わたしのテープ起こし原稿に[Unclear]がたくさんつく理由
今回のトピックは、テープ起こしのシニアエディターから皆様にお届けします。
クリプトンでも時たま、お客様からクレームを受けることはあります。
その内容の中でも特に、テープ起こしの作業者泣かせ、お客様泣かせ(泣)になってしまうのが、[Unclear] 記号の頻発です。
もちろん、これを最小限にすることがテープ起こしのエキスパートでもある私たちの課題でもあり、日々その努力を怠ることはありません。
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一般的に言って私たちがテープ起こしの依頼をいただく場合、つねにできうる限りの最高品質レベル=つまり100%の正確さ で原稿を仕上げお届けすることをお約束しています。しかしお届けする原稿には、聞き取り困難や単語を確認することのできなかった部分が多かれ少なかれ含まれてしまうのが現実です。
クリプトンをご利用されたことのあるお客様はすでにご存知かと思いますが、弊社の英語テープ起こし原稿には[Unclear]という記号を独自に使用しています。
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[Unclear]とは・・・ 作業者が聞き取ることができない単語やフレーズ
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※テープ起こしに使用する記号の詳細は、サンプル原稿のページ を参照
今回は[Unclear]=聞き取り困難な部分が生じてしまう現状に焦点を当て、なぜ作業者が確かな単語・フレーズを書き埋めることができないのか、またどうすればこれを最小限にすることができるのかをお話します。
なぜ、作業者は[Unclear]の使用を避けられないのか?
1. テープ起こしの素材である音声の録音音質が悪い
アマチュア使用の録音機材を使用した録音や、スピーカーからあまりにも離れた場所からの録音、混雑した場所での録音や乗り物移動中の録音、声の反響の大きいホールでの録音・・・・・これらは全て、音質の悪い録音データに仕上がります。テープ起こし素材となるこのような録音データ自体の音質が悪い場合は、当然テープ起こしの仕上がり品質に影響を及ぼします。もちろん、雑音で聞こえなかった部分は前後の文脈関係やお客様からいただいた関連資料を手がかりに推測して埋めることもできます。が、よほど確信がもてない限り、誤った単語やフレーズを当てはめるよりも[Unclear]の記号を埋めることで、お客様に箇所が分かるようにハイライトすることで対処することが多いのです。
【解決策】
プロ使用の録音環境で録音された音声をテープ起こし素材とするのがベストです。マイクを正しい場所に配置する、混雑した場所や乗り物移動中での収録を控える、また壁に防音処置を施している録音向きのホールなどで録音するなど、収録する段階からテープ起こしを考慮した録音環境づくりが仕上がり原稿の品質を左右します。このような配慮により、テープ起こしの作業者にとってもスピーチを的確に・スピーディーに・[Unclear]記号を使用することなく原稿を作成することが可能になります。
2. テープ起こしの音声以外に作業の手助けとなる参考資料・情報が少ない(Or全くない)
クリプトンのテープ起こし作業者は、これまで蓄積した作業経験から、全般的にあらゆる分野での知識が豊富です。が、全ての分野においてエキスパートであるわけではありません。基本的に弊社では、テープ起こしの分野やサブジェクトによって作業をお断りすることはないため、非常に高度な専門内容のテープ起こしのお仕事(天体物理学や新薬の試験に関するもの、などなど)をうけることも時々あります。これらの専門分野には多くの場合、その分野でのみ使用される単語・フレーズがあるのが特徴です。もしこういったケースでお客さまからいただける参考資料や語彙一覧表などのソースが少ないと、テープ起こし作業者は話されている単語の存在を確かめるためにGoogleなどの検索エンジンを使い、正しい表記や単語の意味をひとつひとつ調べなければならなくなります。これにも確実に書き起こせる単語数には限界があり、結果として不明箇所は[Unclear]を埋めることになってしまいます。
【解決策】
お客様からテープ起こしの依頼を受ける際、クリプトンでは常にできる限りの参考資料の提供をお願いしています。資料はワードファイル、PDF、プレゼンテーションものなら講演者の使用したパワーポイント、関連するウェブサイトのURLなど、形式は問いません。テープ起こし作業者は頂いた資料に必ず目を通しながら作業を進めるため、いただける資料が参考になればなるほど、原稿上の「Unclear]は最小限にすることができます。
3. 書き起こす英語スピーチの固有アクセントが強い
前回のブログ
でも触れましたが、クリプトンはインドにあるオフィスでインド人が主に作業に当たっていますがお取引先の94%が日本からのお客さんなので、特に日本人なまりの英語の書き起こしにはかなりの自信があります。これは、オフィス内での日本人スタッフとの日々のやり取りや、入社時にテープ起こし作業者全員が受ける集中アクセントトレーニングの成果でもあります。しかし時には、日本人以外の非ネイティブ(東南アジアやヨーロッパ圏など)による非常になまりの強い英語スピーチを書きおこさなければならない時もあります。非ネイティブによる英語スピーチは強いなまりが障害となるだけでなく、英語センテンスの構造が支離滅裂な場合もあり、テープ起こし作業者にとっては悪夢のような作業となります。このような状況下では、あてずっぽうで不確かな解釈をし単語を当てはめるよりも、[Unclear]でハイライトすることを選びます。
【解決策】
正直に言って、これには残念ながら解決策はありません。理想を言えば、可能な範囲でなまりの強い(または英語スピーチ力が弱い)スピーカーには通訳を利用してもらうことがベストでしょう。ですが一般的にはやはりこれも難しいため、私たちとしてはとにかくあらゆる国籍話者、特に東南アジア系の英語アクセントに慣れ、訓練を積むことが必要と感じています。
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以上、[Unclear]=聞き取り困難な部分が出てきてしまう要因とその対処法を見てきましたが、参考になったでしょうか?
クリプトンの作業者がスキルを上げ、日々向上を心がけるのは言うまでもなく、また同時にお客様からのご協力がいかに品質のよいテープ起こし原稿を作るのに重要か、という点をメッセージとして伝えたいと思います。
このトピックに関して、ご質問やご感想などがあればどしどしコメントをお寄せください!お待ちしています。
次回は、クリプトンによる「会議スポンサーシップ 」の内容について語ります。引き続きお見逃しなく!