『マグダナのロバ』

レゾ・チヘイゼ+テンギズ・アブラゼ共同監督

1955年/白黒/71分
 

1956年カンヌ国際映画祭短編部門グランプリを獲得、ジョージア映画を世界に知らしめた。後の巨匠アブラゼ監督とチヘイゼ監督の第1作。病気のロバを救った貧しい母子の姿を描き、硬直化した映画界に新風を吹き込んだ。旧邦題「青い目のロバ」。(ジョージア映画祭2024 公式サイトより)

 

ジョージア映画祭2024で鑑賞。

貧しい村で、女手ひとつで3人の子を育てるマグダナ。手作りのヨーグルトを詰めた重たい瓶を肩に背負い、遠くの町まで歩いて売りに行く。その疲れ切った、毎日に倦んだ様子の冒頭から、生きることの大変さに観ていてため息が出る。

 

 

(映画冒頭1分半の動画を発見。全編もYouTube上にあったのだが、紹介してよいものやらわからないのでやめておく)

 

 

登場人物は、けなげに生きる貧しい村人と、あくどい守銭奴という単純化した図式。

善良な貧者は富める者に踏みつけにされ、正義は得られない。それでも、力の差を見せつけられても怖気づくことなく、踏みつけられても毅然とし、負けても昂然と頭を上げて生活を続けるマグダナの姿が尊い。ジョージアの大きく美しい自然を背景に、社会の不公正への大きな怒りを感じる作品だった。

 

そういえば、こういう格差は資本主義だから? 社会主義ならこんな不公正はない、のかしら。

 

原作のエカテリーネ・ガバシビリは、1851年、帝政ロシア時代のジョージアに生まれた作家であり、女性権利活動家。

 

2人の監督についてもウィキで知るのみだが、非常に興味深い。2人ともジョージア人で、かつて共産党員だったが、それは当時よくあること。

チヘイゼは、親か誰かわからないが家族がスターリン時代に粛清されている。娘はソ連時代は反体制活動家で、ジョージアの政界で活躍していたこともあるそうだ。

アブラゼはソ連最高の監督のひとりとも言われる。1984年にスターリン政治を痛烈に批判した映画『悔い改め』を製作し、1986年ペレストロイカが始まったことで公開、評判を呼んだ。

まるで映画のようだが、これが現実だったんだから、大変な時代だ。