小説を読み終えたあと、ニュースや新聞などの報道で、物語の中の事件に似たものを目にすることがしばしばある。
今回私はその理由がはっきりと分かった。
小説の中で起きている事件は、突飛なものでもなんでもなく、今、現実に起きていることであり、物語を読んだことによってアンテナが立ち、今まで素通りしてしまっていたあらゆる事件が目に留まるようになったのだ。
もちろん小説はフィクションであり、実際に全く同じことが起きた、とゆうことではない。
しかし、その小説を読むまで、"他人事"となってしまっていた多くの時事問題が、物語を通して奥深く自分の心に問いかけるようになった。
小説は、自分の人生だけではおそらく見ることの出来ない経験を教えてくれる。
知識、思考力、想像力、夢、希望、あるいは挫折、恐怖、苦しみ、絶望。
様々な視点から読み手にメッセージを送ってくれる。
私は特に物語に没頭しやすい方なので、読み進むにつれ、登場人物の顔、声、風貌を想像していることが多い。
誠に勝手ながら、実在する俳優さんや、時には友人まで、キャスティングしてしまうこともある。
そして、登場人物に思いを馳せ、ついには自分も物語の中で共に笑ったり泣いたり人を欺いたりもする。
単純な言葉をつかってしまうと、作家ってすごい。
読み手の心身を掴み取り、ついには人生までも変える力が物語にはある。
まさしく今、一冊の本を読み終えた私は、酷く悩まされていた胃痛がすっかり無くなっていることに気づいた。
その胃痛の原因は、小説だったのかも、しれない。
それほどまでに物語に入り込んでいたのだ。
今日もまた、あらゆる好奇心と憎悪と人間の弱さと生きていく強さを教えてくれた大切な一冊を本棚に入れる。
次に開く時には、また違う視点で読める自分になっていることを願って。