学術翻訳の難しさ・品質管理への取り組み
クリプトンで提供している和英・英和翻訳サービス では、よく次のような質問を頂くことがあります。
「和英翻訳をお願いしたいんだけど、英語ネイティブの人がちゃんと目を通してるの?」
「品質の違いでレベル1とレベル2の料金体系があるけど、具体的にどんな作業内容が違うの?」
「翻訳者は、私の書いた論文の専攻分野に精通しているの?」
これらの質問に共通しているのは、翻訳品質に対するお客様からの審査の目がとても厳しいということです。
クリプトンの翻訳サービスを主にご利用頂いているのは、大学や各種研究機関に勤める研究者個人の方です。ご依頼頂く文書の7~8割が和英翻訳というのも、クリプトンの特徴のひとつです。研究者自身が日本語で執筆した研究論文(またはアブストラクト)を、国際研究コミュニティで発表できるレベルのナチュラルかつ正確な英文に翻訳してほしいというお問い合わせが中心です。
大学研究者の方を相手に翻訳サービスを提供するのは、実は大変ハードルが高いことだと感じています。なぜなら、
研究者の方は、一般的に言って英語の読解・ライティング力が日本人の平均的英語レベルより高い
文書の内容が医学分野や先端技術分野など、高度に専門的な内容であることが多い
という理由があるからです。そのため翻訳を依頼される研究者の方以上の英語力(語学力・翻訳力)を持ち、かつ該当する専門分野の実務経験がありその内容に精通している翻訳者でないと、期待に見合う翻訳品質を提供できないということになります。
その意味では、ビジネス関連文書の翻訳やウェブサイト・ニュース記事の翻訳を取り扱うよりも高度な専門性と翻訳力を備えていなければならないといえます(もちろん、これらの比較的難易度の低い文書の翻訳をおろそかにしていいと主張しているわけではありませんが)。
シビアな品質要求に応えるためには、翻訳サービスを提供する側でも入念な原稿チェックプロセスを踏まなければなりません。クリプトンで導入しているのは、3段階の原稿チェックプロセスです。これは翻訳文の品質を評価する際に基準となる指標を3種類と捉え、それぞれに精通した作業者が翻訳原稿に目を通すというものです。
どんなものなのか、簡単に説明します。
■翻訳に必要な3種類のチェック
1.文章的チェック(校正)
タイプミスや誤訳などのうっかりミスがないかを発見する
事前に提供された対訳表(グロサリー)やフォーマット、スタイルガイド(数字や単位の表記方法など)にきちんと従っているかを確認する
2.言語的チェック(校閲)
翻訳文が論理的に首尾一貫したことを言っているかを確認する
翻訳文が言語的に読みやすく、理解しやすい文章になっているかを確認する
3.技術的チェック(校閲)
技術的に誤った表現をしていないか、専門用語が正しく使用されているかを確認する
これらのチェックを行うのは、翻訳者とは別の第三者でなければ意味がありません。1の文章的チェック(校正)は、もしこれらのミスが見つかった場合は明らかなエラー(品質欠陥)なので、クリプトンでは全ての翻訳案件に文章的チェックプロセスを踏んでいます。
2と3の言語的・技術的チェック(校閲)については、より翻訳文の品質を高めるために必要なプロセスといえます。また上手な文章表現ができているかどうかの判断基準となるのもこういった指標に左右されます。
校正に得意な作業者と校閲に得意な作業者それぞれに求められるスキル・知識は異なるため、これらは別の作業者が行うことになります。例えば文章的チェックはバイリンガルの作業者でなければ務まらない一方で、言語的チェックに関してはバイリンガルでなくてもよいがライティングに関してはプロで、かつ翻訳後言語のネイティブが見たほうが概して有利といえるでしょう。
翻訳を業者に依頼する際には、自分が求める品質のレベルと予算に応じて、これらのチェックがきちんとされているかどうかを注文前に確認することをお勧めします。
なおクリプトンの翻訳サービスでは、校閲作業(上に示した2と3の部分)を省くか・含めるかによってレベル1・レベル2のオプションを設けています。校正作業(1の部分)は、いずれのレベルにも含まれます。それぞれのレベルによって料金・納品スピードがことなり、また文書のタイプによってもどちらのオプションをお勧めするかは異なってきます。詳しくは翻訳サービスの料金と納期
をご覧下さい。
また、3種類のチェックプロセスでどのようなバックグラウンドの作業者がいるのかは、翻訳作業チームの紹介
から詳細を確認できます。
次回ブログはカスタマーサービスの千田がお届けします!