帰省した。高速料金が安いらしいが、贅沢にも田舎に帰ってからレンタカーを借りた。それくらいの贅沢はいいだろう。
運転も転職してから覚えた。中古だが車も買った。ボーナス一括払い。前の職場のときはボーナスが不安定で恐くて買えなかった。考え方には個人差があるからなんとも決め付けられないが、35才もすぎて額面50万前後では将来が不安だった。精々自由に使えるのが30万程度であれば、何かあったときのために貯金に回しておいたほうが無難のように思った。
実際、その後にその何かが起きてしまった。しかし、多少なりとも貯金があったために他の連中とは違う選択肢を選べたのだと思う。
目先の得より、もう少し先の得を取ろうと思った。選択するときは勇気が要った。途中ではその選択を悔やんだこともあった。

いつの間にか5年の歳月が流れた。たった5年に過ぎなかったが、この間に色々な出来事があり、色々な変化があった。内面的な変化は感じないが、外形的な変化は意外とある。

多寡だか三流大出が望み得る暮らしは知れていることは、前の職場で身に沁みて分かった。本当に馬鹿馬鹿しい差別を受けた。

最低限の生活と尊厳が守られるならば差別されても甘んじて受けることが可能だったかもしれないが、ある日許せない一線を向こう側が超えてきた。だから辞めた。あまりの理不尽さに耐え兼ねた。

今思えば潮時だったのかもしれない。ずっと限界で踏み止どまってきたが、これ以上は無理だったのだ。仮に踏み止どまってたとしても、いずれリストラ対象者になっていたのだ。
幸いなことにこちらも、いずれそのようなことがあるかもしれないと予想もしていたから、そのつもりでコツコツ脱出用の穴を掘っていた。
社内で通用しなくとも、外では通用する実力を身に付けることを、意識的に普段の仕事の中でやっていた。無駄な苦労になってもいいつもりで、要求された以上のことを考えてやっていた。

そして、あいつらが無駄だと思ってた知識や経験が、こっちの会社では大いに役に立っている。この御時世で、向こうはジリ貧になる一方。

この5年間、進歩の歩みは遅いけれど、チャクチャクとまた新たな経験を積んでいる。
頭の悪い俺みたいな人間にできるのは、亀みたいに着実に進むことくらいしかない。