自民党の西川TPP対策委員長が、「(農産物の重要5項目を関税撤廃の例外から)抜けるか、抜けないか、検討はさせてもらわなければならない」と発言したことで、いよいよこの党には「公約」の意味がわかっていないことがハッキリした。

 菅官房長官が「西川さんとすれば当然の発言だろう」と庇い立てするにいたっては、開いた口が塞がらない。

 ところで、この問題に対するマスコミ報道が問題だ。

 関税の自由化率を95%以上にすることを求めているアメリカの顔色をうかがいながら、譲歩を重ねることが日本政府の当然とるべき方策だという前提で論評している。

 そのハードルを、食料主権を放棄してまでクリアすることにどんな大義があるというのだろうか。

 ことは、農業分野だけではない。

 すでに7月26日(つまりは参院選直後であり、日本が初参加したTPP第18回交渉直後ということだ)、日本郵政とアフラックが業務提携を交わしている。

 TPP締結後に、アメリカからがん保険の公平な競争が担保されていないと難癖をつけられ、ISD条項を使って日本郵政の100%株主である日本政府が訴えられることを回避するための動きだ。

 医療分野を営利化するというTPPの本質に触れず、「95%」だけが問題かのように刷りかえる報道には注意が必要だ。

 「TPP反対=既得権益にまみれた農業団体と過保護な農民、TPP賛成=その他の国民」という、漫画的な図式を振りかざして国民の間に対立を持ち込む、姑息な世論誘導には絶対に騙されまい。