思い立って2日間、滋賀と京都を旅行しました。
家を朝6時に出て、10時半に近江八幡に到着。駅前のレンタサイクル屋さんで自転車を借りて、いざ目的地へ。
10分弱走ると街並みが変わり、江戸から明治にかけて建てられた近江商人たちの住まいが残された地域が現れる。
その一角に、今回の目的のひとつ、「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」があります。ずっと行きたいと思っていた。
昭和初期の町屋をリノベーションした風情ある建物で、開館は2004年。
「障害のある人たちによる造形表現や現代アートなど、様々な表現を分け隔てなく紹介していこうとする」がコンセプトだそう。
開催されていたのは、今週末までの企画展『Borderline』。
ちょうど来館者はわたしひとり。じっくり、ゆっくり、味わう。
ものすごいインパクトのあるこちらは、イクラの柄のパジャマと、それを着た制作者・下田賢宗さんの写真パネル。
下田さんは15歳のときに、どうしてもイクラの柄のパジャマが欲しいと言い出し、親や施設の人が探し回ったけど、売ってない。イクラの柄の布地もない。そこで、白い服とマジックと絵の具を渡したら、あっという間にイクラの絵を描き上げたのだとか。そしてそれを着て寝る。
そこまでの衝動、情熱。そしてこのパジャマのえもいわれぬ迫力…。
なぜイクラか。なぜパジャマか。それはわからない。
高丸誠さんがセロハンテープで作っためがね。
もちろんレンズはなく、あきらかにテープなのだが、どう見ても立派なめがねである。高丸さんはほぼ毎日、自分で作ったこのメガネをかけている。
いくつかのめがねが、視力の悪い人が置いておきそうな場所に、置かれているという。
臼井明夫さんの「箱」シリーズ。
形が少しいびつに見えるが、その実すき間などほとんどなく、引き出しはいたってスムーズ。気持ちよく引き出し、どこにも引っかかりなくしまえる。ものさしを使ってないそうだ。
作っては人にプレゼントしていたそうで、天才的な感覚と人への優しさが同居した佇まい。
(左上:陶芸作品のスピーカー。音が出ました。
右上:生き物みたいな木の椅子は、座り心地がいい。
左下:前後ろが縫い合わされてて、着ることのできないかっこいい服
右下:レタス? お豆腐? しょうがのチューブ? そっくりの文房具)
現れる作品すべてが驚きに満ちている。このまますべてを紹介してすべての驚きを語りたいくらいだ。
作品の共通点としては、用途があるもの、でしょうか(レンズのないめがね、着れない服、もあるが)。
プロダクトとして制作されたものと、イクラ柄のパジャマみたいに、どうしてもそれがほしい、作りたい、という強い衝動で生まれたもの(おそらく。作った動機が語られた形跡がなかった)とが混在している。
内側からほとばしるものを、ただただ表現する。その強い衝動、毅然とした意志、できたもののかっこよさ、に圧倒される。
わたしの内側からほとばしるものは、何だろうか。あるだろうか。
静かな2階のちゃぶ台で、心をざわざわさせながら、じっと考えずにいられなかった。