ベートーヴェンのピアノ演奏に対して、シュナーベルには格別熱い想い
入れを抱いている私。 その気持ちを込めて、これまでに「熱情」「ワルト
シュタイン」そして「ハンマークラヴィーア」を記事にしてきました。
ソナタ全集を買ってはあるものの、聴くのはつい名前の付いた有名な
曲になってしまいがちなもの。
それで、23番「熱情」から29番「ハンマークラヴィーア」の間の曲は
どんなものだろう?
そう思って、今日は24番のソナタから聴くことにした。
第24番 嬰ヘ長調 Op.78 2楽章のソナタ。
第1楽章 ゆっくりとした趣きのある出だし。アダージォ・カンタービレと
書かれている。 短くはあるが、なかなかいいですよ。
それに続いてのアレグロの主題はやさしくて愛らしいもの。
久しぶりに旋律を数字で表してみると・・・
4分の4拍子として 34 ] 5171 ] 4-・2 ] 3651 ] 765- ]
※最初のミは付点音符で、次のファは16分音符
※ 2小節目のシが最も低く、4小節目のドが最も高い音
この旋律が何度も変化しながら現れて目立っている。
第2楽章はやや突飛な出だしに感じられるアレグロ・ビヴァーチェ。
あっという間に終わってしまう。
第25番 ト長調 Op.79
速いテンポの楽章に挟まれた第2楽章が印象的。
アンダンテで多分8分の6拍子だろうと思うけれども、
4分の3拍子として表すと、
1-2 ] 3-3 ] 3-1 ] 6-’1 ] 7-・ ] 6-・ ]
1-2 ] 3-3 ] 3-1 ] 247 ] 1-・ ]
このように叙情的で美しい旋律です。
第1楽章は 131 ] 5- と、たくましく跳ねるような動機が面白く、
第3楽章は非常にかわいらしい旋律で始まる戯れ感に満ちた、たった
1分35秒の短さでした。
さて、次の第26番で、あ、そうか。26番は「告別」だったのだ、と気が
付く。 これまでケンプの演奏(LP盤)で聴いてはきている。
で、シュナーベルはどうだろうか?
第1楽章 冒頭のアダージォはゆっくりと情感豊かに始まる。
それが主題に入るとかなりテンポは速い。 緩急の差が明確なのだ。
第2楽章は非常な弱奏に終始する。 極めてゆっくりと、各パッセージに
想いを込めるように しんみりと弾いていく。 最後はもうピアニッシモで、
これ以上ないようなか細くて、悲哀の情感をにじませると、突如第3楽章の
強奏に突入する。
もう、これからのテンポは速い、速い。 シュナーベルのまるで自由奔放の
ように聞こえる趣きがなんともすばらしい。
いつものように、軽やかな歌に溢れ、左手の伴奏は柔らかい唸りの響きが
ふんわか全体を包んでいるのです。