今日は記事が少し長めです。

 

2022年の4月にJohns Hopkins公衆衛生大学院に入学して、いろいろな科目を履修してきて、私なりに知った世界がどんなものか、まとめてみましたうさぎその2です。少し長いですので、公衆衛生大学院に興味のある方はお付き合いくださいイチョウ

 

その1はこちら

 

 

 

ちょうちょ

 

Johns Hopkins大学では、様々なジャンルの先生・学生が本当に様々なことを研究・講義されていて、履修科目のヴァリエーションがとんでもないです。学生の国籍も様々で、私のようにアメリカ以外で履修を頑張る学生も多く、将来的にアメリカでの就職やNGO・国連などを希望していて、そのキャリアのために入学したというクラスメートにも何人も遭遇しています。卒業式に出た先輩にも、同級生達に「あなたはどこに就職するの?私は国連!」みたいな話が飛び交っていたとか。

 

そんな私は、、、ノープラン赤ちゃん

 

様々な科目を履修しながら、実は現在も就職活動を行っているのですが、なかなか難しいですね。放射線科医、内科医、公衆衛生の専門家として、はたまた医学教育の専任!これだけ書くと選択肢がありすぎて羨ましいと思われるかもしれませんが、現実は厳しく泣き笑い住む土地は家族の都合もあり、おおよそ決まっているので、フルリモートで働けるか、その近隣の通勤圏内で働くか、という制約もありますハイハイ子どもたちも思春期にさしかかってくるので、彼らの成長にじっくり寄り添う時間も欲しいと思うようになってきましたハートのバルーンそんな時間的・場所的な制約がありながら、どうするか・・・

 

もっと言えば、将来のために複数の収入経路を確保したいので、そのために色々試行錯誤する時間も欲しいし、さらにさらに、「英語で働く」とか、「日本円以外での収入経路を作る」というのは夢でもありリスクヘッジでもあるかなとか考えています。大学院のメーリスで毎日のように求人案内が届くので、たまにDeepLして「フルリモートあるじゃん!」と読んでいます(そこでDeepLを使うってね 笑)泣き笑い

 

ハートのプレゼント

 

 

脱線しましたが、Johns Hopkins大学(JHU)の教育の特徴を、今まで受けてきたHarvardや熊本大学とも比べてみようと思います。と言っても、HarvardはICRTコースという学位授与の無い特別プログラムで、熊本大学は教授システム学専攻の科目履修(インストラクショナルデザインのメッカ!)ですので、ご留意ください。

 

①評価基準が明確である

これ、学生のやる気にも直結するのでものすごく大切です。JHUでは、科目毎にシラバスがしっかりあって、中間テストが30%、レポートが10%とか、出席は40%とか全て明記されています。更に言えば、レポートやプレゼンなど自由度の高い課題は、与えられる際に「文法の間違いが無ければ3点、スライドの枚数が5枚以内であれば2点、強調するポイントがわかりやすくまとまっていれば5点」などという、評価項目(ルーブリック)まで必ず公開されます。つまりは、評価項目に沿って提出すればほぼ間違いなく満点近い成績が取れるのです。とはいえ、採点はTeaching Assistantとして入っている博士課程の大学院生などが担当することも多く、教授が全てを行うわけではないので、個人により当たり外れは若干あったりします。厳しめの方もいれば、甘めの方もたぶんいます。Harvardも似たような形だったと思いますし、熊本大学もレポートは評価項目に沿って採点され、必ずフィードバックがありました。(あなたのレポートは、こういう点で改善が望まれますとか書いてある上に、この評価項目を満たしているので○点ですというように)。

 

ルーブリックを事前に公開しておくというのは、インストラクショナルデザインでも大切なルールです。

 

 

 

②頑張れば成績A(優)が確実に取れる

これも学生のやる気に直結しますよね。大学(院)では科目毎に、100点満点で90点以上であればA評価がもらえ、成績表を提出しなければならないような就職や進学に影響します。自慢ではなく、私はJHUに入学して殆どの科目でA評価なのですが、これは私が凄いからではなく、頑張ればAを取れる仕組みがしっかりあるからです。でもこれってHarvardも熊本大学も同じでした。①にも書きましたが、全ての評価項目が最初から公開されているので、その通りに勉強すれば本当に確実にAが狙えるんですね。出席をきちんとして、テストを受けて、レポートやプレゼンを評価項目を満たすように提出する。本当にそのプロセスだけで良いのです。

 

JHUは更に、救済措置があることも多いです。例えばレポートなどの配点が高く、Teaching Assistantの採点のバラツキが起きやすい科目では、再提出が可能であったり、Extra Credit用の課題が用意されていることも多いです。Extra Creditの課題は必須ではありませんが、提出すればレポートの採点で減点された分を取り返すことができるので、結果、A判定にもっていけるんですよね。Extra Credit用の課題は掲示板への投稿といった比較的取り組みやすいものも多く、また、その投稿を通じて更に学びを深めることができますのでありがたいですね。ユニークだなと思ったExtra課題は、「この授業で扱うに相応しい(が、授業では扱われていない)過去の論文を1つ引用し、それを簡単にまとめて報告する」というもので、授業の来年のブラッシュアップにもつなげられる良い課題なんでしょうねプレゼント

 

Harvardもおそらく同じような仕組みでしたし、熊本大学も同様で、頑張ればAが取れる!というのはインストラクショナルデザインでも大事なんですよね。キャロルの時間モデルというのも有名なモデルで、「誰もが必要な時間をかければ必ずゴールに到達できないといけない」という理論がしっかり根付いているんだと思います。

