続きましてマニラのグルメ第3弾です。
っていうか、
グルメ情報っていうより
横道それた私情の方が色濃いシリーズですが
今回もそんな感じなので覚悟して読み進めてください。
さて、お題でピンときた方は
「なんちゃってバーテン」ではなく
「職業・バーテンダー」な方か
カクテルに相当なこだわりがある呑んべいでしょう。
ご存知の方も多いとは思いますが、
いまいちピンと来ていない方や
全くピンと来ていない方の為にまずは解説です。
昨今ここマニラに様々な外資のホテルが乱立しています。
その一つがラッフルズ。
シンガポール拠点のラグジュアリーなホテルチェーン。
現時点ではマニラで最高級なホテルとされています。
んで、
シンガポールのラッフルズといえば
カクテルのシンガポール・スリング。
んで、
何を隠そうシンガポール・ラッフルズのバー、
その名もロング・バーが発祥。
んで、
ラッフルズはホテルとして世界に展開していますが
Long Barがあるのはシンガポールとマニラのラッフルズのみ。
因みに世間一般に知られているシンガポールスリングのレシピは
ジンをソーダなどで割って、チェリーブランデーを垂らすのですが
これは簡素化バージョン。
オリジナルは使用材料も多くレシピも複雑、
仕上げはきっちり南国トロピカル仕様になっています。
んで、そんなオリジナルレシピをオリジナルのお店で飲めるのが
前途の様に世界で2箇所、その1箇所がここマニラってわけです。
店内はこんな。↓
夜も浅くはない時間帯でしたがほどよく満席。
満席ですが、観光名所にありがちな雰囲気はなく
見た感じ、物見雄山な観光客がほぼおらず
店内非常に良い雰囲気です。
ロング・バーのもう一つの名物はピーナッツ。
麻袋に入ったピーナッツが突き出しで提供されます。
画像の卓上は隣席の方で、
非常にお美しい女性二人が楽しく酔われていましたが
この散乱したピーナッツの殻は酔いのせいではなく
実はこれがこのバーでの作法。
殻は床へそのまま捨てます。
人によっては卓上にある程度溜めてから
バサーっと床に捨てたりもします。
さてオーダーは決まっているのですが
一応メニュー。↓
マニアらのロングバーでは
本家オリジナルに加えて
マニラ(マカティ)オリジナルもあります。
で、こちらが本家オリジナルのシンガポール・スリング。↓
こちらがマニラオリジナルのマカティ ・スリング。↓
レシピにある金箔は忘れた模様です。
さてお味ですが、
シンガポール・スリングは非常にトロピカル、飲みやすいです。
複雑なレシピなのですが
そういうレシピにありがちな「ごちゃ混ぜ」感はなく
それぞれがうまく絡みあって一つのカクテルに仕上がっています。
やはり後世に残っていく逸品というのは
そういうものなんですね。
一方マカティ ・スリングですが
カクテル名にもある様に
基本的にはオリジナルの素材を
プレミア系(luxuary)で仕立て直したものになっています。
例えばコアントローをグランマニエに、みたいな。
また、ビターズのエスプーマが面白いですね。
で、感想ですが
「本物はすげぇ美味いっすよ。」
味覚は人それぞれだと思っているので
ブログでこういう表現はあまりしないのですが、
今回は特別なわけがありまして。
私の若い頃を知っている方や
このブログの熱心な読者の方ならご存知だと思いますが
私、もともと飲食業界に足をつっこんだのは
バーテンダーが始まりでした。
当時まだ物事を知らない田舎ヤンキー上がりな私、
20年以上も前の事です。
昼間は父親の会社で働いていたのですが
どうしてもバーテンダーになりたくて
街にあるバーの扉を飛び入りで開け
「雇ってもらえませんか?」と。
んで、どこもかしこも門前払い。
今考えればせめてリズメ(履歴書)くらいは
用意しておくべきでした。
ま、もしそうだとしても
いきなり(当時)短髪パツ金のいかにもなにーちゃんが現れたら、
どちらかというと殴り込み、
話をきく前に防御の体勢を整えるのが普通、私でも嫌です。
で、諦めかけたsashi少年、
自分の何が悪いのかは省みる事なく
昼間の仕事仲間の先輩に事の成り行きを話して見たところ
「美観地区の脇にあるバーは良かったで。」
っと教えられました。
今まで訪ねたお店はガイドブックを参考にしていたのですが
このお店、ガイドブックは掲載拒否って感じのお店で
私のリストにものっていませんでした。
んで早速ダメもとで訪問。
すると
「オモレェ奴じゃのー。」(訳:面白い奴だな)
っと即日採用。
それが全ての始まりでした。
この店のマスター、業界では有名な方で
また、拘りの強いかた。
当時まだ生の果物をカクテルに使うお店は少なかったと思いますが
揃えられる果汁はできるだけ生のものを使用。
生物なので時期により味が変わるので、
それに対応してほんの1滴シロップだとかレモン果汁を入れるだとか
そんな事をしていました。
また、勉強熱心で毎日研究。
より良いレシピ、より良いスタイルを突き詰め
日々ベターを目指す方でした。
そんなマスターとの仕事の思い出に
シンガポール・スリングがありまして。
「おい、sashi。本場のシンガポール・スリングはこれじゃないらしいで。」
っと。
当時、他の店と同様このバーでも一般的なレシピで作っていました。
が、本で読んだか、誰かから聞いてきたか
とにかく冒頭で述べた様な話をして来て
「オリジナル作って見ようで!。」
っと。
その当時からオリジナルのレシピは文章で伝えられていて
早速、文面上は同じ素材を手に入れ
文面上のレシピ通りに作ってみました。
で、感想が
「あんましうもおねぇな。」(訳:あまり美味しくないな)
と。
「でもこんなもんじゃなかろう。」
っと、パイナップルジュースを生にしたり
缶ジュースの銘柄を変えたり、
南国に思いを馳せてお酒の温度を若干高くしたり
色々試しましたが全てイマイチ。
で、オリジナルを飲んだことがないので
それが正しいのかどうか全ては謎。
そんな謎であり、怪しく、何より思い出のカクテル。
今思えば、
マスターにはカクテルのことだけではなく
飲食業従事者としての大切な心構え、
お客さんに対する者はこうであるべき、
本当に大切なことを教えられた様に思います。
私にとってこの業界で唯一の師匠。
そんな師匠も晩年体を壊し、数年前に他界。
「本物はすげぇ美味いっすよ。」
師匠に向けた感想です。
師匠はなんと言ったでしょうか。
できれば一緒に来たかったです。
そういえばこのバー訪問予定の前日、
突然師匠の奥様から3年ぶりとかで連絡がありました。
私「突然どうしたんですか?」
っとの問いに
奥様「あなたのことは息子同然に思ってるから、なんとなく。」
だそうで。
こういうこともあるんですね。
あの夜、
美女と私の間の一つだけ空いた席には師匠が座っていたかもしれません。




