退院してからしばらくは、大きな変化もなく過ごしていました。

 

大学病院で心臓の診察を受けながら経過観察。

便に血が混じることもあり、その検査も予定していました。

 

家族の中には、まだ不安はありました。

 

でも一方で、

「ここまで回復したんだから大丈夫かもしれない」

そんな気持ちもありました。

 

ところが、その安心は長く続きませんでした。

 

 

4月。入院。

母の間質性肺炎が悪化しました。

血痰も出るようになりました。

 

母は以前から

「延命はしたくない」

と言っていました。

 

そのため予定していた大腸の検査も延期になりました。

病院へお見舞いに行った時、私は驚きました。

 

母はエクモを使用していました。

 

テレビやニュースで見たことはあっても、実際に家族が使うことになるとは思っていませんでした。

それだけ状態が悪かったのです。

 

それなのに母は不思議でした。

 

本人にはほとんど自覚症状がありません。

苦しそうに見えるわけでもない。

会話もできる。

 

こちらが心配しているほど、本人は深刻に考えていないように見えました。

 

医師からは説明がありました。

まずステロイド治療を行う。

ただし効果が出ないこともある。

もし苦しみが強くなった場合にはモルヒネを使う。

そう聞いた時、私は覚悟をしました。

 

もしかしたら、もう回復しないかもしれない。

 

もしかしたら、ここが最期になるかもしれない。

 

母が延命を望んでいないことも知っていました。

 

だからこそ、複雑な気持ちでした。

治療をしてほしい気持ちもある。

 

でも本人の希望も尊重したい。

 

そんな思いが入り混じっていました。

 

ところが母はまた私たちの予想を裏切りました。

 

一週間後。

酸素が外れるまで回復したのです。

正直、信じられませんでした。

 

エクモを使うほど悪かった状態から、一週間でここまで回復するとは思っていなかったからです。

 

退院の話も出てきました。

家族で相談し、介護用ベッドをレンタルすることにしました。

これからは自宅でも安心して過ごせるように。

そんな準備を始めていました。

 

そして約一か月後。

母は再び退院することができました。

家族は喜びました。

 

でも同時に思っていました。

母の体は確実に弱っている。

回復しているように見えても、以前と同じではない。

 

それでも母は相変わらずでした。

病気だからといって、おとなしくしている人ではありません。

自分でできることは自分でやる。

やりたいことはやる。

その姿は頼もしくもあり、心配でもありました。

 

今思えば、この頃から私たちは何度も希望を持ち、何度も覚悟をすることを繰り返していたのだと思います。

良くなったと思ったら悪くなる。

悪くなったと思ったら回復する。

その繰り返しでした。

 

そして私たちはまだ、この先さらに大きな出来事が待っていることを知りませんでした。

 

 

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