転職千夜一夜物語 59

(糠漬け、の巻)



開店時間直前にマスターは店に戻って来た。

手にはレジ袋を下げていて、

「きゅうり買って来たよ、糠床に入れておいてね、ここ数日糠床をかき回してなかったから良く混ぜておいてくれ、今日から君の仕事だ」


調理台の下の、糠漬け用の青いホーローの容器を引っ張り出し、糠床を探ってみるときゅうりと人参が既に入っている。きゅうりの変色からすると、3日以上は漬かったままだろう。


「酸っぱくなったくらいの糠漬け、好きです」


「そうか、それなら食べていいから」


幼い頃から糠漬けは好きで、夏には母に言われなくても朝食にはきゅうりを糠床から出して来ていた。ただ、『毎日糠床を混ぜる』というルーチンが苦手な私はしばしばきゅうりを変色させる程に古漬けにしていた。

毎日混ぜないと糠床の表面に白いカビが出るのと、ショウジョウバエの羽化の過程も教科書以上に実践で学んだ。


仕事として毎日忘れずに行うべきものは、とても苦手で、返事はしたものの、まるで自信がない。


冷蔵庫からお新香の材料として、市販の白菜浅漬け、たくあん、柴漬けを出してまな板に揃えると、

「こんな感じかな?」と適当に切って盛り付ける。

白、黄、赤、緑(くすんだ緑)、の漬物はそれなりのバランスで盛り付けられた。


「頂きます」


氷水を用意して、お新香を食べ始めた。


田舎の漬物とは違い、塩分が控えめに出来ているので、思った程は喉が水を欲しない。

それでも、グラスの氷をカラリと音をさせて飲む様にマスターは苦笑している。


「漬物やらの、買い物は次回から君にしてもらうよ、釣り銭箱から出してレシートは必ずもらってくる事を忘れないでな。それと、クリーニングを出したり、氷を買いに行ってもらう事もある。

そういえば、氷は来たか?」


小柄なおじさんが持って来て、保冷車に入れて帰った事を話すと、


「今日は持って来てもらったんだ、次からは買いに行ってくれ、場所はビルを背にして、まっすぐの路地を50メートル位の所だから。クリーニング屋もその先だ。買い物はニチイで、良い。

あとは、お通しに使う為に、たむら屋でからしナスと、イナゴの佃煮を買って来る事もある。

開店前に時間は充分あるだろう」


続く




ACN活動報告

昨日の事であるが、某蕎麦屋にて天ぷらそばを昼に食べたのだが、天ぷらが原因だろう帰宅後に胸やけが酷い、胃薬が常備していないので、大根おろしを食べたしてみた。それでも今ひとつなので、GOを飲んだ。


キャベジン程では無いにしろ、胸やけは治った。


これは一つの生活の知恵として、学習しました。


そして、年明け初のシェイクイット。


新たな年に改めてダイエットに励む決意をしたのです。










転職千夜一夜物語 58

(いろいろなるので役目があります、の巻)



店に着くと、今日も灯りは点いて引き戸の鍵は開いている。


開店前の作業が一段落すると、小柄なおじさんが「毎度」の声とともに入って来た。

手には氷の入った袋をぶら下げている。


ポカンとしてると、ずんずんカウンター内に入って来て、保冷庫に入れるとサッサと帰ってしまった。


『こういうシステムになってるんだ、、それにしても、氷を配達してもらうなんて、なんともレトロな仕事だなぁ」


なぜか江戸の時代を連想して、箴言とも言えるこんな言葉が脳裏に浮かぶ


『籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋を作る人』


田舎ではお目にかからない職業が存在し、尚且つ、それを生業としている。

かく言う、飲み屋など生まれ育った土地には存在しない、食堂さえも知ってる範囲では二軒しかない。そんな田舎には農業が大半を占めていて、まして、実家は農業を生業としている。

私の中では商業が邪道なのだ。


半分の照明しか点灯していない店内には相変わらず有線放送のオールディーズが流れていて、英語の歌詞から時たま聞き取れる単語で、歌の内容を連想してみたりしている。


また、引き戸が開くと、作曲家のドヴォルザークの様な風貌のオヤジが代車を押して入って来た。


こちらのオヤジは愛想が良い。


「毎度、酒屋です。あ?新しい人?」


笑みを浮かべながらカウンター前に代車を止めると、二段に積まれたビールケースの上には一升瓶の日本酒と、サントリーオールドが3本、そして、麻袋に包まれた瓶のワインが乗っている。

ワイン、オールドはカウンターに置き、日本酒を両手に持つと厨房内に入って来て、所定の場所に置く。既に空になった瓶を確認のために振ってみる、ビールケースの中の空き瓶も確認すると、私の椅子がわりのビールケースを取り替えた。


