承前


5歳にして自分からピアノが習いたいと言い出した私は、

近所の優しい先生の元で、楽しくピアノを弾いていました。


小学校2年の頃でした。

ブルグミュラーを終えた私にその先生は、

「もう私にはこれ以上教えることは出来ません。

もっと優れた先生に習いなさい」と言いました。


母は、無鉄砲にも、地元国立大学の教授で、当時県内でピアノの第一人者の先生の家の門を叩きました。

すると玄関に出てきたのは、奥様で、私立大学教授の方でした。


そんないきさつで、奥様の方に習うことになりました。

「うちは、音大をめざす人しか採りません。

男の子なら、芸大を目指してはどうですか。」と言われ、

母は、「はい、そうします。」などと、適当なことを言って入門しました。



小学校5年生の時には、ソナタアルバムには入りましたが、

その頃私は、ピアノが嫌いで嫌いでたまらなくなっていました。


誰しもあることとは思いますが、練習が嫌いになるときはあるものです。

ついに5年生の時、ピアノをやめてしまいました。

もうピアノを見るのもいやでした。


それから数年間、私はピアノのふたを開けることは一切ありませんでした。