数年前に買って、非常に気に入っていた、

海外旅行用のトランクは、今はもう亡くなってしまった。


理由は、オフクロが韓国旅行に行くから、

かしてくれと頼まれて、軽い気持ちでかしたからだ。


結果は最悪で、鍵をなくしたとかで、

オレの大切なトランクは、ぶち壊されてしまった。


色といい、デザインといい、サイズといい、

そして値段も格安で、オレは非常にヤツを愛していた。


しかし、彼はもうどこにもいない。


だからといって、もう明後日に出発するので、

新たな恋人を探さねばならない。


それで、彼の影を探している。

一番は、サイズ、カラー、そして値段。


数週間前から、ちょろちょろ探してはいたが、

どいつもこいつも、彼には及ばない。


買い物は、常に即断できるのだが、

オレの中で、ヤツの影を追っているので、

今回は、なかなか買えなかった。


仕方がないので、近くのららぽーとという、

ショッピングセンターに出かけて、探した。



大店法の改正により、こうした大型のショッピングセンターが

今、日本のいたるところに乱立しているのだが、

実は、海外の物まねである。


毎年、訪れるタイは、通貨危機のあと、

タクシンの経済政策により、タクシノミクスと欧米のメディアから、

絶賛される経済成長をしている。


タクシンの動向は、たまに、ニュースの片隅に出ている。

タクシンは、タイに戻ったようだが、

彼は、政治的野心をいまだ捨てていないようである。


おそらくは、タイ国民から愛されている現国王、

その存在が、彼を動かせないでいる。


彼としては、時間待ちといった感じだろう。

官・政・財界も、おそらくそれを待っている。


崩御という事態になれば、相当な波乱の幕開けである。



ズレた、話を戻そう。


ダイヤモンドシティやららぽーと、といった、

迷うほどの大型のショッピングセンターは、

タイでは、かなり昔から、存在した。


おそらく政治的には、大店法の規制がなかったためと、

一部の富裕層が権力構造と一体化しているためである。


多くのタイの国民は、極めて貧しい。

こうしたショッピングセンター内での労働賃金も

きわめて低い。


そういった点では、資本主義が徹底した形で存在する。

問題点は、たくさんあるが、

おおらかな国民性が、それを許しているのと、

国王という存在が、その緩衝材になっている。



このタイプの施設と、零細な小規模の店舗も、

きちんとタイでは同居している。


カナリ、ダーティな商売もあるが、それに対しても、

カナリおおらかに経営されている。


夜になれば、こうした超大型の店舗も、

軒先を貸してやり、個人も商売している。



ららぽーと甲子園を初めて見たが、

なんら海外のそれと変わることがなかった。


本当に猿真似といっていいだろう。

規制緩和の嵐の中で、日本にも同様な形態を許し、

日本各地で乱立させたが、大きな問題点がある。


こうした超大型のショッピングセンターは、

集客力は高いのだが、その中に入っている店舗の

利益率はカナリ悪いのだろうということである。


全ての店舗が、そうだというわけではない。


ネームバリューがあり、ブランド力で引き付ける力があり

キャッシュリッチな企業には、その店舗と借りるメリットがある。


つまり、相乗効果が見込めるからである。

だから、例外なくスタバなどのブランド力を持つ、

企業はそこに出店する。



それ以外、体力とブランド力がない場合、

悲しいかな、ものすごく利益率は悪いと推測する。


理由としては、二つある。


まず、第一に日本人自体の所得が大幅に減ったことである。

これにより、国内の景気の消費力は、激減している。


内需型の企業は、その収益ががた落ちしているところに

よく表れている、それは株式市場が既に判断をしている。



だから、ららぽーと、のような超大型の

ショッピングセンターにおいて、

バンバンお金を使うかといえば、

店舗が多すぎて、あちらこちらと、その商品を見比べ、

値踏みしたり、品定めしたり、と消費者は、ごく簡単にでき、

なかなか購入することはない。


そして、その消費者は、あまり購買力がない。

購買意欲はあっても、それに見合うだけの財布を

もっていないのである。


だから、競合店舗同士が値下げをしたり、

などの食い合いをして利益率が上がらない。



タイにおいてもそうなのであり、

ショッピングセンター内において、

空き店舗は、カナリ目立っている。


地代家賃と人件費、光熱費などの固定費が、

あまりに高くつきすぎて、経営は困難きわまるのだろう。


タイのショッピングセンター内は、少し、

いや、実際の物価と比べてべらぼうに高い。


しかし、これは海外旅行客をメインにしていたり、

富裕層をメインにしているので、

ある程度、カバーがきいているのである。


それに比べ、国内の同型のショッピングセンターは、

そうした外的要因を考慮に入れることを許されない。


ららぽーと甲子園、という場所は、甲子園という

集客力のある場所に位置するが、

甲子園球場の客層とカナリ、ズレがある。


甲子園という場所柄、富裕層は多いが、

その富裕層は、もっと大きなブランド力がある、

商品を求める傾向にある。



このセンター内に店舗を持って利益を上げるには、

店舗使用料、その他の固定費負担をものともせず、

また、センター内で、顧客を引き付けるだけの

ブランド力がいる。



だから、ほとんどの店舗は、厳しい経営状況に

置かれていると推測できる。


いや、もっと大きく言えば、日本中に展開されている、

このような超大型のショッピングセンター内の、

ほとんどの店舗が、カナリ厳しい経営状態にあるだろう。



こうしたショッピングセンンターの構想が確立し、

実現し、成功を収めたのは、おそらくアメリカにおいてである。


もっと考察するには、アメリカにおける郊外、

という原点に戻らないといけないと思われる。