「お兄さん、サインもらえるかな?」


差し出された伝票に署名を促す。


私は、将来有名になった時の為に自分のサインを作ってあったので、筆記体のアルファベットで判読不能なサインを書いた。


「なんて、読むのかな?」


「あ、一応、私のサインです」


「お兄さん、洒落てるね」


複写の伝票をピリッと裂くと判別不能な字(多分、酒の種類に間違いはないだろう)が羅列してあり、


『読めないなんて、人の事は言えないじゃん』 

 と思わずにいられない。


「ところで、いつから入ったの?」


「昨日からです」


「そうなんだ、よろしくお願いしますね、まだ若そうだけど、幾つ?」


19歳です、未成年なんです」


「学生さん?」

社会人の落ち着きが無いのが理由なのか?

世間知らずが顔にでているのか?

大概はそう聞かれる。

この質問にはいつも何通りかの答えを用意して置く様になっていて、


「浪人なんですよ、恥ずかしながら、」


「そうかい、頑張ってな、ここのマスターは口うるさいけど我慢してな」


予備知識としてはあまり嬉しくない情報はオヤジにしてみれば親心なんだろう。


「はい、じゃどうもね」


伝票を前掛けのポケットに入れると、空のビールケースの上に空の日本酒の瓶を乗せ、落ちない様にてを添えながらカタカタ言わせて店を出て行った。


店の一員である事をひしひし感じた。


その後、私は1週間くらいで、


「うちの店」とさらりと口から出る様になるのである。



続く


ACN活動報告


昨年末に、xoomの詳細をBOMで質問してみたのだが、キレの悪い回答だったので、より詳しいインフォメーションが発表されるまでは、xoomに関しては静観するつもりです。

代理店スタートの際にも若干の変更がある様なので、17日以降のビジネストレーニングで明らかにして来ようと思っている。





転職千夜一夜物語 57

(社会勉強で授業料、の巻)


焼き鳥屋への通勤中も、1日を経るだけで周りの看板が目に入り認識出来るようになる。

間口の狭い小さなスナックが軒を連ねているのも、視点が変われば見えて来るものだ。


今日は店に出る前に敷居の低そうな食堂を探すのが目的だったので、四時過ぎには街中に居た。


デパートの通りや映画館の通りを原付きでキョロキョロしながら運転して、

(このラーメン屋なんか良さげかな?)


と視線を戻すと前から姿をスッと出現したのは警察の人。

私の前で、両手を水平に通せんぼのスタイルで立ちはだかる。


「な、なにかしました?」


近寄る警察官は


「ここは一方通行だからね」


水平だった右手を少し斜め上にあげて指差しているのは赤に白いラインの標識。


「まだ、慣れないもんですみません」



ここで、

『じゃあ気を付けて、運転してね』 


と解放されると思いきや、近くに停めてある駐在さんが乗るオッさん白バイに歩み寄り、後ろの黒いケースから違反切符を取り出すのだ。

そして再度、


「ここは一方通行だからね、違反は違反だからね」

「え~まだ本当に慣れなくて、これから仕事なんですよ、昨日から勤め始めたんです」


先ほど標識を指差した右手は既に違反切符をめくり始めていて、こちらの弁明を聞く素振りすら無い。


「じゃあ、運転免許証見せて」


「あ~ぁ」


尻ポケットの財布にサーファー財布と呼ばれていた赤の財布のマジックテープをバリバリ剥がし、免許証を取り出した。

「あれ?住まいは高崎市?」

「いいえ、春に引っ越ししてきました、だから、前橋の街中の道は良く分からないのです」

だめ押しのです言い訳をしたにも拘らず、


「じゃあ、前橋の道に慣れてね、住所変更もしておいてね」


と表情一つ変えずに、警察官は業務に取り掛かる。


一通りの記載が終わると、切符を確認させて黒い朱肉を出し、

「ここに拇印ね」


生まれて初めての拇印を押す行為が、犯罪者のレッテルを貼られた様で酷く凹んだ。


大きくため息を吐いて、向きを変えずにバイクを出そうとすると、


「だ、か、ら、こっちは一方通行だって!」


警察官に聞こえない様に呟いた


「ったく、、」の声は


バイクの音に消されて警察官の耳には届かなかった。



社会勉強の為に、早目に家を出て街中をウロついたのが裏目に出て、私にしてみればかなり高い授業料の社会勉強となった。


続く


転職千夜一夜物語 56

(お気に入りのポテトサラダの巻)


