家から駅まで自転車を飛ばして、何とか渋谷行きの快速電車に飛び乗った。
一切飛んだつもりはないが、飛んでもおかしくないぐらい
急いでいた。
もしかしたら、もう少しで頑張れば俺は飛べたのかもしれない。
乗った瞬間動き出した電車は、ゆっくり扉を閉めた後徐々にスピードを上げていった。
快速は駅間が長いので、俺はドア付近の3人席の真ん中に座った。
本当は、座るのなら端の席が良かったのだが、上りの快速では
始発以外ではまず座れない。
ようやく息切れも治まってきて、心臓も平常どおりに動いてくれて、
俺は、バックからペットボトルを取り出した。
節約のため、家で作った麦茶を緑茶のペットボトルに入れて
持つようにしている。
一気に半分ぐらい飲み干した後、
自分の右隣から、なんとなく視線を感じた。
確か、右の人は黒っぽい服を着た長髪の人だったかな。
男だったか女だったか、若者か年配者か。
どうとも取れる容姿をしていた気がする。
視線は気のせいだと思い、俺はペットボトルの蓋を閉めた。
その瞬間、
右の視界から、白く長い手が伸びてきて、ペットボトルを持った俺の右手の手首を思いっきり掴んだ。
一瞬、なにが起こったのか分からなくなった俺は、
持っていたペットボトルを床に落としてしまった。
落ちたペットボトルは、そのまま向かいの席の方にゆっくりと転がっていった。
拾わなきゃと思ったのだが、俺の右手は、まだその右の住人が掴んでいる。
どういうこと?なんで俺は手を掴まれてるんだ?
訳が全く分からず、怖くて右を向けない俺は、
今の自分の状況を理解出来なくて、
何を思ったか、そうだとりあえず麦茶を飲もうと思い、
バックの中を見たのだが、当然そこには緑茶のパッケージのペットボトルは無かった。
その俺の動作を見ていたかのように、右の住人が俺の耳元で囁いた。
「知ってるよ、中身が麦茶だっての」