今月の終わりにやっと、長い休みをとれるので

もっていく本を、取捨選択中である。


哲学はこれぐらいにしとくか、

数学はいつもたくさん持っていっても、

たいして頑張れないし、2~3冊にしとくか、

とか頭を悩ましている最中だ。


硬い本ばかりじゃ、つまんないので、

楽しめる本もたくさん持っていかないといけない。


しかし、スーツケースには限度があるし、

帰りには、子どもたちの土産で、

スペースの半分は埋まってしまう。


だから持っていける本には限度があって、

いつも長期といっても10日ほどだが、有意義に過ごすためには

この持っていく本の峻別が、きわめて重要なのである。


あれはいる、これもいる、と選んでいると

4分の1という容量を軽くオーバーしてしまう。


その取捨選択の最中、岡先生の本がまた出てきた。

当然、ペラペラとめくってしまう。


はぁー、ほんとこの人は、スゲーやと感嘆して、

肌があわ立つ。


先のほうまでいくというのか、

悟りの境地というのか、

人はここまでいくことができるのかと

驚くほかない。


自分には絶対無理だと思うけれど、

せめて先生の本当の凄さが、実感として

分かるところまで行ってみたいというのが

一番の願望ではないかと思う。


忘れないように、先生のすごいエピソードを書いておこう。


先生が、将棋を見に行かれたときのことである。


そのとき中原誠名人と誰かの対局で、

岡先生が見ておられる間、中原さんは自分の番だが、

指さなかった。


手に持っている扇子を三度、鳴らしただけだった。

対局が終わった後、先生はこう聞いた。


「どうしてあの時、同じ手を三度読んだのですか?」


中原さんは、本当に同じ手を三度読んでいたので、

びっくりされたという。



おそらく、ふと見えてしまうという感覚のような気がする。

剣の達人にも、こうしたエピソードがよくあり、

ずいぶん先のほうにいった人のみ得られる

悟性といった類のものだと思われる。


これは、昨今、Tvを賑わしているインチキ詐欺師とは

別世界の話である。

Tvなんて、マッタクつけないのに失礼だが、

Tvを見る人から聞いたものから憶測した。



また、先生は面白い話をなさっていて、

先生によれば、日本人はおよそ三十万年くらいに前に

他の星からやって来た人たちであり、

地球上を何度も回って日本列島に到着したのが

一万二千年くらい前のことだろうとおっしゃっている。


何をバカなことをと一笑に付されそうな話だが、

先生が語ったのであるから、ヘーそうなんかな・・・

と思わされるから不思議である。



私にはたくさんの先生がいるが、

藤原正彦先生を自分の師の一人と勝手に思っている。


藤原先生には、間違いなく、この岡先生の思想が

色濃く入っている。



最後に、岡潔という偉人の政治的発言を紹介して終わる。


かつては、自民党と社会党の二大勢力があったが

その間の政党を作ることを提案しておられた。

その理由は、このようなものだった。



「日本から労働者階級を無くすること、

すなわち国民の一人一人が皆生きがいを感じて

生きることのできる国にすること」




しかし、この崇高な理想を

市場原理主義はガタガタにしたと思う。


ぱくった本は、

「日本という水槽の水の入れ替え方」

(岡潔・成甲書房)


痺れるお話がたくさん詰まっているが、

仏教用語が満載で、カナリ難解な本なので、

現代人にはたいへん読みにくいかもしれない。