転職千夜一夜物語 66


榛名湖畔に集合した人数は20人程だろうか?


一階は観光客向けの食堂。


4人づつの大きさのテーブルは折りたたみ椅子がしっくりするレトロなものだ。


年寄り夫婦でやっている食堂の見本の様なレイアウト。


学生達は慣れた足取りで、二階に登って行くで、それに付いて今夜の雑魚寝になるであろう部屋に簡単な荷物をおろした。

案内された4人部屋、(座布団の枚数で分かる。)には入ったのは私を含めて3人。

暫くすると、服部さんが入ってきた。

全く知らない人となる枕を並べるのはキツイだろうとの配慮だろう。


6時から始めるぞ、それまで寛いでいようや」


一抹の不安を覚える。




中学生の頃にバスケットの部活の先輩に

試合でも無いのに


「明日の為に、身体よーく休めとけよ」


下級生のくせにソコソコ目立っていた私に、

「少しヤキを入れようぜ」といった口調だった。

といじめの事前予告された時の様なモヤモヤした感覚。


しかし、服部さんのそれは、いじめの事前予告ではなく、初体験となるだろう破茶滅茶な飲み会への素直な親心であろう。



畳敷きの部屋で宴が始まると、部長、服部さんのあいさつ。


新入生の自己紹介、出身校、楽器の経験年数。

現役時代に有名だった県内のブラスバンド強豪校出身の新入生の時は、自然と注目度高くなる。

それに続いて、飛び入り参加の私の自己紹介。

なんか笑いを取ろうと臨んだのだが、みんなのツボにヒットする事なく、ものの見事な惨敗だった。その後、現在の部員がパートと名前を自己紹介していく。

素敵な女の子がいれば、名前をしっかり覚えておこうと、男子学生の自己紹介の際には部屋の中や、出された料理をキョロキョロ見回し、

女子部員の時にはメガネの位置を直しながらしっかりと顔を見る。


残念な事に、素敵な出会いは期待出来なそうだ。

男子高校時代のブラスバンドに毛の生えた様なものか?楽器レベルも音大とは比べものにならないくらい稚拙なもんだろう。ただ、頭の中身は音大のそれとは比べ物にならないくらい高いだろうが、、