「上司の意図を達成することには、積極果敢であった私としても

凡将であるという非難は甘受するが

 

 

上司の指示に対し、これを背いたといわれることは

私の信条を損なうものであり

 

 

また当時豪(ごう)も我を通す考えがなかったことを

重ねて明言する」

牟田口廉也  『インパール回顧録』

 

 

 

 

 

光文社新書<br> 牟田口廉也とインパール作戦―日本陸軍「無責任の総和」を問う

 

 

 

 

まえがき

 

 

序章  陸軍のメカニズム

 

 

「任務重視型軍隊」と「環境重視型軍隊」

巨大な組織の宿痾

 

 

戦争の六つの機能

指揮官に求められるもの

理不尽な環境下でも作戦遂行

 

 

第一章  牟田口廉也の実人物像

 

 

第一節  生い立ち

 

 

少年時代

佐賀中学校

 

 

熊本陸軍幼年学校と陸軍中央幼年学校

陸軍士官学校

陸軍大学校

 

 

第二節  陸軍でのキャリア

 

 

尉官時代

佐官時代

 

 

中佐時代

牟田口の資質と適正

 

 

派閥間対立に巻き込まれ

中国赴任

 

 

盧溝橋事件

牟田口と河邊の関係性

 

 

陸軍少将・予科士官学校長時代

開戦からビルマ攻略まで

 

 

左肩の負傷

理想の補佐道

 

 

インパール作戦以降

終戦後の牟田口

 

 

第二章  インパール作戦許可までの経緯

 

 

第一節  情勢の変化に翻弄された作戦

 

 

誰がための戦い

作戦の重要性

 

 

二十一号作戦

残り火

 

 

「屋上屋」

組織の新編

 

 

新たな戦略環境

変わらぬ必要性と変わる必要性

 

 

第二節  阻害要因の克服

 

 

司令部の大刷新

コンセンサスの欠如

 

 

稲田副長はどうすべきだったのか

司令部間における意思疎通の停滞

 

 

参謀たちの回想

天皇の懸念

無関心というコンセンサス

 

 

第三節  それぞれの思いをのせた作戦

 

 

過去を振り返る人、未来を望む人

強固な信頼関係

 

 

ラングーン兵棋演習と慎重論

牟田口司令官の熱意

 

 

同床異夢

メイミョーの兵団会同

 

 

ビルマ方面軍の企図

メイミョーの兵棋演習

 

 

南方軍総司令官の決心

大本営の許可

 

 

 

第三章  再評価

 

 

第一節  インパール作戦

 

 

作戦の意義

「想定外」への対応

 

 

楽観的な見通し

日本軍の主力部隊の戦闘力

 

 

日本軍の主力部隊の作戦支援

三人の師団長

 

 

日本軍の戦術の特色

無謀な作戦

 

 

見擦れられた現場

作戦中止の実相

 

 

ボースの悲願

その後のこと

 

 

第二節  牟田口廉也

 

 

指揮官として統率

参謀長、師団長更迭の背景

 

 

師団長の撤退行動批判

三つの錯誤

 

 

「無天組」への信頼

個人としての資質

 

 

任務重視型軍隊の具現者の限界

海外の牟田口評

 

 

軍人としての責任

牟田口の死

 

 

牟田口の最終評価

無責任の総和

 

 

 

あとがき

 

 

主要参考文献

 

 

 

 

 

けっこう面白かった。

日本人の多くが、いや歴史に興味のある人ならば

 

 

だれしも、なぜこのような無謀な作戦計画ができたのか

この疑念を抱かない人はいないだろう。

 

 

この疑問に対して、非常に示唆に富む本だった。

真面目に「鵯越の逆落とし」を考えていたのだから

 

 

歴史を知らぬものの恐ろしさ、無知蒙昧

これを戦術に組み込むとは、狂気の沙汰じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

こうした奇策は、もし仮にあったとしても

戦術の天才とも言われるような人しか成し得ない。

 

 

歴史にごく稀に登場する、その種類に属する人たちは

最初の作戦計画に組み込むことなどしない。

 

 

それを凡人たちが入れること自体に無理があり

この作戦計画は狂っていた。

 

 

地形もそうなのだが、規模が全く異なる。

こういう愚行は、おそらくまたどこかでなされるのだろう。

 

 

日本は、もう二度とやってほしくないが

この数十年の経済政策を見ると

 

 

繰り返してこそ、偉大な愚行になっていて

やりかねないかもしれない。

 

 

 

インパール作戦を、牟田口一人の責任にしてはいけない。

関わったすべての人間の無責任さを合計して、はじめてインパール作戦となる。