「さあ~てと、昼飯、昼飯、何喰おうかな」


昨夜のカミナリ丼の余韻があるので、さっぱりとしたものが食べたくなっている。


Nスーパーがいいかな』


アパートに戻ると、部屋には入らずにバイクに跨る。


部屋の鍵はバイクの鍵と一緒にキーホルダーに付けてあるし、なにせ、部屋に施錠してない。


盗まれる物などたかが知れてるし、まさかチューバを盗んで行くモノ好きはいないだろう。

東京のアパートの時は施錠していたが、地方都市に戻って来ると、施錠した試しがない実家での田舎暮らしを再現する様になっていた。

もしかして、i君が訪ねて来た時の事を思っての美しい友情の証でもあった。


スーパーは個人営業の苗字が掲げられたこじんまりとした店だが、貧乏浪人生の胃袋を満たす為の食材の種類には事欠かない。


精肉コーナーで、うず高く盛られたポテトサラダに釘付けになった。

計り売り。


大量に購入してから不味くて後悔しない様に、200gお願いする。

白衣の店員は容器に入れるのでなく、白いテカテカ後々紙に載せて200gちょっとオーバーしそれをまた緑色の油紙で包むと 黒のマジックで210gと書いた。


10g位サービスしてもいいのにな、、』


それと、私みたいな境遇の人間の主食。


袋入りのインスタントラーメン。

サッポロ一番、味噌味。


後にサッポロ一番が地元の前橋で作られている事を知り、余計に愛着が湧いて欠かさないものとなって行く。


此処で忘れてならないのはトマトケチャップ。


私はこの頃からポテトサラダにケチャップをかけて食べる事が大好きになり、それは後々まで、現在までその嗜好は変わる事が無い。



意気揚々とアパートに帰ると、玄関開けてすぐの台所の戸棚から皿を取り出すこともなく、流し台をテーブルがわりにポテトサラダに喰らいつく。


太陽は西に傾いて来て、ジワリジワリと出勤の時間を迎えようとしている。

気分がソワソワしてくる。


続く



ACN活動報告


今日は夕方からチームミーティング、忘年会。

その後BOM,というのは昨日書いた。


ミーティングの際に、xoomに関しての疑問点をいくつかメモしてBOMで質問する予定です。


現在、浜松町ルノアールではなく、都内某所の喫茶店でコレを書いております。


待ち合わせ時間は午後5時。あと一服して向かいますか。


1週間位前から禁煙に向けて鋭意努力しておりまして、普段なら夕方のこの時間には10本以上は吸っているペースだけれど、なんと3本目。


転職千夜一夜物語 55

(i君にバイト開始を報告する、の巻)

 

ぐっすり眠り、目覚まし時計をセットしてなかったので、起きて時計を見ると、既に正午を、回っている。


近くの電話ボックスに向かい、i君に電話をかける。


受話器の向こうで、いつもの様に明るく元気の良いお母さんが

○○K君から電話だよ~」


の声とともに、階段を駆け下りて来る足音。


「お~、元気か?どうだ新居は?予備校行かない生活はどうだ?」


親からの仕送りが無くなる事はi君に話していたので、生活費や受験勉強への取り組み意欲を遠回しに心配してくれているのは言葉の響きで解った。


「今度のアパートは住みやすいよ、ワンルームだけど、風呂やトイレも使いやすいし、なんせ、シャワー付いてるから具合が良いよ。それでさ、

昨日からバイト始めたんだ。」


i君の

『それはいい事だ!』を予測したのだが、


急に彼の返事はトーンダウンした。


「そ、そうか、、まぁ頑張ろうぜ、、」


そんなことはお構い無しに私はこう続けた


「平日の夜はバイトでいないからさ、日曜日は休みだよ。午前中は寝てる事になるから、遊びに来るときには午後にしてくれ。」


「わ、解った」


10円玉が電話の中で落ちる音がする。


話す事は手短に話したので、受話器を置いた。


電話ボックスを出ると、春の陽射しを浴びた大学のグラウンドが見える。運動サークルの学生がトラックを走っているのが見える。


今までは羨望の眼差しを向けていたはずなのに、

私は一夜にして、見方がより社会人寄りに変わっていた。


続く




ACN活動報告


幕張に行く事が出来なかったので、ACNのでバックオフィスから新電力の進捗を確認してみると、申し込みが始まっている。

待ちに待ったこの展開に心は弾む。


サタデートレーニングの前に木曜日夜のBOMに行く事にする。


本来なら、内輪のチームミーティングの後、忘年会を予定していたのだが、アップに連絡を取ると、忘年会は中止する事になった。


XOOMエナジーについての詳細を聞いて来るつもりだ。