テープ起こしに必要なものは?その2(ソフトウェア前編)
12月10日にお届けした「テープ起こしに必要なものは?その1(ハードウェア) 」に続き、今回は続編としてソフトウェアに注目します(3編構成の2編目)。前回は特にアクセス人気が高かったですが、引き続きテープ起こしエキスパートだからこっそり教えることができる、テープ起こしの作業ツール・知識について語ります!
前回は、テープ起こしをする以前に必要となるもの(パソコン、フットペダル、スピーカーなど)を紹介しました。今回はテープ起こしの実践に必要となるソフトウェアや、作業を楽にするテクニックを紹介します。
(1)音声の録音データ(マイクとレコーダー)
テープ起こしには、なんと言ってもクリアで声が聞き取りやすい良質な録音データが必要不可欠です。それを可能にするマイク・レコーダーには投資を惜しんではいけません。マイクには、設置した周囲の全方位の音をまんべんなく拾う全指向性(無指向性ともいう、Omni-directional)型と、特定の方向からの音声を集中して拾うことができる単一指向性(uni-directional)型の2つのタイプがあります。録音後の書き起こしをする用途には、単独スピーカーが行うスピーチ・ナレーションであれば単一指向性型マイクを、複数の参加者からの発言がある円卓ディスカッションであれば全指向性型のマイクを使用するのがベストです。
(2)録音データの転送用サーバー
テープ起こし業者に作業を依頼する場合、テープ起こしの素材となる録音データを届けるためのサーバー転送が必要となります。クリプトンでは過去のブログ でも紹介しましたが、お客さまのデータ提出用として利用しているのは、ShareFile 社のHTTPサーバーです(クリプトン専用アカウントを開設しています)。もちろんクリプトンのお客様が利用する場合は、会員登録などは不要・無料でご利用いただけます。昔はクリプトンではFTPサーバーを利用していましたが、スピード・セキュリティの面でもFTPにひけをとらず、かつ操作方法が簡単でソフトウェアなどインストール不要のHTTPサーバーを採用しました。大きなファイルになると、インターネット回線のスピードとサーバーの帯域設定によって転送スピードが左右されます。
(3)音声・映像データの編集ソフト
具体的にいうと、以下の3点が挙げられます。
a. データフォーマットの変換ソフト
今日では、たくさんの音声・映像ファイルフォーマットが巷に出ています。特によく知られているのはMP3, MP4, MP2, wav, wmaなどです。もし、録音したデータのファイル形式がテープ起こし作業をするパソコン上で再生できないものだった場合、データをいったん再生可能な別のフォーマットに変換する必要があります。たとえばSwitch、Wavepad、OJO soft、GoldWaveというフォーマット変換ソフトは、あらゆるフォーマットのデジタルファイルをMP3やWAVに変換することができます。
※MP3・WAVは、最も汎用性のあるフォーマットです。
b. 音声データ抽出ソフト
テープ起こしの素材となる元データが映像でサイズが非常に大きい場合、データを軽くするために映像から音声データのみを抜き出すことができます。クリプトンでは、映像フォーマットを音声フォーマットに書き換えるOJOsoftを頻繁に使用しています。これにより、頻繁な一時停止や巻き戻しを伴う書き起こし作業でもいちいちフリーズすることなく、スムーズに作業することができます。もちろん、映像データにある情報にも目を配るため、お客様に原稿を納品する前には必ず映像のほうにも目を通します。
c. バックグラウンドノイズ除去ソフト
すでに上に述べたような音声編集ソフトには、バックグラウンドノイズを軽減する機能が含まれているのが一般的ですが、クリプトンの経験からいうと、これらの自動軽減機能を使用するよりもマニュアル作業でノイズ除去のできるソフトを使用するのが最も効果があります。クリプトンではAudacityというソフトを使用していますが、あまりにもノイズがひどい場合はこれらのソフトが必ずしも機能するわけではありません。
注意:ノイズ除去ソフトを使用すると、オリジナルの音声が一部失われる場合があります。これらを使いこなすのにも、ある一定期間の訓練が必要になります。
(豆知識)イコライザの活用
どのパソコンにも必ず搭載されているマザーボードのサウンド設定機能に、イコライザがあります(厳密にはソフトウェアではありません)。イコライザは、音量を拡張する、バックグラウンドの音声を極力最小化する、などの音声に関わるあらゆる操作を可能とする、非常に有用な機能です。イコライザの中でもBassモードを選択すると、スピーチ音量を拡張することができます。Trebleモードはバックグラウンドノイズを除去し、メインスピーカーの声をクリアにすることができます。音質を落とすことなく音声データを取り扱うことができるため、クリプトンではイコライザの活用が非常に重要な慣行のひとつとなっています。巷に出回っているパソコンにはサウンド設定機能は必ず搭載されているはずなので、テープ起こし作業をする人全員に使ってもらいたい機能といえるでしょう。
↑Equilizerの画面。マザーボードのメーカーによってインターフェースは異なります。
スピーカーアンプ(前編でも触れました)とサウンド設定機能を併せて使いこなすことで、ヘッドホンにくる音質を最大限向上させることができます。
今回のシリーズは前編・後編の2本立てで完結する予定でしたが、実は本記事を執筆しているテープ起こし作業者が「ソフトウェアについて書くことが多すぎて、2回分にまとめられない!」といってきました。そこで、第3回目(1月末の更新となります)に続きます!!
三部作の最終編では、書き起こし作業をしていて必要な調べ物をするための辞書ツールや、各種再生ソフト、その他のテクニックを教えます。
来週のブログは、マーケティングの安田がインド・デリーにて参加したITA conference (インド翻訳連盟のアニュアルカンファレンス)報告をお届けします。今年最後の記事となります。よろしく!