唐突にアルバニアの思い出を語る。

訪問した国のなかでも特に日本人旅行者が少なそうなので、貴重な話かなと思ったのだが、知りたい需要もないかもしれない。でもいいのだ。

アルバニアはバルカン半島にあり、南にギリシャ、西にアドリア海をはさんでイタリア、という位置だ。
時は1996年の10月ころ。バックパッカー時代に立ち寄って、たしか2泊3日くらいの滞在だった。

 

この国の特殊性のひとつは、1990年まで鎖国していたことだ。
1912年にオスマントルコ帝国から独立した後、共産党独裁が続き、1978年から90年まですべての国に対して鎖国政策を取った。

もうひとつの特殊性は、ネズミ講によって国家破綻の危機に陥ったこと。
開国するやいなや自由経済の波にさらされて大混乱、ネズミ講が急速に広まり、国民の半数以上、さらには政府までが参加する事態に。
1997年1月、ネズミ講が破綻し、大暴動が発生した。

わたしが訪問したのは、開国から6年経ち、ネズミ講破綻の直前という時期にあたる。
アルバニアを出て3ヵ月後くらいに大暴動発生のニュースを見て、ヒヤッとするとともに、「さもありなん」と納得してしまった。
それくらい、当時のアルバニアはぎりぎりの、不穏な空気が充満していた。


行く前には、こうした知識はまったくなかった。

そもそも、アルバニアに関する情報は、カイロの安宿の旅ノート(ネットの普及してなかったあの頃は、安宿には旅ノートがあり、旅行者がいろんな情報を書き込んでくれていた)に書かれた、わずかな情報のみ。

「首都はティラナ。長距離バスの終点にホテルがあり、その前に安宿の客引きがいる。●●方向に行くと大学と湖がある。レートは▲▲」

 

その程度の情報で、アルバニアへ向かった。

 

つづく。