- チョン・キョンファ, エルガー, ショルティ(サー・ゲオルク), ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団, ベルク, シカゴ交響楽団
- エルガー:VN協奏曲
今日はエルガーのヴァイオリン協奏曲。これは長い間LPにこだわり、
遅まきながらCDを聴くようになってから、いわゆる「はまってしまった」
曲の代表のひとつであった。
最初入手したNAXOS盤では、さほどどう言うこともなかったのだが、
チョン・キョンファ/ショルティとロンドン・フィルの盤で、この曲の虜に
なってしまう。
それからはエルガー自身の指揮によるメニューイン盤やハイフエッツ、
イダ・ヘンデル、最近ではハーンとC・デイヴィスへと、自分ながら大変
な熱の入れようになってしまうのだ。
で、今日は久しぶりにこの曲の私にとっては原点とも言えるチョン・
キョンファ/ショルティのCDで懐かしく聴いた次第。
オケの音が聴き慣れたよりは幾分明るい感じで、情報量が多いことに
気がつく。最初はスピーカー・ケーブルのためと思っていたが、第2楽
章の最初の音を聴いた途端、「そうだ、この曲にはまった頃は専らKEF
のスピーカーだった。」
何度も聴いていたからこそ、こんなに久しぶりなのに、音の違いがよく
分かるというものだ。
オーディオに夢中になっていた頃がこうだったか。
いや~、曲自体のことよりも、なんか妙に懐かしいな~。
60も半ばを過ぎてからか・・・歳を取ると年の経過の感覚がぼやけて
くる・・・初めて聴く曲にのめり込んで行ったことへの不思議な想いが
懐かしいのか。
実はこの曲については以前ハーン/デイヴィスの名演に惹かれてエント
リーしているので、それを読み返してみると、なんとこの曲にはまって
行った経緯も、ほぼ同じ内容で書いてしまっていた。
とりあえず、今日の演奏で感じた点を少しだけ書いておこう。
第1楽章で、ヴァイオリン・ソロが冒頭の主題を出した直後、非常にか
弱い音の表情にハッとなる。切ないほど。
チョン・キョンファはもっと鋭い音だと思っていたが、こんなにも繊細だっ
たか。
提示部を通して、概してそんな感じに聞こえた。
展開部に入って間もなく、ソロは休んでオーケストラだけが盛り上がる
が、ショルティがアッチェルランドして熱狂的なところ、ブラスの吼える
音が鋭く聞こえるのは、やはり装置の違いか。
第2楽章 この楽章に込められた、しっとりした品位ある情感がすば
らしい。
第3楽章 充分燃焼した後につづく独特のカデンツァはやはり長い。
いつ終わるのか、果てが見えない位に長いだけに、第1楽章冒頭の
旋律が回想された時の感慨は名状し難い。
それからは一気に、長い間休んでいたエネルギーが爆発的に放散
する。
この協奏曲は決して華やかとは言えないが、それにふさわしい、威厳
と尊厳を内に秘めた終わり方だと思う。