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ここで描かれるのは、くるおしいほどにせつない青春だ。
1stアルバムは、「初音ミク」というボーカロイドを起用したもので、曲は良いなと思ったが、
全体的に無機質な印象を受けたままだった。
今作はnagiという女性ボーカリストによって全曲歌われていることから、
「曲の良さ」というものが、歌手によってこうも格段に変わるのかということが、
如実に分かって非常に驚いた。
ブックレットを見ると、曲ごとに様々なイラストがあり、
詩とともに、それぞれ思春期独特の世界観を彩っている。
それにグッと来るということは、青春への憧れなんだろうなぁ・・・。
特に「君の知らない物語」「さよならメモリーズ」での高揚感はハンパない。
青春の歌が、格段めずらしいわけではない。
世の中には青春をテーマにした曲に溢れているし、ラブソングは90%を占めている。
だがここまでストレートに、私小説的に表現した曲を、少なくとも私は知らない。
このアルバムで描かれる青春を、実際に体験した人は少数だろう。
少なくとも、私はこんな経験は一切ない。
あったはずもなく、あるかもしれなかった青春の憧憬がここにある。
その吸引力はすさまじい。
─僕は考えた。ひとの生は、なしとげたこと、これからなしとげられるであろうことだけではなく、
決してなしとげられなかったが、しかしなしとげられる《かもしれなかった》ことにも満たされている。
生きるとは、なしとげられるはずのことの一部をなしとげたことに変え、
残りをすべてなしとげられる《かもしれなかった》ことに押し込める、
そんな作業の連続だ─(村上春樹「プールサイド」より)
所謂「35歳問題」が頭に浮かんだのは私だけなんだろうか。
だが、この、なしとげられる《かもしれなかった》思いに、心の片隅に、
Supercellの音楽は訴えてくる。
イチローや石川遼といったスターに憧れを抱くのとは、また違うものだ。
生身の人間に、自分の願望を投影するのではない。
かなえられるかもしれなかった”その場所”に人々を連れて行く。
その意味ではアニメ的、あるいはライトノベル的であると言われるだろうが、
「それがどうした!?」と言っておこう。
じゃあ文学は・・?映画は・・?音楽は・・?アイドルは・・?すべて虚構だろう。
どれも、人々の憧れと願望によって、はじめて成り立つものだ
その虚構によって現実を照らし出していく。感知・喚起という意味では、出発点は同じだ。
すべての娯楽に大差はない。
娯楽のすべては、現実逃避のためのものだろう。
そもそも現実に100%満足しているという人がいるのか?
まあそんな人は、こんなblogなんてまず見ないだろうけど(笑)