テープ起こしに必要なものは?その3(ソフトウェア後編)
12月から連載でお届けしてきたトピック「テープ起こしに必要なものは?」も第三回目の今日が最終回。今回は、実際にテープ起こし作業をするときに使用するソフトウェアをご紹介していきます。ここまで全記事を読んできた皆様には、きっと「テープ起こしって、こんなに奥が深いんだ!」と新しい発見になると思います。
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テープ起こしに必要なものは?その1(ハードウェア)
http://ameblo.jp/criptonjp/entry-10731962283.html
テープ起こしに必要なものは?その2(ソフトウェア前編)
http://ameblo.jp/criptonjp/entry-10745582047.html
それでは、実際にテープ起こし作業中に使用するソフトとその機能を、順番に見ていきましょう。
(1)オーディオ(ビデオ)プレーヤー
ほとんどの方がご存知のように、パソコンでテープ起こし作業を進めるにはそもそもテープ起こし素材である音声ファイルを再生できるプレーヤーソフトが必要です。とはいえ、巷で出回っている無料で入手可能なプレーヤーでは、再生可能なファイルの種類(MP3,WAV,WMAなど)が非常に限定的なものが多いのが現実です。テープ起こし作業に使用するならば、基本的な機能に加えアドバンス機能が搭載されたものを選ぶべきです。例えば・・
a) 基本的な機能:再生、一時停止、早送り、巻き戻し
b) フットペダルとの接続が可能なもの
c) ショートカットキーが有効なもの(早送り、巻き戻し、数秒ジャンプなど)
d) ブックマーク機能:聞き取りづらく、後からもう一度確認のため聞き直したい部分にフラッグをつける機能。
e) タイムスタンプ機能:テープ起こし原稿のなかの不明瞭箇所に、該当収録時間の分数を明記しておく際に、プレーヤー画面からタイムコードをコピーできる機能。
f) バックグラウンドのノイズ除去機能
クリプトンで推奨しているソフトは、Express Scribe media player
という、タイピング作業者のために開発されたプレーヤーです。
(2)Microsoft officeとマクロ機能
テープ起こし作業者は、MSワードの文書ファイルに文字をタイピングしていきます。なかでも、AutoText (定型句) フィールドとauto-correct(オートコレクト)機能をうまく使いこなすことで、タイピングスピードをぐんと速くすることができます。このほか、文法上の性別の一貫性チェックやスペルエラーチェックなど、繰り返し同じコマンドを使用するような場合は、ワードのマクロ機能が非常に有効です。
(3)辞書ソフト
辞書ツールについても、巷では無料で入手可能なありとあらゆる辞書ソフトが出回っています(代表的なものとしては、Oxford, American Heritage, Collinsなど)。最新版のこれらの辞書ソフトには、ワイルドカード機能やショートカットキーの充実などあらゆるアドバンス機能が搭載されています。
↑Oxford Dictionary画面
a) ワイルドカード機能:ある単語の一部が聞こえない場合でも、一部の聞こえた部分を手がかりに辞書検索することができます。該当する音節を含む単語の候補が一覧表示されます。
b) ショートカットキー機能:ワード上でタイピングした単語を選択し、そこからショートカットキーを利用し辞書を起動・単語検索することができます。
クリプトンで推奨しているソフトは、WordWeb Pro という辞書ソフトです。
さて、ここまでいろいろなソフトウェア・ハードウェアの種類とその機能を見てきました。テープ起こしに実際に携わったことのない方でも既にお馴染みのものから、プロのタイピストのみぞ知るようなマニアックなものまで、クリプトンの作業の秘密をちょっとだけ紹介しました。
本当は、このトピックを全てカバーしようとすると、書ききれないほどのたくさんの便利なソフトウェアやツールがあります。記事で取り上げたものの中にはマニアックなものもあると感じられたかもしれませんが、これはタイピストの世界ではとても基本的な知識・情報にすぎません。また、これだけのノウハウを集積しているからこそ、どんな専門分野のオーディオが来ても、どんなにひどいノイズのオーディオが来ても、ある一定の品質を約束した原稿をスピーディーに納品することが可能になっています。テープ起こしは作業者個人の耳の良さと、語彙力によってももちろん左右されますが、テクニックの面でもこれだけの作業効率向上の余地があることをみなさんに知ってもらいたいです。
以上、作業現場からお伝えしました。テープ起こしを作業する側でない人にも、面白いと思って頂けたら幸甚です。
次回は、先月末に開催されたクリプトンチームのドキドキ・初お泊りピクニックのレポートです!お楽しみに・・・