 

 

③知識の丸暗記は最低限にし、テスト問題をみて学生が驚くようなことがあってはいけない

これは、医師国家試験予備校となりがちな医学部には難しいのですが、社会人になると、全ての知識を頭に詰め込んでいく必要って無いですよね。今では多くの人がEvernoteやNotionなどオンラインで自分の学んだことをストックしていく時代です。社会人って、仕事などで問題にぶちあたったら、「教科書のあそこに書いてあった!」って思ってそれがスムーズに引き出せればそれでOKじゃないですか。そこでノートもPCもスマホも見てはならない、というのは実社会に合っていませんよね。なので、JHUもHarvardも熊大も、丸暗記を要求するテストは殆どありませんし、そもそも試験そのものもOpen Book(自分のノートなど何をみても良い)です。ただ、JHUでも一部の科目はClosed book(何も見てはいけない)でした。熊大はClosed bookは私の履修した範囲ではひとつもなかったような。というか、テストそのものが殆ど無かった気がします。

 

そしてインストラクショナルデザイン的にも大事なのは、テスト問題をみて学生が驚くことがあってはいけないということです。そもそもシラバスで学習範囲をきちんと設定しておくべきで、「えー!こんな問題が出るの!!」って学生がテスト当日に仰天するようであれば、それは教師側の負けだと習った記憶があります。(もちろん、授業などにきちんと出ていない学生は別です)。更に言えば、テストはいつでも取り組み可能で、尚且つ何度でも挑戦可能にしておく(安心安全に失敗できる)のがインストラクショナルデザイン的には理想なのですが、さすがにそこまで実現されている科目はあまり多くないですね。実現しようと思ったら、複数パターンの問題を用意しておくなど準備が大変になります。

 

ただ、JHUでも多くの科目は試験問題とその解答がキチンとフィードバックされて、不明点は質問できるのですが、そうでない(採点結果のみ通知され、問題や回答はわからないまま)科目もありました。オリエンテーションのような科目に多く、おそらく同じ問題を何年も使い回しているので、漏洩対策だと思います泣き笑い

 

 

 

④レクチャー動画に関して

これはJHUやHarvardに対して、熊本大学は大きく異なっていました。JHUもHarvardも、多くの科目で録画されたレクチャーがオンラインで公開されていて、いつでも好きな時に何度でも学べるようになっています。さらにJHUではTranscript(文字起こし)や字幕まで表示・ダウンロードできるので、そちらをざっとみて概要を把握することができます。Transcriptも機械的な文字起こしにありがちな間違った単語は全くなくて、おそらく人間がどこかで確認しているんだと思います。この仕組みの維持ってものすごいコストがかかっているでしょうね。このTranscriptなどの同時提供は、視覚や聴覚に困難のある方への配慮という目的での提供ですが、同時に学習者の特性にも合わせられる可能性が広がります。

 

VAKモデルというのをご存じでしょうか?

  • V(Visual)・・・視覚
  • A(Auditory)・・・聴覚
  • K(Kinestic)・・・身体感覚
の頭文字を合わせたもので、いわゆる五感のうちどれが強いかどうかに寄り添った学習方法であれば、より効果的・効率的に学べますよね。例えば私は聴覚から憶えると頭に入りやすい、みたいなものって感じたことありませんか?私は耳から学習が以前好きだったので英語は殆ど耳からです。ただ、子育てと大学院の両立という点では耳からは効率が悪いので、最近は文字情報(Transcript)頼りで、隙間時間にコツコツと読み進めて学習しています。
 
熊本大学はそれに対して特徴的で、そもそも録画講義の配信を殆どやっていませんでした。これは理由があって、インストラクショナルデザインの観点では「録画の講義はごくごく最低限にすべき、そもそも、殆ど廃止できる」というところに拠っています。だって、30分の講義を倍速再生で聴いても15分は取られますが、同じ文字情報を読み込むとおそらく15分もかからないことが多いのではないでしょうか。なので、熊本大学は「指定の教科書の○章を読んでこの課題をやりなさい」と明示されていて、そこを読めば必ず取り組める課題しか与えられていませんでした。その課題を提出すれば次の課題が取り組めるようになっており、「前に提出した課題をチームでこの評価基準に沿って採点しブラッシュアップのためのコメントをつけなさい」とかいう課題が次に出されます。忙しい社会人がまとまった時間を確保して講義動画を観る、ということがいかに大変かというのも分かった上でこうしている、とおっしゃっていました。これも、ものすごいことです。ついついしゃべりたくなるのが人間ですから・・・泣き笑い
 
⑤殆どの課題が非同期でできる
これもこの時代には本当に当たり前の仕組みですが、掲示板上での相互評価やオンライン課題など、全て(締切を守れば)いつでも取り組むことができます。これもインストラクショナルデザイン的には当たり前なのですが、JHUは世界中に学生がいるという点でもこれを行ってくださっているのでしょう。とはいえ、同期対面でないと受講できない講義もあり(さすがにそれは受講できないのでどんなものかわかりませんが)、そこはオンライン非同期に少しずつ以降していくのではないでしょうか。
 
私が公衆衛生大学院を目指そうと思ったとき、選択肢はJHUとHarvardしか考えていませんでしたが、後者はちょっと前までBostonに行かなくてはならず、それもあってJHU1択になりました。コロナの影響もあって、Harvardもフルオンライン履修が可能になってきたようです。