ショパンのワルツ集13曲をゲザ・アンダの演奏で聴く。
ワルツの全曲はツィマーマン演奏のLPが出たのを聴いたのが
最初だったけれども(25年以上も前だろう)、後に買ったコルトーの
SP復刻盤(LP)の方を好んで聴いていた。
それに関して、一寸思い当たることがあるのだが、実は先日
Daisyさんのブログを読んで思い出したことがあった。
それはSP時代にパデレフスキーの演奏で「華麗なる大円舞曲」に
馴染んでいたことで、その印象がツィマーマンよりはコルトーに近
かったように思うのである。
今回ゲザ・アンダのCDをかけて、先ず第1曲のテンポのあまりの
ゆっくりしているのに驚いた。コルトーは咳き込んだように早かった
のだが、それとは全く違う。 おっとりとした感じで、一音一音を味わ
うように弾いている。 これが「Grande Valse brillante」、つまり
「華麗な大円舞曲」であった。
このテンポの違いは、この一曲でけでなくて、後 ず~っとそうで
あった。
2番目の「華麗な円舞曲」でも聴き慣れた軽やかさではなくて、
むしろ重厚感がある(特に前半部分)。
Op.34 No.2は全曲中最も暗いイメージで始まるが、その情緒の深み
を探るかのように じっくりかみしめている。
テンポが遅いからか、この曲ってこんなに長かったのかなー。
「子犬のワルツ」も若干遅いか?、右手の細かい動きも粒立ちよく
明瞭に聞き分けられる。
Op.64 No.2は最も愛する曲。むしろ淡々とした演奏だが、その中に
美しい詩情がある名曲。
次のNo.3は濃厚な味がした。
さて、ゲザ・アンダを聴いてみて、ここから後が最も感銘深く思え
るのであった。
Op.69 No.1の「別れのワルツ」。 メロディの節まわしに細やかな
感情移入が感じられ、うら寂しいというか、いとおしい、というか。
非常に美しい詩情がにじんでいる。
続くNo.2も同様で、内なる詩情がこみあがる。
最後にOp.70の3曲だが、最初の2曲が美しく、No.3は印象に残ら
なかった。それでちょっと面白いことに気が付く。
テンポの遅い点を、本当にそうか調べてみようと、コルトーの盤を
取り出して各曲のタイムを比べてみた。
すると、やはりその差は歴然としていたのだが、最後の曲Op.70 No.3
だけが逆で、コルトーの方が7秒遅いのであった。
なお、これにはコルトーやツィマーマンには入っている「ホ短調 遺作」
は含まれていない。