の品質を左右する外的要素」に焦点を当て、どうすれは完成度の高いテープ起こし原稿を得られるか、また完成度の高いプレゼンテーションを行うことができるかを提案したいと思います。

(1)パワーポイント(壇上スライド)を適切に準備する
シンポジウムやフォーラムでは、プレゼンの要点を整理し聴衆に分かりやすく伝えるため、講演者が事前にパワーポイントを準備するのが一般的です。このパワーポイント資料を適切に準備できるかどうかが、講演者の意図をうまく伝達し聴衆に分かりやすいイメージを伝えられるかという点に大きく関わってきます。効果的なパワーポイント資料準備のためには、以下のことを念頭にとどめる必要があります。
a) スライドの枚数:講演者がスクリーン上に映すスライドの枚数・切り替え頻度は、聴衆に与えるインパクトを左右します。スライドが少なすぎると、具体的なポイントが伝わりにくく、聴衆は情報の大部分を講演者の話す内容に依存することになります。一方スライドが多すぎると、聴衆はスライドを読むことに関心が傾き、結果として講演者のスピーチへの集中が妨げられます。
b) 情報のロジックの流れ:スライド間の情報の流れは、首尾一貫してスムーズかどうかを入念に確認する必要があります。スライド間にトピックの不自然な飛躍があると、聴衆を混乱させてしまう可能性があります。
c) 文法的に正しい英語:言うまでもありませんが、スライドで使用する英文が文法的に正しいかどうか、今一度確認する必要があります。クリプトンでは、講演者が使用したパワーポイントを補助資料としてテープ起こし作業をすることがよくありますが、文法的に不適切な英文を見かけるケースがよくあります。
パワーポイント資料は、テープ起こしの素材となる音声ファイルと併せてよく参考補助資料として送られてきます。適切に作られたパワーポイント資料は講演者本人のプレゼンの完成度を高めるだけではなく、テープ起こし作業をする側にとっても大いに内容理解の助けになります。
(2)パワーポイント(壇上スライド)を適切に使用する
効果的なプレゼンを行うためには、パワーポイント資料を準備するだけでなく、実際に壇上で適切に使用する必要があります。講演者はスライドの順序が論理的に一貫しているかどうかチェックする・聴衆にとって適切なペースでスライドを進行させる以外に、スライド間を極力またぎすぎないよう配慮しなければなりません。各スライドでは必ず一度立ち止まって、スライドの内容を具体的に説明し、必要に応じて具体例なども提供し、一通り目を通し終えてから次のスライドに移るよう徹底しましょう。講演中に前後が入り乱れ、順序正しく並べられたスライドをまたいでは前のスライドに戻るといった進行をすると、聴衆が混乱する恐れがあります。同様にテープ起こし作業者にとっても、このように進行したプレゼンのテープ起こしをするのは非常に困難です。これは多くの場合、講演映像は入手困難で音声とパワーポイント資料のみを手がかりにテープ起こしをしなければならないためです。
(3)プレゼン映像を録画記録する
昨今では、重要度の高い会議・ミーティング・フォーラムでのスピーチの多くが音声録音ではなく映像として録画記録されます。音声ではなく映像として記録に残すのは、アーカイブ目的だけではなくテープ起こしの原稿の完成度を高めるためにも非常に助けになります。パネルディスカッションのように複数の発言者がスピーチを交わしている場合には、それぞれのスピーチの話者を特定するのに映像データは大変参考になります。また講演の映像には多くの場合壇上スライドも映し出され、スライドの進行を目で追いながらテープ起こしを進めることができます。そのほかにも、講演者のボディーランゲージを手がかりに音声的に不明瞭な単語を推測することが可能になります。ただしこれらは全て、録画された映像が明瞭なもので、かつ補助資料としてPDFやパワーポイントなどの情報も入手することが条件になります。
(後編に続く)
